KENWOOD D-3300T (3号機) が到着
2023年9月19日、埼玉県草加市の Y さんより、
KENWOOD D-3300T
の修理依頼品が到着しました。
定価14万円
の高級 FM 専用チューナです。
程度&動作チェック
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寄贈者のコメント
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KENWOOD が好きなので D-3300T を購入しました。
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前オーナは15年間使用していなかったらしく非常に不安でしたが、とても状態が良く、非常に良い音質で聴くことができました。
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しかし、以下の問題がありました。
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RF セレクタスイッチを DIRECT にすると受信状態が著しく悪化します。
DISTANCE でないと SN 比の良い状態で聴くことができません。
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MANUAL モードで選曲つまみを回しても、周波数を下げることができません。
上げることはできます。
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アンテナ A/B 切替えスイッチが作動しません。
スイッチを押しても A のままです。A しか使用しないのですが、気持ち悪いです。
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外観
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製造シリアル番号は [69K11448] で、電源コードの製造マーキングより [1986年製造品] と判明しました。
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底板に KENWOOD サービスのメンテナンスシールが2枚貼られていました。
[1991年8月23日] [1993年5月12日] に修理されています。
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フロントパネルとリアパネルにキズなどはなく良い状態です。
汚れはあります。
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リアパネルの端子類には輝きが残っており、問題はありません。
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サイドウッドは2枚ともフロント側は綺麗ですが、リア側のエッジに僅かな当てキズとハゲがあります。
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電源 ON してチェック
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電源は入り、FL 表示器の輝度も十分明るく、操作ボタンも正常に反応します。
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FM 受信でき [STEREO] 表示も出て良い音が出ます。
S メータの振れや T メータ動作も正常で、ほぼ問題なさそうです。
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[TUNING] ノブは時計回り方向ににしか反応せず、反時計回りに方向には反応しません。
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時計回しで [UP] ランプは点灯しますが、反時計回しで [DOWN] ランプは点灯しません。
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S メータのレベル5と7 (下から5つ目と7つ目のドット) が点灯しません。
9本あるバーの全てで同じです。
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[RF SELECTOR] を [DISTANCE]→[DIRECT] に切り換えると S メータの振れがガクンと落ちます。
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この機種はこの傾向があるのですが、感度が落ちているのかもしれません。
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[ANTENNA] スイッチで A/B はなんとか切り換わってはいますが ・・・
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A/B 間のクロストークが大きく、S メータの振れの変化が少ないので、一見、切り換わっていないようにも見えます。
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カバーを開けてチェック
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内部は少し綿埃が溜まっていますが綺麗で、目視では劣化が見られる部品は無いように見えます。
リペア
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[TUNING] ノブは時計回り方向ににしか反応せず、反時計回りに方向には反応しない
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下の回路図は [フロントパネル基板] の [UP] [DOWN] ランプ回路です。
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[TUNING] ノブを時計回しすると [UP] ランプが点灯し、反時計回しすると [DOWN] ランプが点灯します。
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調査したところ、下の回路の [C6] 100uF/6.3V 電解コンデンサが内部短絡して 1.6Ω になっていました。
[C6] は [DOWN] ランプ側です。
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[C6] が内部短絡して DOWN 信号が出なくなっていたのです。
これが原因です。

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修理
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[C6] を交換すれば直るのですが、この故障の影響で [Q5] に過大電流が流れて劣化している可能性があります。
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UP 側にも同じ電解コンデンサとトランジスタが使われており、こちらも心配です。
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よって、[C6] [C7] [Q4] [Q5] を一斉交換しました。
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右の写真は、交換前に基板に実装されていた部品です。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C6 |
100uF/6.3V |
100uF/16V |
電解コンデンサ |
| C7 |
100uF/6.3V |
100uF/16V |
| Q4 |
2SC945 |
2SC1815-GR |
トランジスタ |
| Q5 |
2SC945 |
2SC1815-GR |
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修理後の動作チェック
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[TUNING] ノブで正常に周波数が変わり、[UP] [DOWN] ランプも点灯します。
見事! 直りました!!!
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S メータのレベル5と7 (下から5つ目と7つ目のドット) が点灯しない
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下の回路図は [フロントパネル基板] の [FL 表示器] の回路です。
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[FL 表示器] の 3~9pin が S メータのドットに対応し、左からレベル7~1の順に並んでいます。
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[0V = 消灯] [+17V =点灯] となります。
点灯しない 3pin と 5pin の電圧をチェックしましたが正常です。

