KENWOOD KT-1100D (5号機) が到着
2024年1月28日、三重県いなべ市の K さんより
KENWOOD KT-1100D
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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中古で購入しましたが、受信はできているので壊れてはいないと思います。
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たまに受信が不安定になる時があります。
(電波状態が悪かったかもしれません。)
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点検で劣化判明したコンデンサ等があった場合は部品交換お願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [71K10566] で、電源コードの製造マーキングより [1986年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] は添付されていませんでした。
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元箱に入って送られてきたのですが、元箱も比較的良い状態です。
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フロントパネルの天板への折り返し部分の左右にアルマイトハゲがあります。
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フロントパネル正面に僅かなスレ (サビ?) がありますが、そう問題ない状態です。
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リアパネルは綺麗で端子類には輝きがあります。
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天板には大きなスレがあります。
底板はまあまあ綺麗です。
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電源 ON して動作チェック
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電源は入り、ディスプレイは正常表示しました。
ディスプレイには少し痩せがありますが、まだまだ使えます。
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[TUNING] ノブや操作ボタンは正常に反応します。
[REC CAL] ボタンでテスト音も出ます。
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FM 受信
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問題なく受信できて [STEREO] 表示も出ます。
音も問題ないです。
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オートチューニングで放送周波数の -0.1MHz で止まります。
周波数ズレしています。
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軽く現状の性能を測定してみました。
ステレオセパレーション性能が劣化しているようです。
| 項目 |
FM IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
25 |
25 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.015 |
% |
| stereo |
0.015 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-58 |
-61 |
dB |
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AM 受信
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手持ちの純正ではないループアンテナを接続してチェックしました。
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感度よく受信できます。
特に問題なさそうです。
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修理依頼者のいう「たまに受信が不安定になる時がある」は確認できませんでした。
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カバーを開けてチェック
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基板は綺麗で、目視でわかる部品劣化はないようです。
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プリセットメモリのバックアップ用電気二重層コンデンサ [C178] 18mF/5.5V はかなり古いタイプです。
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大きいのに 18mF しかありません。
もう交換時期です。
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電源部の大きな電解コンデンサ [C109] 2200uF/35V、[C110] 1000uF/35V も交換したほうがよいです。
リペア (その1):[電気二重層コンデンサ] [電解コンデンサ] の予防交換
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電気二重層コンデンサ交換
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電気二重層コンデンサでプリセットメモリの記憶をバックアップします。
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電気二重層コンデンサは経年劣化するので、最新の容量の大きいものと交換します。
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左の写真は交換前で、橙色の部品が [C178] 18mF/5.5V です。
かなり古いタイプです。
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右の写真は交換前で、青色の部品が 1F/5.5V です。
最新型で小さいのに容量がはるかに大きくなりました。

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電気二重層コンデンサは 18mF → 1F と56倍の容量になりました。
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取扱説明書によるとメモリバックアップは1週間と書かれています。
(元の 18mF の時です。)
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容量が56倍になったので、計算上は56週間 (1年間) バックアップできるはずですが ・・・
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実際には、電気二重層コンデンサの自己放電もあるので、数ヶ月でしょう。
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電源部の電解コンデンサ交換
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電源部の電解コンデンサは発熱物に近く、劣化しやすいです。
容量が大きく重要度の高い2個を予防交換しました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C109 |
2200uF/35V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
105℃クラスに交換 |
| C110 |
1000uF/35V (85℃) |
1000uF/35V (105℃) |
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左の写真は交換前で、黄色〇で囲んだ電解コンデンサ×2個を交換します。
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右の写真は交換後です。
105℃耐熱品にしたので信頼性も上がりました。

リペア (その2):ハンダクラックの予防補修
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ハンダクラックしやすい箇所
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左の写真はリアパネルにある [RCA 端子] です。
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ここはリアパネルと基板の2方向から常にストレスが掛かっているのでハンダクラックしやすいです。
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右の写真は電源部にある [放熱器が付けられたパワートランジスタ] です。
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ここは放熱器と基板の2方向から常にストレスが掛かっているのでハンダクラックしやすいです。

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予防補修
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基板の裏側で上記のハンダ付け部の古いハンダを除去してから新たに補修ハンダ付けしました。
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特に [RCA 端子] のハンダ付け部はハンダそのものがサビており、ハンダクラック間近でした。
リペア (その3):その他
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フロントパネルの天板への折り返し部分の左右にアルマイトハゲがある
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ハゲは直しようがないので、自動車用黒艶消しタッチペンで塗装して目立たなくなりました。
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たまに受信が不安定になる時がある ・・・ 修理依頼者より
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当方では確認できていないのですが、同調点調整が大きくズレていました。
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これを再調整で規定内にしたので直った可能性があります。
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部品交換前に実装されていた部品の記念写真
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左から [C178] [C109] [C110] です。

再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| Q40-E |
+15V |
+14.9V |
+14.6V |
〇 |
| Q42-E |
-14V |
-13.5V |
-13.1V |
〇 |
| IC14-OUT |
+5V |
+5.6V |
+5.69V |
〇 |
| Q46-E |
+28V |
+28V |
+28.6V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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大きな同調ズレがありましたが、基準値内に回復しました。
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フロントエンドでトラッキングズレがあり、調整で大きく感度が上がりました。
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PLL 検波で大きなズレがあり、再調整で高調波歪率が改善しました。
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調整前のステレオセパレーションは 25dB でしたが、以下の優秀値に調整できました。
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高調波歪率とステレオセパレーションの改善で、素晴らしい音質になりました。
| 項目 |
FM IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
63 |
59 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0040 |
% |
| stereo |
0.011 |
% |
| NARROW |
mono |
0.037 |
% |
| stereo |
0.15 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-80 |
-78 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
-0.06 |
dB |
| FM REC CAL 信号 |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
| -7.4 |
dB |
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、IF 調整だけ実施しました。
使ってみました
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今回のメンテナンスの感想
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到着時にはかなり調整ズレがありましたが、再調整で優秀な性能に蘇りました。
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音質も聴き違えるほど素晴らしい音になりました。
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FM の音質はシャッキとした高音域が特長
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ハッとするような素晴らしくクリアな音
です。
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ソースの持つ質感や雰囲気をうまく表現します。
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AM の音質も良い
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でも、このような高級チューナで AM 聴く人いないような ・・・