KENWOOD KT-1010F (5号機) をゲット!
2023年8月4日、千葉県木更津市の K さんより
KENWOOD KT-1010F
を寄贈いただきました。
動作するのかどうかもわからないのですが・・・
程度&動作チェック
-
寄贈者のコメント
-
失礼とは思いますが手持ちのパーツ類とチューナを寄付します。
ご自由にお使いください。
-
外観
-
製造シリアル番号は [63K10002] で、電源コードの製造マーキングより [1986年製] とわかりました。
-
[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
-
全体的にかなり綺麗な逸品です。
リアパネルの端子類にも輝きが残っています。
よくよく見ると僅かなキズやスレはあります。
-
電源 ON して動作チェック
-
電源は問題なく入りました。
FL ディスプレイは新品同様に明るいです。
-
周波数が [1888] と表示され REC CAL 音が出たままで、操作が全くできません。
これ以上チェックしようがないです。
-
カバーを開けてチェック
-
内部は非常に綺麗で、目視で劣化とわかる部品は無さそうです。
-
[フロントパネル基板]~[チューナ基板] を接続するケーブルの全てで表面がネチャネチャしています。
リペア (その1):電源 ON で [1888] を表示し、全く操作できない
-
トラブルシューティング
-
原因の1つはメモリバックアップ用電解コンデンサ [C243] 2200uF/6.3V の内部短絡でした。
-
KT-1010F で [C243] の故障は多いです。
KENWOOD が採用した電解コンデンサのロット不良と考えます。
-
新品の電解コンデンサと交換して、少し操作できるようになりましたが、まだおかしいです。
-
+5.6V ラインを測定すると、+2.7V で中途半端な電圧になっていました。
-
+5.6V を作成する [電源基板] の [IC1] 78M05 を交換してみましたが直りませんでした。
-
最終的に電解コンデンサ [C216] 47uF/10V も内部短絡していると判明しました。
-
[C216] を新品に交換して、やっと直りました。
-
正式対策
-
トラブルシューティングでは仮付けとしていた部品を正式に実装しました。
-
以下は交換部品リストで、右の写真は故障していた部品です。
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
C216 |
47uF/10V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
電解コンデンサ 105℃クラスに交換 |
C243 |
2200uF/6.3V (85℃) |
2200uF/6.3V (105℃) |
IC1 |
uPC78M05 (0.5A) |
NJM7805 (1.5A) |
+5V レギュレータ 1.5A クラスに交換 |
-
正常に操作できるようになったので、この状態で再度チェックしました。
-
各ボタンやスイッチなどの動作は正常です。
[REC CAL] ボタンを押すと、正常にテストトーンが出ます。
-
FM 受信
-
-0.1MHz の周波数ズレがあります。
80MHz の放送が 79.9MHz で受信します。
-
周波数ズレしていますが、出てくる音は正常で [STEREO] ランプも点灯します。
感度も問題なさそうです。
-
AM 受信
-
手持ちの純正ではないループアンテナで良好に受信でき、感度も問題なさそうです。
-
[AM IF BAND] スライドレバーを動かすとシャリシャリというガリ音が出ます。
リペア (その2):その他の修理
-
FM で -0.1MHz の周波数ズレがある
-
FM 同調点検出用 [T2] の再調整で直りました。
-
[AM IF BAND] スライドレバーを動かすとガリ音が出る
-
ハンダクラック予防対策
-
リアパネルにある [FM ANTENNA] [AM ANTENNA] [OUTPUT] 端子と基板との接合部を補修ハンダ付けしました。
-
[フロントパネル基板]~[チューナ基板] を接続するケーブルの全てで表面がネチャネチャしている
-
ケーブルを取り外せば完璧に除去できるのですが、ケーブルを痛めるリスクがあります。
-
ケーブルそのままでできる範囲を無水アルコールでネチャネチャを拭き取りました。
ネチャネチャで性能低下する訳ではなく十分と思います。
再調整
-
電源電圧チェッック (VP)
-
以下のように良好でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
電源基板 CN1-1pin |
-15V |
-14.1V |
〇 |
OP amp. |
電源基板 CN1-3pin |
+5.6V |
+5.63V |
〇 |
コントローラ |
電源基板 CN1-4pin |
+28V |
+28.3V |
〇 |
VT 電源 |
電源基板 CN1-6pin |
+15V |
+14.3V |
〇 |
チューナ、OP amp. |
-
FM/AM 受信部の調整
-
再調整結果
-
FM 受信
-
フロントエンドの調整で感度が大きく向上 (1.5倍) しました。
-
同調点検出が大きく調整ズレしていました。
PLL 検波でやや調整ズレがありました。
-
ステレオセパレーションが 28dB→70dB に大きく向上 (100倍以上) し、音質も素晴らしく向上しました。
-
以下のように素晴らしく優秀な性能になりました。
当たりの個体です。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
NARROW |
60 |
54 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0083 |
% |
stereo |
0.0083 |
% |
NARROW |
mono |
0.015 |
% |
stereo |
0.017 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-71 |
-65 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.02 |
dB |
REC CAL |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
-5.9 |
dB |
-
AM 受信
-
[純正ループアンテナ] の添付がなかったので、[SONY ST-SA5ES のループアンテナ] で最高感度になるよう再調整しました。
-
ループアンテナは RF 同調回路の一部なので、ループアンテナが変わると感度が落ちると思います。
-
本機のように FM が超優秀なチューナで音がかなり落ちる AM 放送を聴く人がいるのだろうか?
使ってみました
-
修理&再調整が終わって
-
到着時は全く不動状態でしたが、新品以上の良好動作に蘇って良かったです。
-
本機は当たり!の個体
で、FM 性能と音質は素晴らしく良かったです。
高級チューナと比べても互角の性能です。
-
デザイン
-
高級感を目指しているのではなく、通信機に近いカチッとしたデザインです。
-
[KT-1010] [KT-1010Ⅱ] の後継機で寸法は全く同じです。
-
薄型デザインですが、チューナに必要な機能はフル装備です。
-
電波が強力な FM 放送を高音質で聴くには [IF BAND : WIDE] [QUIETING CONTROL : NORMAL] に設定します。
-
プリセットメモリのバックアップは 2200uF の電解コンデンサなので、電源コードを抜いた状態では1週間程度と思います。
電源コードのプラグを差し込んだ状態では、([POWER] スイッチが OFF でも) 常にこの電解コンデンサに給電されているので、プリセットメモリが消えることはありません。
-
感度と音質
-
高級チューナにも匹敵する高性能で、FM 放送を高音質に聴きたい期待に応えてくれます。
-
感度はかなり高く申し分ありません。
-
素性が良いので、
流石に良い音
です。
ハッキリ・クッキリの明瞭度の高い音です。
-
上位機種の
KT-1100D
よりメンテナンス性が良く、構成や性能・音質がほぼ変わらず、お奨めチューナ
-
亡き越谷在住のオーディオ評論家
長島鉄男
さんが絶賛したチューナというのがよくわかります。