Accuphase T-107 (3号機) が到着
2022年10月1日、大阪市東淀川区の K さんより
Accuphase T-107
の修理依頼品が到着しました。
DGL 検波
が特長の FM 専用チューナです。
写真はメータ照明を LED 化した後です。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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十数年以上使用しており、不具合はないと思います。
点検・調整をお願いします。
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購入したショップにて一部のコンデンサは交換済みとの事でした。
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[タブ付き CR2025コイン電池] の [CR2032 ソケット] 化と、メータ照明ランプの LED 化をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [C8W485] で、電源コードの製造マーキングは [1986年] でした。
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全体的には綺麗です。
フロントパネルの天板への折り返し部分にごく薄い線キズがありますが、そう目立ちません。
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12個ある [STATION] (プリセット) ボタン全てにサビが出ています。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り、蛍光表示器の輝度は新品同様です。
ランプ切れはありません。
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受信動作は正常で、周波数ズレはなく、メータは正常に振れ、[STEREO] ランプも点灯します。
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AUTO チューニングは正常に正しい周波数でストップして良好です。
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プリセット操作してみましたが、良好にプリセットできました。
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以上のように動作は良好なので、基本的には再調整だけで性能が蘇ると思います。
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カバーを開けてチェック
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内部全体および基板は非常に綺麗でゴミやチリがほぼありません。
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オーディオ信号ラインの電解コンデンサが8個交換されています。
タブ付き CR2032 バッテリも交換されています。
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使用 IC のロット番号より [1987年製造品] とわかりました。
リペア (その1):コインバッテリのソケット化 ・・・ 修理依頼者の要求
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概要
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オリジナル状態ではプリセット記憶バックアップ用に [タブ付き CR2025] コインバッテリが基板にハンダ付けされています。
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本機は誰かが [タブ付き CR2032] コインバッテリに換装していました。
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コインバッテリは1次電池ですから、いずれ寿命になって交換が必要になります。
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タブ付きだと半田ゴテを使って交換する必要があり、一般のかたでは交換できないです。
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また、この機種は点検用裏板がなく、電池交換のために基板を外すにはかなりの分解作業が必要です。
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リプレース方針
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タブ付きコインバッテリを [CR2032 ソケット] に変更して、[CR2032] 電池をこのソケットに実装するようにします。
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こうすると、100円ショップでも買えるタブ無しの普通の [CR2032] 電池が使えるようになって、誰でも交換可能となります。
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カバーを開ける必要はありますが、これは誰でもできるでしょう。
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リプレース実行
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左の写真はリプレース前です。
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赤〇が [タブ付き CR2032] で、黄〇は [C117] 470uF/10V 電解コンデンサです。
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ソケットはバッテリより大きいので [C117] が邪魔になるのです。
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なお、[C117] は誰かが交換しています。
85℃品にグレードダウンしています。
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右の写真はリプレース後です。
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写真のように [CR2032 ソケット] を取り付け、そこに [CR2032] コンバッテリを挿入しました。
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邪魔になる [C117] を基板の裏側に移動して、470uF/16V 105℃ 品にアップグレード交換しています。

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今後の [CR2032] 交換について
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[CR2032] 交換の際は
電源コードを抜いてから、[CR2032] の+側が上になるよう挿入
します。
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[CR2032] 交換中でも電解コンデンサが記憶を保持しており、数時間以内に交換すればプリセットは消えません。
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交換周期は 10年/回 くらいで十分です。
20年は持つと思うのですが、液漏れしないとも限らないので、この周期なら安心。
リペア (その2):メータ照明の LED 化 ・・・ 修理依頼者の要求
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概要
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オリジナルのメータ照明ランプはフィラメントランプですから寿命は短いです。
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LED にすると、まずランプ切れはしません。
超長寿命です。
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T-107 のメータ照明ランプはメータ内に内蔵しているので、作業はかなり厄介です。
一般ユーザには無理です。
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交換前のフィラメントランプと、交換する LED ランプ
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左の写真はメータに実装されていたフィラメントランプです。
FUSE 型ですが T4.5 程度と細いのです。
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右の写真は交換する FUSE 型 LED ランプです。
T6.3 とオリナルよりかなり太いです。
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このままではメータに入らないので、口金を外して LED モジュールだけにし、斜めにして取り付けます。
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LED ランプとしては優秀で、超高輝度白色 LED を9個実装しています。

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LED 照明回路
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上はオリジナルの回路で、これを下の回路に変更します。
LED は DC 駆動する必要があります。

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LED 化作業完了
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左の写真はオジナルのフィラメントランプでの照明です。
暗い橙色で野暮ったいです。
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右の写真は LED 化後です。
白色で現代的な照明に変身しました。
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メータの左側に黄色表示があったんですね。
オリジナルの時はわかりませんでした。
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おそらく、これが設計者が本来目指した色目と思います。

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オリジナルのフィラメントランプの時は 8V×0.3A=2.4W も電力消費していましたが ・・・
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LED には 4.6mA しか電流を流していないので、たったの 0.05W です。
明るくなってエコになりました。
リペア (その3):その他
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ハンダクラック予防補修
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右の写真は、リアパネルにある RCA 端子のリードと基板とのハンダ付け部分です。
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ここは [リアパネル] [基板] の2方向から常にストレスがかかっているので、ハンダクラックしやすいです。
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まだハンダクラックには至っていませんでしたが、古いハンダを除去し、新しいハンダで補修ハンダ付けしました。
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フロントパネル内側の清掃
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フロントパネルを分解して、フロントパネル内側を清掃しました。
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周波数表示がクッキリとした表示になりました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| [78M05] OUT |
+5.6V |
+5.61V |
〇 |
デジタル系 |
| [78M15] OUT |
+15V |
+14.9V |
〇 |
アナログ系 |
| Q101-E |
+24V |
(未測定) |
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VT 電源 |
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FM 受信部の調整
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調整結果
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フロントエンドでややトラッキングズレがありました。
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ステレオセパレーションは 15dB ほど悪化していましたが、調整で回復しました。
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再調整後のデータは以下です。
高級機らしい優秀な性能です。
| 項目 |
SELECTIVITY |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
NORMAL |
stereo |
60 |
60 |
dB |
| NARROW |
22 |
22 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
NORMAL |
mono |
0.019 |
% |
| stereo |
0.024 |
% |
| NARROW |
mono |
0.24 |
% |
| stereo |
0.70 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
NORMAL |
stereo |
-80 |
-75 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
NORMAL |
mono |
0 |
-0.08 |
dB |
使ってみました
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デザイン
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デザインが秀逸で、特に正面から見た時の豪華さに惚れ惚れします。
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フロントパネルはヘアラインの眩しいシャンパンゴールドで上品です。
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フロントパネルのアルミ厚がかなりあり質感があります。
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サイド飾りも写真のように分厚いアルミ材で、デザインを引き締めています。
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FL 表示管は緑がかった青表示で、少し怪しい感じさえします。
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メータだけに照明があり、全体のデザイン上、非常に良い方向に作用しています。
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音質
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音が一歩手前に出てくる感じです。
スタジオのトークも目の前に来ます。
音に引き込まれます。
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歪感の非常に少ない嫌味の無い高解像度の音です。
ハーモニーがフゥワァ~という感じで綺麗に出ます。
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感度
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感度が良く、微弱電波でもそれなりにシッカリ受信します。
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パルスカウント検波の弱点である [微弱電波では歪率が急激に悪化する] 現象を感じません。