KENWOOD D-3300T (2号機) をゲット!
2023年8月3日、奈良県大和高田市の N さんより、完全故障して動作しない
KENWOOD D-3300T
を寄贈していただきました。
写真は修理完了後です。
定価14万円
の高級 FM 専用チューナです。
さてさて、直るかな???
程度&動作チェック
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寄贈者のコメント
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1年半前中古で入手しました。
購入から最近までは受信・音質等問題なく大変良好でした。
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使っていたら、突然 R チャンネルから音が出なくなりました。
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その後、更に状態が更に悪化しました。
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電源は入るのですが、両チャンネルとも音が出なくなり、表示ディスプレイが真暗になりました。
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外観
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製造シリアル番号は [69K11496] で、電源コードの製造マーキングより [1986年製造品] と判明しました。
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このチューナのデザイン的特長とも言える左右のサイドウッドが欠品しています。
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天板カバーをサイドで留めるネジ×4本のうちの手前側の2本が欠品しています。
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サイドウッドが無い状態で元のネジで留めようとすると、ネジが長過ぎて内部の基板に当たります。
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よって、欠品というより手前側の2本を故意に外したのだと思います。
後ろ側の2本は基板に当たらないです。
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フロントパネルとリアパネルにキズなどはなく良い状態です。
汚れはあります。
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リアパネルの端子類には輝きが残っており、問題はありません。
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全体に汚れはありますが、ほぼキズやスレはなく、クリーニングでかなり回復しそうに思います。
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電源 ON してチェック
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電源は入りますが、FL 表示器が全く表示せず音も出ません。
これ以上チェックしようがないです。
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寄贈者からの [かつては良好動作していた] ということだけが希望の光です。
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カバーを開けてチェック
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内部は非常に綺麗で、目視では劣化が見られる部品は無いように見えます。
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基板は何かのクリーナ液で洗浄されているようです。
基板上のジャンパ線が密集している辺りでクリーナ液が結晶化して残留しています。
リペア
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FL 表示器が全く表示しない
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全くの不動作状態ですから、まずは電源電圧を疑いました。
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電源電圧チェックポイント (VP) の実測結果は以下です。
-14V 電圧が出ておらず、ここが故障しています。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| J35 (Q26-E) |
+14V |
+14.6V |
〇 |
| J38 (IC11-OUT) |
+5.6V |
+5.70V |
〇 |
| J40 (Q27-E) |
-14V |
0V |
× |
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基板の裏側をチェックすると [Q27] のハンダ付け部でハンダクラックがありました。
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[Q27] は右の写真のように銅製放熱板にネジ留めして基板に取り付けられています。
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銅製放熱板にネジ留めされているのは、奥から [Q26] [IC11] [Q27] です。
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放熱板と基板の2方向からストレスがかかり、ハンダクラックが発生しやすいです。
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クラック部を手でグラグラすると FL 表示が出ました。
原因はハンダクラック!
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対策
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[Q27] のリード部を補修ハンダ付けしました。
念のため、お隣さんの [Q26] [IC11] も補修ハンダ付けしました。
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-14.6V の電圧が出て、FL 表示はちゃんと出て、綺麗な音が出るようになりました。
見事!直りました!!!
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普通に使えるようになったので、あらためて動作チェック
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FL 表示は新品同様という訳ではありませんが、特に問題ない輝度があります。
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良好な音が出て、[STEREO] 表示が出ます。
ボタン操作は良好です。
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AUTO TUNING すると放送局の周波数より -0.1MHz の場所で受信することがあります。
同調点調整が少しズレているようです。
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同調点がズレている
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再調整で直りました。
AUTO TUNING でも放送局の周波数でピタリ止まるようになりました。
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リアパネルの RCA 端子のハンダクラック対策
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RCA 端子のハンダ付け部もリアパネルと基板からの2方向からストレスがかかり、ハンダクラックしやすいです。
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RCA 端子のリード部を補修ハンダ付けしてハンダクラックを予防しました。
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ネジ2本欠損
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現在付けられている2本も長過ぎるので、全部 (4本) 4×12mm タッピングビスに交換しました。
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ネジには [4×12・タッピングビス・トラス黒] を使いました。
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スーパービバホームで12本袋入り税込173円で売られています。
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右の写真のように、全く違和感がなく良好です。
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クリーニング
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フロントパネルを外して内外を
リンレイ NEW プロインパクト 中性
で清掃しました。
オーディオ機器ですから中性であることが重要。
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キズやスレがなかったことが幸いして綺麗になりました。
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天板もフロントパネルと同様に清掃しました。
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フロントパネルほど綺麗にはなりませんでしたが、マシにはなりました。
気になってきたら再塗装する手があります。
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何かのクリーナ液が結晶化して残留している。
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気になる箇所だけアルコール洗浄して綺麗になりました。
全箇所ではなく、一部だけです。
再調整
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電圧チェック (VP)
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ここは今回修理しています。
修理後の実測値は以下のように良好です。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| J35 (Q26-E) |
+15V |
+14.6V |
〇 |
| J38 (IC11-OUT) |
+5.6V |
+5.70V |
〇 |
| J40 (Q27-E) |
-15V |
-14.6V |
〇 |
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FM 受信部の調整
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再調整結果
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以下のような高級機らしい素晴らしい優秀な性能に調整できました。
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特にステレオセパレーションが 20dB → 70dB (300倍以上) と大きく改善し、音の解像度が上がり、高音質になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
66 |
66 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.016 |
% |
| stereo |
0.016 |
% |
| NARROW |
mono |
0.04 |
% |
| stereo |
0.10 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-60 |
-56 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
-0.01 |
dB |
| REC CAL |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
| -5.1 |
dB |
使ってみました
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デザイン
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フロントパネルが分厚いヘアラインアルミ材、チューニングツマミやボタンもアルミ材、天板は分厚い鉄板と、質感が良いです。
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同社の KT-1100D と同じような顔ですが、作りは D-3300T のほうが優れています。
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本機にはサイドウッドが欠品していますが、分厚い鉄製天板のおかげで様になります。
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チープな薄いビニコート鉄板の KT-1100D とは大違いです。
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FM アンテナ入力は簡易 F 端子になっていて、2系統あります。
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[MODULATION] 表示はピークホールド付きで見易く、見ていて面白いです。
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プリセットメモリは16局分あります。
これだけあれば、まず十分です。
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[QUIETING CONTROL] ボリュームがあります。
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電波の弱い放送局をステレオ受信して雑音が多い場合に操作すると、ハイブレンドされて S/N が改善されます。
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通常は [NORMAL] 端で使います。
[DISTANCE] 端にするとモノラルになってしまうので注意です。
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感度と音質
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久しぶりに D-3300T の音を聞いて、これはやはり
高級機の素晴らしい音だなぁ~
と思いました。
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聴き惚れるほど素晴らしい音です。
KT-1100D とさほど変わらない構成なのに、何が違うのでしょうね???
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KENWOOD らしい、解像度の高いカチッとした硬派の音です。
音にキラキラ感があります。
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S/N が非常に良く暗黒の静寂の中から細かい音が良く出ています。
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高級機らしい非常に安定した
感度と妨害電波排除能力です。
定価14万円にふさわしい高性能・高音質マシンです。