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こうなると、[FL 表示器] 故障確定です。
交換する [FL 表示器] は入手不可のため、この故障は修理できません。
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なお、長時間電源 ON のままにしておくと自然に直ることもありました。
[FL 表示器] 内部の接触不良が温まることで一時的に直るのでしょう。
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いずれにせよ、[FL 表示器] 自体の不良のため、どうしようもないです。
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[ANTENNA] スイッチで A/B 間のクロストークが大きい
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下の回路図は [ANTENNA] スイッチ周辺の回路です。
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3連メカニカルスイッチで真ん中のスイッチがクロストークを軽減する目的で入っています。
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メカニカルスイッチの接点は常に空気に触れており、使っていた環境により腐食して接触不良になりやすいです。
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本機は15年間ほど倉庫保管されていたらしく、この倉庫の湿度で接点が腐食したと思います。
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洗浄剤をスイッチの隙間から浸透させて回復を試みましたが、直りませんでした。

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修理依頼者に状況を説明し、[ANTENNA] スイッチでの A/B 切り換えは諦め、常に A 側にすることにしました。
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以下のように、2箇所パターンカット (×のところ) し、1本の電線 (赤線) で A 側と直接接続しました。
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改造後に動作チェックすると、A アンテナ端子から良好に受信できました。
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更に感度も少し上がりました。
アンテナ信号ラインでもスイッチ接点の接触不良があったようです。

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[RF SELECTOR] を [DISTANCE]→[DIRECT] に切り換えると S メータの振れがガクンと落ちる
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D-3300T は DIRECT 側にすると RF 増幅部が無くなるので、感度がガクンと落ちるのはやむ得ないです。
故障ではないです。
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ただし、今回再調整したことで感度が上がり、DIRECT でも S メータのレベル2~3程度で受信できるようにはなっています。
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ハンダクラック対策
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[Q26] [IC11] [Q27] は放熱板と基板からの2方向からストレスがかかり、ハンダクラックしやすいです。
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[Q26] [IC11] [Q27] のリード部を補修ハンダ付けしてハンダクラックを予防しました。
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RCA 端子のハンダ付け部はリアパネルと基板からの2方向からストレスがかかり、ハンダクラックしやすいです。
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RCA 端子のリード部を補修ハンダ付けしてハンダクラックを予防しました。
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クリーニングなど
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内部の綿埃はエアブロアで吹き飛ばしてややマシになりました。
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[TUNING] ノブでの不具合修理でフロントパネルを分解したので、ついでに以下のクリーニングをしました。
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サイドウッドのリア側のエッジにあるハゲは黒塗料で補修塗りして目立たなくしました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好です。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| J35 (Q26-E) |
+15V |
+14.8V |
〇 |
| J38 (IC11-OUT) |
+5.6V |
+5.61V |
〇 |
| J40 (Q27-E) |
-15V |
-14.8V |
〇 |
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FM 受信部の調整
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再調整結果
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同調点、PLL 検波 NULL が大きくズレていました。
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フロントエンドのトラッキングが大きくズレており、調整で2倍以上感度が上がりました。
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以下のような高級機らしい素晴らしい優秀な性能に調整できました。
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特にステレオセパレーションが 34dB → 70dB (65倍) と大きく改善し、音の解像度が上がり、高音質になりました。
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再調整の効果は絶大で、[いい音]→[ウットリするほど聴き惚れる音] に変身しました。
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調整中に気が付いたのですが、MODULATION メータでもドット欠けがあり、左から7個目のドットが点灯しません。
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これも FL 表示器そのものの不具合です。
今後も徐々に劣化が進むかもしれません。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
64 |
68 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.011 |
% |
| stereo |
0.011 |
% |
| NARROW |
mono |
0.012 |
% |
| stereo |
0.072 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-62 |
-70 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.01 |
dB |
| REC CAL |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
| -6.8 |
dB |
使ってみました
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デザイン
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フロントパネルが分厚いヘアラインアルミ材、チューニングツマミやボタンもアルミ材、天板は分厚い鉄板と、質感良好です。
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サイドウッドが高級感を醸し出しています。
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FM アンテナ入力は簡易 F 端子になっています。
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[MODULATION] 表示はピークホールド付きで見易く、見ていて面白いです。
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プリセットメモリは16局分あります。
これだけあれば、まず十分です。
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[QUIETING CONTROL] ボリュームがあります。
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電波の弱い放送局をステレオ受信して雑音が多い場合に操作すると、ハイブレンドされて S/N が改善されます。
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通常は [NORMAL] 端で使います。
[DISTANCE] 端にするとモノラルになってしまうので注意です。
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感度と音質
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聴き惚れるほど素晴らしい音です。
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KENWOOD らしい、解像度の高いカチッとした硬派の音です。
音にキラキラ感があります。
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S/N が非常に良く暗黒の静寂の中から細かい音が良く出ています。
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高級機らしい非常に安定した
感度と妨害電波排除能力です。
定価14万円にふさわしい高性能・高音質マシンです。