KENWOOD KT-3030 (6号機) が到着
2026年5月1日、埼玉県上尾市の K さんより
KENWOOD KT-3030
の修理依頼品が到着しました。
K さんの自家配送でした。
定価12万円
の高級 FM 専用チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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現状受信は出来ていますが、古いものなので再調整をお願いします。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [57K10351] で、電源コードの製造マーキングより [1985年製造品] とわかりました。
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全体的にはかなり綺麗です。
よくよく見ればごくごく小さいハゲや天板の汚れなどはあるのですが目立たないです。
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[TUNING] ノブの留めネジが緩んでおり、回しているとノブが外れました。
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リアパネルの RCA 端子には輝きが残っています。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、FL ディスプレイの所々にヤセがありますがはまだまだ使えます。
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プリセットは消えて初期状態になっていました。
電気二重層コンデンサが劣化しているかもしれません。
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操作はでき、周波数ズレはなく、[STEREO] 表示が出て問題なく受信できます。
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感度落ちしており、S メータのフルは7ドットですが、電源 ON 直後は6ドットしか振れません。
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[REC CAL] ボタン ON で正常にテスト音が出ます。
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大きな問題はないので、現状のオーディオ性能を測定してみました。
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30dB 以上あるので実用範囲ですが、[ステレオセパレーション] がかなり下がっています。
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[パイロット信号キャリアリーク] [高調波歪率] は問題ないです。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
Super Wide |
stereo |
33 |
38 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
Super Wide |
mono |
0.037 |
% |
| stereo |
0.039 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
Super Wide |
stereo |
-54 |
-61 |
dB |
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カバーを開けてチェック
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内部は綺麗で、基板には目視で明らかに劣化とわかる部品はないです。
リペア (その1):感度落ちしている
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原因
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経年変化でフロントエンドのトリマコンデンサが劣化しているためです。
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修理
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以下の交換部品リストのようにトリマコンデンサを全数交換します。
| 基板 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| チューナ基板 |
TC1 |
10pF トリマ |
10pF トリマ |
RF |
| TC2 |
10pF トリマ |
10pF トリマ |
| TC3 |
10pF トリマ |
10pF トリマ |
| TC4 |
10pF トリマ |
10pF トリマ |
| TC5 |
10pF トリマ |
10pF トリマ |
OSC Buffer |
| TC6 |
10pF トリマ |
10pF トリマ |
OSC |
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左の写真で黄〇で囲んだ部品が交換後のトリマコンデンサです。
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右の写真は、これまで実装されていた劣化したトリマコンデンサです。

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修理後の動作チェック
リペア (その2):電気二重層コンデンサが劣化しているかもしれない
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概要
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[電気二重層コンデンサ] は電源 OFF 時のプリセット情報をバックアップします。
到着時にメモリ内容が全て消えていました。
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長時間電源 OFF してメモリが消えたのか、[電気二重層コンデンサ] が劣化したのかわかりません。
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判断つなかないので、交換して安心して使用できるようにします。
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修理
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以下の交換部品リストのように電気二重層コンデンサを数交換します。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C163 |
0.022F/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
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左の写真で黄〇で囲んだ部品が交換後の電気二重層コンデンサです。
[ディスプレイ基板] の下なので交換しにくい場所です。
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右の写真は、これまで実装されていた劣化していると思われる電気二重層コンデンサです。

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修理後の動作チェック
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正常にプリセットができ、読み出し (コール) も正常であることを確認しました。
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電源コードをコンセントから抜いて、しばらくしてから再度電源コードを入れて、プリセットが消えていないことを確認しました。
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コメント
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電気二重層コンデンサはオリジナルの 0.022F → 1F と46倍の容量になりましたが・・・
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オリジナル状態 (0.022F) でのメモリバックアップ保証期間は1週間です。
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計算上は46倍の46週間メモリバックアアップできるはずですが、実際には自己放電もあるので数ヶ月でしょう。
リペア (その3):ハンダクラック対策
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右の写真はリアパネルにある RCA 端子の裏側です。
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長いリードが基板に直接ハンダ付けされています。
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このハンダ付け部分は [リアパネル] [基板] の2方向から常にストレスを受けるのでハンダクラックしやすいです。
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修理 (予防補修)
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[RCA 出力端子] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
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修理後の動作チェック
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RCA 端子を揺すっても音が途切れないことを確認しました。
リペア (その4):その他
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[TUNING] ノブが外れた
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[TUNING] ノブの留めネジを締め付けて直りました。
再調整
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電源電圧チェッック (VP)
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[電源基板] 修理後の実測値は以下のように良好になりました。
| 基板 |
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| チューナ基板 |
CN1-1pin |
-12V |
-12.0V |
〇 |
OP アンプ |
| CN1-2pin |
+12V |
+11.8V |
〇 |
チューナ全般 |
| CN1-3pin |
+15V |
+15.7V |
〇 |
MPX |
| CN1-5pin |
+5.6V |
+6.00V |
〇 |
MCU |
| CN1-7pin |
+54V |
+55.4V |
〇 |
VT 電源 (+B) |
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FM 受信部の調整
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調整結果
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フロントエンドのトリマコンデンサを全数交換したので、トラッキング調整をやり直しました。
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PLL 検波調整がややズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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以下のように、素晴らしい性能に蘇りました。
到着時より大きく性能アップしました。
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ステレオセパレーションは100倍良くなって音の解像度が大きく上がりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
Super Wide |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| Wide |
69 |
70 |
dB |
| Narrow |
64 |
64 |
dB |
| Super Narrow |
60 |
63 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
Super Wide |
mono |
0.0062 |
% |
| stereo |
0.0097 |
% |
| Wide |
mono |
0.0073 |
% |
| stereo |
0.014 |
% |
| Narrow |
mono |
0.017 |
% |
| stereo |
0.019 |
% |
| Super Narrow |
mono |
0.020 |
% |
| stereo |
0.023 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
Super Wide |
stereo |
-77 |
-79 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
Super Wide |
mono |
0 |
+0.09 |
dB |
| REC CAL |
Super Wide |
mono |
398 |
Hz |
| -6.7 |
dB |
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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到着時は性能がかなり落ちていましたが、再調整で素晴らしい性能に蘇りました。
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ステレオセパレーションや高調波歪率は最高性能クラスです。
当たりの個体です。
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性能が大幅アップしたので、音は聴き違えるほど良くなりました。
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やはり、このクラスの高級機はちゃんとメンテナンスしないと勿体ないです。
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感度と音質
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感度と妨害電波排除能力は素晴らしく良いです。
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良い音です。
修理後の試聴で音楽に聴き惚れてしまいました。
素晴らしい!
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やはり
定価12万円
だけのことはあります。
優れた機種です。