Pioneer F-700

Pioneer F-700 がやってきた!

2009年5月28日、 Pioneer F-700 の中古がやってきました。 (本機は借り物です。)

F-700 は Pioneer F-500 の兄貴にあたります。 FM 専用機で7連バリコンです。



早速、程度&動作チェック

  1. 外観

  2. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. 基板の作りは良く、部品が綺麗に整然と並んでいます。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. かなり大型の電源トランスが使われています。

  3. IC を使用して合理化が図られています。

    メーカ IC 機能
    HITACHI HA1201 FM IF Amplifier
    NEC uPC1163H FM IF Amplifier
    uPC4558C High Performance Dual Operational Amplifier
    Pioneer PA3007 FM IF System
    PA4006 FM PLL MPX & Muting
    PA5001 OSC & Mixer

  4. FM フロントエンドは7連バリコンを使った以下の豪華な構成です。 DGF×2 となっている箇所はプッシュプル回路になっています。 [同調] の1つは OSC Buffer 用なので実質6連バリコン構成です。

  5. FM IF 部

  6. パルスカウント検波部

  7. MPX 部は ダイレクトスルー MPX と呼ばれ、[PA4006] で構成します。 パイロット信号キャンセラー回路があります。

  8. 使用 IC のロット番号より、この F-700 は1979年製と判明しました。 電源ケーブルの製造マーキングも1979年でした。



F-500 との比較

  1. F-700 は F-500 の兄貴分に相当します。 F-700 と F-500 は同じ1979年発売ですが、回路構成を見ると F-500 のほうが設計が新しいと思われます。 どの程度差があるか比較したのが以下の表です。

    No. 比較項目 F-700 性能比較 F-500 備考
    1 受信バンド FM 専用機 FM/AM  
    2 FM フロントエンド 7連バリコンで豪華な構成 5連バリコン 実性能はそれほど差がない
    3 FM IF 部 ちょっとゴチャゴチャした構成 すっきりとした構成 CF 数は同じ
    4 FM IF 周波数ダウンコンバート部 IC 化 (PA5001) IC 化 (PA5001)  
    5 FM パルスカウント検波部 ディスクリート IC 化 (PA5002) 動作安定度と信頼性を評価
    6 FM MPX 部 PA4006 使用 PA4006 使用  
    7 キャリアリーク LPF コアレス LPF コア入り LPF それほど差がないと思う

  2. この他にも差がありますが、FM 放送を楽しむという観点で比較しました。

  3. FM パルスカウント検波部は F-700 設計時に IC があったら IC 化されていたと思います。 F-500 は IC 化を前提に設計され、同時に IF 回路も見直されています。 IC 化が1979年に間に合ったので、F-700 と同じ年に発売になったと思います。

  4. 実用的なのは F-500 で、おそらく F-700 との性能差はごく僅かと思われます。 従って、値段の安い F-500 はお買い得と思います。



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 電圧チェックポイント (VP)

