KENWOOD KT-1010F (6号機) が到着
2024年2月16日、神奈川県厚木市の S さんより
KENWOOD KT-1010F
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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昨年買った KT-1010F は古いながらもいい音で買ってよかったと思ってました。
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ところが、故障してチューニングレベルメータ動かずとなりました。
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FM も AM も音が出てこない状態です。
ボタン操作は問題なく、バンド切り換えや選局・周波数表示などは正常です。
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外観
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製造シリアル番号は [5YK11170] で、電源コードの製造マーキングより [1986年製] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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天板に汚れや足形がありますが、全体的には綺麗なほうです。
リアパネルの端子類にも輝きが残っています。
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電源 ON して動作チェック
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電源は問題なく入りました。
FL ディスプレイは新品同様に明るいです。
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FM/AM とも音が出ないです。
[REC CAL] のテスト音も出ないです。
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S/T メータはそれなりに振れるので受信はしているようです。
ただ音が出ないだけです。
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これ以上の動作チェックは修理を進めないとわかりません。
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カバーを開けてチェック
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内部は非常に綺麗で、目視で劣化とわかる部品は無さそうです。
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黒色のリボンケーブルの全てで表面がネチャネチャしています。
加水分解でやむを得ないです。
リペア (その1):FM/AM とも音が出ない
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原因
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原因は AF 増幅用 OP アンプのハーフ電圧 (VREF, TP12) バイパス用の [C90] 47uF/10V 電解コンデンサ内部短絡でした。
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短絡のため、VREF=0V になっていました。
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こうなると OP アンプ全てが動作できなくなるので、音が出ません。
現象と辻褄が合います。
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[C90] を基板から取り外して DMM で測定すると 0Ω でした。
完全短絡です。
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修理
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[C130] も回路的に [C90] と並列になっているので一緒に交換しました。
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以下は交換部品リストで、右の写真は故障していた部品です。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C90 |
47uF/10V (85℃) |
56uF/35V (105℃) |
電解コンデンサ |
| C130 |
47uF/10V (85℃) |
56uF/35V (105℃) |
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信頼性を上げるため、[やや高容量] [高耐圧] [高耐熱] 品に交換しています。
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交換後、正常に音が出るようになりました。
音の出るチューナはイイのぉ~
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正常に音が出るようになったので、再度、動作チェック
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各ボタンやスイッチなどの動作は正常です。
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[REC CAL] ボタンを押すと、正常にテスト音が出ます。
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FM 受信
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-0.1MHz の周波数ズレがあります。
80MHz の放送が 79.9MHz で受信します。
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周波数ズレしていますが、出てくる音は正常で [STEREO] ランプも点灯します。
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AM 受信
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手持ちの純正ではないループアンテナで良好に受信でき、感度も問題なさそうです。
リペア (その2):その他
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FM で -0.1MHz の周波数ズレがある
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FM 同調点検出用 [T2] の再調整で直りました。
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[OUTPUT] 端子のハンダクラック予防補修
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[OUTPUT] 端子 (RCA 端子) と基板とのハンダ付け部分は、経験上、かなりハンダクラックが多いです。
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このため、古いハンダを除去し、新しいハンダで予防補修しました。
再調整
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電源電圧チェッック (VP)
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以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| 電源基板 CN1-1pin |
-15V |
-13.3V |
〇 |
OP amp. |
| 電源基板 CN1-3pin |
+5.6V |
+5.56V |
〇 |
コントローラ |
| 電源基板 CN1-4pin |
+28V |
+28.0V |
〇 |
VT 電源 |
| 電源基板 CN1-6pin |
+15V |
+14.0V |
〇 |
チューナ、OP amp. |
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FM/AM 受信部の調整
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再調整結果
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FM 受信
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フロントエンドの調整で感度が少し上がりました。
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同調点検出が大きく調整ズレていました。
PLL 検波でやや調整ズレしていました。
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ステレオセパレーションと高調波歪率が大きく改善し、素晴らしい音質になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
65 |
63 |
dB |
| NARROW |
67 |
67 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0047 |
% |
| stereo |
0.0053 |
% |
| NARROW |
mono |
0.022 |
% |
| stereo |
0.022 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-84 |
-73 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
-0.06 |
dB |
| REC CAL |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
| -6.3 |
dB |
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AM 受信
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[純正ループアンテナ] の添付がなかったので、IF 調整だけ実施しました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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到着時は全く音が出ませんでしたが、本来の性能に蘇りました。
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FM 性能と音質は素晴らしく良いです。
高級チューナと比べても互角の性能です。
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デザイン
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高級感を目指しているのではなく、通信機に近いカチッとしたデザインです。
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[KT-1010] [KT-1010Ⅱ] の後継機で寸法は全く同じです。
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薄型デザインですが、チューナに必要な機能はフル装備です。
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電波が強力な FM 放送を高音質で聴くには [IF BAND : WIDE] [QUIETING CONTROL : NORMAL] に設定します。
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プリセットメモリのバックアップは 2200uF の電解コンデンサなので、電源コードを抜いた状態では1週間程度と思います。
電源コードのプラグを差し込んだ状態では、([POWER] スイッチが OFF でも) 常にこの電解コンデンサに給電されているので、プリセットメモリが消えることはありません。
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感度と音質
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高級チューナにも匹敵する高性能で、FM 放送を高音質に聴きたい期待に応えてくれます。
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感度はかなり高く申し分ありません。
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素性が良いので、
流石に良い音
です。
ハッキリ・クッキリの明瞭度の高い音です。
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上位機種の
KT-1100D
よりメンテナンス性が良く、構成や性能・音質がほぼ変わらず、お奨めチューナ
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亡き越谷在住のオーディオ評論家
長島鉄男
さんが絶賛したチューナというのがよくわかります。