Aurex ST-F15 をゲット!
2023年10月19日、静岡県伊東市の O さんより
Aurex ST-F15
を寄贈していただきました。
FM 専用機
で
定価62,000円
もします。
程度&動作チェック
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寄贈者のコメント
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FM チューナ Aurex ST-F15 (シルバー) を寄贈致します。
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正常に受信しますが、数字表示に異常があり、中央の桁が常に8を表示します。
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外観
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製造シリアル番号は [87551602] で、電源コードの製造マーキングより [1978年製造品] と判明しました。
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奇跡的な綺麗さで、ほぼキズやスレはありません。
リアパネルの端子類にか輝きが残っています。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入りました。
操作ボタンの反応も正常です。
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周波数ズレはなく AUTO TUNING で正常に同調でき、[STEREO] 表示も出て音も正常です。
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FL ディスプレイは十分明るいですが、以下の表示不良があります。
※ 写真は不具合の例で、本来 [FM 81.3MHz CH 3] と表示するはずです。
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周波数表示の前の [FM] が表示されません。
(①)
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周波数表示で、7セグメントの [10の桁] [1の桁] [0.1の桁] の OR 結果が [1の桁] に表示されています。
(②)
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プリセット受信時の [CH 番号] が表示されません。
(③)
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S メータの下から2ドット分が表示されません。
(④)

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カバーを開けてチェック
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密閉構造のためか内部は非常に綺麗です。
目視でわかる劣化部品は見当たりませんでした。
リペア:FL ディスプレイの表示不良
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原因
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オシロスコープで波形を追って原因追及しました。
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[Q902] TC5066BP が完全故障でプリセット番号が表示されないと判明しました。
不具合写真の③の部分です。
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[Q902] はプリセット番号の7セグメントをドライブします。
入力は正常なのに出力が OFF のままでした。
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更に [Q904] TC5066BP も所々故障しており、これがその他の表示不良の原因と判明しました。
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ディスプレイは下の図のように、5つのグループに分けて時間的に順番に表示します。
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同時に表示している訳ではなく、時間別に1つのグループだけを表示します。
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不具合写真の①と④は同じグループで、これを表示する [Q904] の出力が OFF したままになっていました。
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不具合写真の②のグループを表示する [Q904] の出力が ON したままになっていました。

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TC5066BP は FL ディスプレイのドライバー IC で -20V 近くの電圧がかかるので、故障はたまにあります。
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TC5066BP は廃品種になっており新品の入手が難しい IC ですが、何とか手配できました。
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修理
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[Q902] [Q904] の TC5066BP を IC ソケット化してから交換しました。
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動作チェック
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左の写真は、不具合時の写真と同じ [FM 81.3MHz CH 3] を表示していますが正常に表示しています。
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右の写真は、故障していた IC [TC5066BP]×2個です。
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基板はスルーホールで IC をそのままの姿では外しにくいので、足を切断して外しました。

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見事! 完全に直りました!!!
再調整
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電源電圧チェッック (VP)
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以下のように良好でした。
基板 |
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
チューナ基板 |
JW17 (Q913-E) |
+12.3V |
+13.0V |
〇 |
|
電源基板 |
D941-K |
+7.5V |
+7.99V |
〇 |
|
表示基板 |
Q902-16pin (Q914-E) |
+7.7V |
+7.28V |
〇 |
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J911-[-B] |
-17.8V |
-18.9V |
〇 |
J911 の一番左のピン |
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FM 受信部の調整
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再調整結果
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フロントエンドのトラッキングが大きく調整ズレしていました。
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ST-F15 にはセパレーション調整ボリュームはないです。
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以下のようにオーディオ性能的には低いですが、受信機としての高周波性能は良いです。
項目 |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
stereo |
15 |
15 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
mono |
0.17 |
% |
stereo |
0.32 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
stereo |
-50 |
-42 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
mono |
0 |
+0.14 |
dB |
REC CAL |
mono |
936.7 |
Hz |
-6.0 |
dB |
使ってみました
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1978年 グッドデザイン賞を受賞
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高級マイクロコンポのチューナで、デザインはかなり良いほうと思います。
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ディスプレイは緑一色で実にアッサリしています。
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257(W)×54(H)×196(D)mm と非常にコンパクトです。
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B5 サイズで密閉構造のため、本棚に本のように立てても使えます。
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筐体全部がアルマイト処理をされたアルミ材
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3~5mm (場所によって異なる) のアルミ材が使われており、持つとズッシリ重く、質感が抜群に良いです。
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リアパネルは F 端子と RCA 端子だけと超シンプル
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当時、F 端子を備えたチューナーは高級機だけでした。
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RCA 端子は厚めの金メッキが施されています。
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ステーションプリセットメモリは10局分
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FM 専用機で10局分あれば、普通には十分です。
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この10局分というのがミソで、ダイレクト選局ではこのボタンが10キーとなります。
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感度と音質
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選択度・妨害排除能力・感度はかなり良好です。
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セパレーションや歪率の実測値は良くはないのですが、実際に聴いてみると音質は良いです。
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音質は大人しい感じで良音・・・低音も高音もキッチリ出ています・・・聴き疲れしない。
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FM 放送を受信直後はモノラルとなり、しばらくして [STEREO] 表示が出ます。
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この切り替わりのタイミングで [ボソッ] というノイズが一瞬出ます。
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総合評価
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デザインや質感の良さ、実際の音の良さからコレクション価値は十分あると感じます。