    VP 標準値 実測値 判定
    Q52-E +13V (未測定) -
    Q56-E -13V (未測定) -

  2. 調整ポイント



  3. FM 受信部の調整

    手順 SSG出力 F-700 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - MUTING/LOCK : OFF
    MODE : AUTO
    IF BAND : WIDE
    AUTO BLEND : OFF
    REC LEVEL CHECK : OFF
    - -  
    2 無信号 - T5 TP3〜4 間 = 0V T メータ調整
    3 83MHz 40dB
    無変調
    指針を 83MHz 付近で
    S メータが最大になる位置
    に合わせる
    OSC
    Buffer
    コイル
    S メータ = 最大 OSC Buffer 調整
    4 78MHz 90dB
    無変調
    指針を 78MHz に合わせる L6 TP3〜4 間 = 0V OSC トラッキング調整
    ダイアヤルと指針を
    合わせるのが目的
    5 88MHz 90dB
    無変調
    指針を 88MHz に合わせる TC6
    6 手順4〜5を数回繰り返す
    7 83MHz 40dB
    無変調
    83MHz 受信 VR1 S メータ = 最大 RF FET バイアス調整
    8 VR2 VR2 近くの
    2個の FET の S 間電圧 = 0V
    ミキサ FET 調整
    9 78MHz 40dB
    無変調
    78MHz 受信 L1
    L2
    L3
    L4
    L5
    S メータ = 最大 RF トラッキング調整
    10 88MHz 40dB
    無変調
    88MHz 受信 TC1
    TC2
    TC3
    TC4
    TC5
    11 手順9〜10を数回繰り返す
    12 83MHz 40dB
    無変調
    83MHz 受信 T1 S メータ = 最大 IF 調整
    13 83MHz 26dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信
    MUTING/LOCK : ON
    VR4 MUTING = ON/OFF 閾 MUTING 調整
    14 83MHz 90dB
    無変調
    T7 TP8 = 1.26MHz
    周波数カウンタで測定
    パルスカウント検波調整
    15 83MHz 60dB
    mono 1kHz
    TC7 オーディオ出力 = 高調波歪最小
    16 83MHz 100dB
    無変調
    VR5 S メータ = 5 (フル) S メータ調整
    17 83MHz
    無変調
    - SSG 出力レベルを調節して
    S メータ = 2.5
    IF NARROW GAIN 調整
    18 83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    VR3 S メータ = 2.5
    19 83MHz 90dB
    mono 400Hz
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    VR6 D メータ = 100% D メータ調整
    20 - オーディオ出力 = 記録 REC LEVEL CHECK 調整
    21 83MHz 受信
    REC LEVEL CHECK : ON
    VR12 オーディオ出力 = 手順20の -6dB
    22 83MHz 90dB
    無変調
    83MHz 受信
    REC LEVEL CHECK : OFF
    VR7 TP9 = 76kHz±200Hz
    周波数カウンタで測定
    VCO 調整
    23 83MHz 90dB
    stereo 1kHz L+R
    VR8 オーディオ出力 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    24 T1
    L29
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 WIDE
    IF 歪補正
    25 83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    T4 NARROW
    IF 歪補正
    26 83MHz 90dB
    stereo 1kHz R
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    VR10 オーディオ出力 (L) = 最小 WIDE
    セパレーション調整
    27 83MHz 90dB
    stereo 1kHz L
    VR9 オーディオ出力 (R) = 最小
    28 83MHz 90dB
    stereo 1kHz R/L
    83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    VR11 オーディオ出力 (L/R) = 最小 NARROW
    セパレーション調整

  4. 調整結果

    1. 製造後30年を経過している割には、全体にそれほど調整ズレはありませんでした。(2009年5月現在)

    2. FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。 良好な数値です。

      項目 IF BAND stereo/mono L R 単位
      ステレオセパレーション (1kHz) WIDE stereo 61 70 dB
      NARROW 60 68 dB
      パイロット信号キャリアリーク WIDE stereo -71 -68 dB
      オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) WIDE mono 0 +0.07 dB
      REC LEVEL CHECK 信号 WIDE mono 281.3 Hz
      -6.0 dB



使ってみました

  1. F-500 とほぼ同じ良好なデザインです。

  2. 機能関連

  3. FM はビックリするほど良い音!



仕様ほか

  1. ドキュメント

  2. 仕様

    FM 受信部
    受信周波数範囲 76〜90MHz
    実用感度(mono, 75Ω) mono : 0.95μV/10.8dBf
    S/N 比 50dB 感度(Narrow, 75Ω) mono : 1.8μV/16.2dBf
    stereo : 20.0μV/37.2dBf
    S/N 比(85dBf 入力時) mono : 92dB
    stereo : 87dB
    高調波歪率(Wide) Wide Mono : 0.03% (100Hz), 0.03% (1kHz), 0.03% (10kHz)
    Wide Stereo : 0.04% (100Hz), 0.04% (1kHz), 0.09% (10kHz)
    Narrow Mono : 0.08% (1kHz)
    Narrow Stereo : 0.2% (1kHz)
    キャプチャーレシオ Wide : 0.8dB
    Narrow : 2.0dB
    実効選択度 Wide : 50dB (400kHz)
    Narrow : 65dB (300kHz)
    ステレオセパレーション Wide : 60dB (1kHz), 50dB (20Hz〜10kHz)
    周波数特性 20Hz〜15kHz ±0.5dB
    RF 相互変調特性 106dB (2.5MHz 離調)
    91dB (800kHz)
    イメージ妨害比 120dB
    IF 妨害比 120dB
    スプリアス妨害比 120dB
    AM 抑圧比 70dB
    サブキャリア抑圧比 70dB
    ミューティング動作レベル 4.9uV (25.0dB)
    アンテナインピーダンス 75Ω不平衡型
    総合
    出力レベル/インピーダンス (100%変調) Fixed : 650mV/2.2kΩ
    Variable : 0〜1300mV/2.2kΩ
    マルチパス出力 Vertical : 130mV/10kΩ
    Horizontal : 400mV/10kΩ
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力(電気用品取締法) 25W
    外形寸法 420(W)×98(H)×393(D)mm
    重量 7.5kg
    その他
    発売時期 1979年
    定価 65,000円