KENWOOD KT-1010F (11号機) が到着
2026年5月3日、静岡県御殿場市の A さんより
KENWOOD KT-1010F
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [59K10072] で、電源コードの製造マーキングが見当たらず、ここからは製造年は不明です。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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かなり汚れており状態は悪いです。
フロントパネルの天板への折り返し部分に数ヵ所の線キズがあります。
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各操作ボタントップにネチャネチャしたゴミが付着しており汚いです。
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電源 ON して動作チェック
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電源は入りディスプレイの輝度は新品同様に明るいです。
操作ボタンは正常そうに反応します。
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[REC CAL] ボタン操作で正常にテスト音が出ます。
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FM 受信
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-0.2MHz の周波数ズレがあります。
80MHz の放送を 79.8MHz で受信。
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この状態で S メータはフルに振れ、[STEREO] ランプが点灯して放送を受信できます。
ステレオ感はかなり弱いです。
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[STEREO] ランプが時々チラつきますが、周波数ズレが原因と思います。
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、右の写真の筆者が標準にしているループアンテナを接続してチェックしました。
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SONY ST-SA5ES などの大型ループアンテナです。
中古市場によく出ています。
横幅 28cm、高さ 12cm くらいのサイズです。
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相性は良さそうで、S メータが元気に振れて問題なく受信できます。
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カバーを開けてチェック
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内部は綺麗で、目視で明らかに劣化とわかる部品はないです。
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使用 IC のロット番号より、本機は [1985年製造品] とわかりました。
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黒色のフラットケーブルの全部の表面がネチャネチャしています。
加水分解なのでやむを得ないです。
放置です。
リペア (その1):FM 受信で -0.2MHz の周波数ズレがある
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調査と原因
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[TP10]~[TP11] で FM 同調点電圧を測定すると 1.9V ありました。
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この電圧の調整目標値は 0±10mV ですから全然ダメです。
内蔵チタコンの劣化です。
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調整で FM 同調点電圧を 0V にできましたが、1.9V もズレていたことより、チタコン交換したほうがよいです。
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修理
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左の写真で黄〇で囲んだ部品が FM 同調点検出用 [T2] です。
これを基板から取り出したのが右の写真です。

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左の写真は取り出した [T2] の裏側です。
チクワの形をしたチタコンが黒くなって劣化しています。
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[T2] から劣化したチタコンを除去し基板に戻しました。
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除去したチタコンの代わりに、右の写真のように基板の裏側で温度補償 30ppm 積層セラミックコンデンサ 100pF を取り付けました。

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修理後の動作チェック
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[T2] を調整すると S カーブが出て、同調点電圧を 0V にすることができました。
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S/T メータは放送局の周波数でセンタに白色表示され、[STEREO] 表示も出て正常に受信できることを確認しました。
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[STEREO] ランプが時々チラつく現象も直り、安定してステレオ受信できることを確認しました。
リペア (その2):その他
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ステレオ時に S/N が極端に悪くなる (40dB 悪化)
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再調整に入ってから気が付きました。
数値で見ないと気付きにくい現象です。
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原因は [QUIETING COTROL] スライドボリュームの接触不良 (ガリ) でした。
接点復活スプレー
を噴射して直りました。
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どうも本機にはタバコのヤニが付着と思われる跡が見られ、これがそもそもの原因です。
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隣にある [AM IF BAND] スライドボリュームにも同様に接点復活スプレーを噴射しました。
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RCA 端子のハンダクラック予防補修
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右の写真は RCA 端子の裏側です。
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リードのハンダ付け部分には、リアパネルと基板の2方向から常にストレスがかかっているので、ハンダクラックしやすいです。
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RCA 端子のリードのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
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各操作ボタントップにネチャネチャしたゴミが付着しており汚い
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フロントパネルを取り外してパネル内外を軽く清掃しました。
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ネチャネチャしたボタントップのゴミは無水アルコールで拭き取りました。
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ウェスには黄色の汚れがつきました。
タバコのヤニ?
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透明板の内側が綺麗になって表示のコントラストが上がりました。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| 電源基板 CN1-1pin |
-15V |
-13.5V |
〇 |
OP アンプ |
| 電源基板 CN1-3pin |
+5.6V |
+5.54V |
〇 |
コントローラ |
| 電源基板 CN1-4pin |
+28V |
+28.1V |
〇 |
VT 電源 |
| 電源基板 CN1-6pin |
+15V |
+14.1V |
〇 |
チューナ、OP アンプ |
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FM/AM 受信部の調整
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再調整結果
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FM 受信
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フロントエンドのトラッキング調整ズレがありました。
再調整で感度が 10% 程度上がりました。
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PLL 検波でやや調整ズレしていました。
再調整で規定内に入りました。
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再調整でステレオセパレーションと高調波歪率が大きく改善し素晴らしい音になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
67 |
63 |
dB |
| NARROW |
60 |
60 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0058 |
% |
| stereo |
0.0058 |
% |
| NARROW |
mono |
0.013 |
% |
| stereo |
0.013 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-89 |
-79 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.12 |
dB |
| REC CAL |
WIDE |
mono |
375 |
Hz |
| -6.7 |
dB |
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] がないので、IF 調整だけ実施しました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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到着時は何だか寝ぼけたようなしまりのない音でした。
原因は何と!スライドボリューム!!!
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故障が全て直り新品時の素晴らしい性能と音質が蘇ってよかったです。
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デザイン
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高級感を目指しているのではなく、通信機に近いカチッとしたデザインです。
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薄型デザインですが、チューナに必要な機能はフル装備です。
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電波が強力な FM 放送を高音質で聴くには [IF BAND : WIDE] [QUIETING CONTROL : NORMAL] に設定します。
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感度と音質
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高級チューナにも匹敵する高性能で、FM 放送を高音質に聴きたい期待に応えてくれます。
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感度はかなり高く申し分ありません。
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素性が良いので、
流石に良い音
です。
ハッキリ・クッキリの明瞭度の高い音です。
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亡き越谷在住のオーディオ評論家
長島鉄男
さんが絶賛したチューナというのがよくわかります。