KENWOOD D-3300T (6号機) が到着
2024年1月26日、大阪市東淀川区の K さんより、
KENWOOD D-3300T
の修理依頼品が到着しました。
定価14万円
の高級 FM 専用チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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正常動作しており、基本的には再調整をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [80700187] で、電源コードの製造マーキングより [1988年製造品] と判明しました。
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全体的に綺麗な逸品です。
サイドウッドも綺麗な状態を保っています。
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電源 ON してチェック
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特に問題なく動作します。
[STEREO] が出てステレオ感があり音も良いです。
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オートチューングもでき、周波数ズレはないです。
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軽く現状の性能値を測定してみました。
性能低下はありますが、十分実用範囲です。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
46 |
46 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.028 |
% |
| stereo |
0.029 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-49 |
-67 |
dB |
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カバーを開けてチェック
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内部には綿埃が結構堆積しています。
目視では劣化とわかる部品は無いように見えます。
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フロントエンドの OSC トリマコンデンサが故障しています。
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回転に合わせた容量変化をせずギクシャクしています。
叩くと容量が変わります。
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プリセットメモリバックアップ用の電気二重層コンデンサはかなり古いタイプで、交換したほうがよいです。
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[電源回路のパワートランジスタ] と [リアパネルの RCA 端子] のリードにハンダクラックが見られます。
リペア (その1):フロントエンドの OSC トリマコンデンサが故障している
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現象
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回転に合わせた容量変化をせずギクシャクしています。
叩くと容量が変わります。
これでは調整に入れません。
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トリマコンデンサはハトメ構造になっており、このハトメがサビると故障します。
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修理
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1個故障するということは他のトリマコンデンサも怪しいです。
一斉交換が正解です。
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下の写真はトリマコンデンサ交換後です。
赤〇で囲んだ5個を 10pF タイプに交換しました。

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交換後、スムーズに調整できるようになりました。
直りました!
リペア (その2):プリセットメモリバックアップ用の電気二重層コンデンサはそろそろ寿命
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概要
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D-3300T においては AC プラグを抜いても電気二重層コンデンサで一定時間プリセットメモリの記憶をバックアップします。
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もう製造から40年近く経過しているので、そろそろ電気二重層コンデンサも寿命です。
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修理
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左の写真で橙色の部品が電気二重層コンデンサです。
古いタイプなので大きいですが容量は 18mF しかありません。
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右の写真は交換後です。
小さくなったのに、容量は 1F もあります。

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18mF→1F と50倍以上になったので、従来より長時間バックアップできます。
おそらく数ヶ月か?
リペア (その3):[電源回路のパワートランジスタ] と [リアパネルの RCA 端子] のリードにハンダクラックが見られる
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ハンダクラックしやすい箇所
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左の写真で赤〇で囲んだ箇所は、リアパネルにある RCA 端子のリードと基板のハンダ付け部です。
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ここはリアパネルと基板の2方向から常にストレスがかかるのでハンダクラックしやすいです。
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右の写真は銅製放熱器に取り付けられた [パワートランジスタ] [電源 IC] です。
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ここは銅製放熱器と基板の2方向から常にストレスがかかるのでハンダクラックしやすいです。

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下の写真は [パワートランジスタ] [電源 IC] のリードのハンダ付け部です。
やはりハンダクラックしています。
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一番右のハンダ付け部に同心円状の亀裂があります。
これがハンダクラックです。
これ以外にもハンダクラックがあります。

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修理
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熱で劣化している古いハンダを吸い取り、新しく補修ハンダ付けして直りました。
リペア (その4):その他
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フロントパネル内部の清掃
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トリマコンデンサ交換時にフロントパネルを分解したので、同時にフロントパネル内部を清掃しました。
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ディスプレイ表示がクッキリ表示になりました。
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内部に綿埃が結構堆積している
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刷毛とエアブロアで大きな綿埃は除去しました。
基板には既に部品が乗っているため、完全ではありません。
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部品交換前に基板に実装されていた部品の記念撮影
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電気二重層コンデンサとトリマコンデンサです。

再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| J35 (Q26-E) |
+15V |
+14.8V |
〇 |
| J38 (IC11-OUT) |
+5.6V |
+5.68V |
〇 |
| J40 (Q27-E) |
-15V |
-14.8V |
〇 |
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FM 受信部の調整
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再調整結果
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PLL 検波調整が大きくズレていましたが、再調整で音の解像度が上がり、惚れ惚れする高音質になりました。
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性能値も以下のように優秀になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
68 |
68 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0055 |
% |
| stereo |
0.0057 |
% |
| NARROW |
mono |
0.0083 |
% |
| stereo |
0.0083 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-67 |
-69 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.06 |
dB |
| REC CAL |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
| -6.4 |
dB |
使ってみました
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デザイン
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フロントパネルが分厚いヘアラインアルミ材、チューニングツマミやボタンもアルミ材、天板は分厚い鉄板と、質感良好です。
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サイドウッドが高級感を醸し出します。
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[MODULATION] 表示はピークホールド付きで見易く、見ていて面白いです。
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プリセットメモリは16局分あります。
これだけあれば、まず十分です。
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[QUIETING CONTROL] ボリュームがあります。
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通常は [NORMAL] 端で使います。
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[DISTANCE] 端にするとモノラルになってしまうので注意です。
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ステレオ受信して雑音が多い場合に操作すると、ハイブレンドされて S/N が改善されます。
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感度と音質
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聴き惚れるほど素晴らしい音です。
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KENWOOD らしい、解像度の高いカチッとした硬派の音です。
音にキラキラ感があります。
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S/N が非常に良く暗黒の静寂の中から細かい音が良く出ています。
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高級機らしい非常に安定した
感度と妨害電波排除能力です。
定価14万円にふさわしい高性能・高音質マシンです。