KENWOOD KT-6050 (2号機) が到着
2023年6月5日、千葉県船橋市の K さんより
KENWOOD KT-6050
の修理依頼品が到着しました。
最初の修理後の半年より後に新たな故障が発生し、2024年2月に追加修理しました。
この写真は修理後です。
到着時には [STEREO] 表示が出ませんでしたが、このように表示されるようになりました。
FL 表示器の右上にある赤い表示です。
程度&動作チェック
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依頼者のコメント
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同調レベルバーが右にずれている点が気になっています。
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音については今のところ気になることはないのですが、部品の経年劣化も考えられるので診ていただきたいです。
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外観
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製造シリアル番号は [50200337] で、電源コードの製造マーキングより [1994年製造品] と判明しました。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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フロントパネルは非常に綺麗です。
リアパネルも綺麗で RCA 端子に輝きがあります。
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天板には汚れはありますが、概ね綺麗です。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、操作ボタンの動作は正常です。
まだ見えますが FL 表示器はかなり痩せています。
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FM 受信
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-0.2MHz の周波数ズレがあります。
80MHz の放送が 78.8MHz で受信。
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[STEREO] 表示が点灯せず、音もモノラルです。
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AM 受信
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特に問題なく受信できました。
ニッポン放送 (1242kHz) ではちゃんと AM ステレオ受信できました。
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カバーを開けてチェック
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基板は綺麗で、目視でわかる劣化部品も見当たりません。
リペア (その1):-0.2MHz の周波数ズレがある
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原因
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修理
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[L35] を再調整して直りました。
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同時に [STEREO] 表示が点かない現象も直りました。
音の解像度がぐんと上がって良い音になりました。
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その後
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この修理で動作良好で使ってもらっていたのですが、半年より後に「電源が入らない」という新たな故障が発生しました。
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そこで2024年2月に [リペア (その2)] 以降の修理をしました。
リペア (その2):AC プラグをコンセントに差し込んでも [ON/STAND-BY] ランプが点灯しない
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原因
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右の写真で黄〇で囲んだ [IC30] 7805A のハンダクラックが原因です。
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触ってみるとグラグラになっていました。
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この IC は +5.6V のデジタル系電圧を作り出します。
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近くにコネクタが見えますが、このコネクタから電線を引き抜く時に [IC30] に触ってしまったのだと思います。
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修理
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[IC30] を補修ハンダ付けして [ON/STAND-BY] ランプが点灯するようになりました。
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ただし、[POWER] ボタンを押しても電源 ON しません。
別の不具合箇所がまだあるようです。
リペア (その3):[POWER] ボタンを押しても電源 ON しない
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原因
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右の写真は修理後ですが、ここに実装されていた [C311] 4.7uF/35V 電解コンデンサの容量抜けが原因でした。
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故障した電解コンデンサを取り外して容量測定したところ、2uF しかありませんでした。
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この [C311] で電源が健全であることを通知する電圧を作成します。
具体的には AC プラグをコンセントに差し込んだ直後に MCU に RESET をかけます。
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KT-6050 の [POWER] ボタンはソフトスイッチになっていて、[POWER] ボタンが押されたことを MCU が検出して、MCU が電源 ON します。
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すなわち、[C311] が劣化して MCU にリセットがかかり放しになっていたので、電源 ON できなかったのです。
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修理
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[C311] を以下のように交換して直りました。
| 基板 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| チューナ基板 |
C311 |
4.7uF/35V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
電解コンデンサ |
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容量に少し余裕を持たせ(大き過ぎるのも良くない)、耐熱性105℃品にして信頼性を上げました。
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[POWER] ボタンで電源 ON/OFF できるようになりました。
リペア (その4):[フロントパネル基板] が腐食している
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概要
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MCU は [フロントパネル基板] に実装されています。
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電源 ON できない現象を調べるために MCU の状態を確認した時に基板の腐食を発見しました。
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[リペア(その2)] [リペア(その3)] より深刻な不具合です。
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腐食状況と原因
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左の写真でパターンが黒くなっている部分が腐食部分です。
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この近くで液漏れするような部品は [C43] 0.047F/5.5V 電気二重層コンデンサしかありません。
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左の写真の一番下の茶色い部品の左右にツノのような長い足が見えますが、これは [C43] のリードです。
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おそらく [C43] の液漏れが原因と思いますが、右の写真の表示器の下という厄介な場所にあるのです。

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修理
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[C43] のハンダを除去し、長いリードを切り取り、表示器の隙間に細いドライバを入れてゴソゴソしたら外れました。
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左の写真のようにリードが錆びたようになっており、やはり液漏れしたのは [C43] のようです。
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[C43] は大容量の 1F と交換しました。
元の位置には実装できないので、右の写真の大きい黄〇のように取り付けました。
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右の写真で小さい黄〇は [C30] で、これも念のために交換しました。
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[リペア (その3)] で交換した [C311] の [フロントパネル基板] 側の受けになるコンデンサです。

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交換リストは以下です。
| 基板 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| フロントパネル基板 |
C30 |
0.47uF/50V (電解) |
1uF/50V (積セラ) |
積層セラミックコンデンサに交換 |
| C43 |
0.047F/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
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腐食部分の手直し
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腐食パターンを無水アルコールで洗浄しました。
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レジストが劣化していますが、パターン自体は大丈夫そうです。
長躯的に大丈夫かは何とも言えませんが、ともかく現状は大丈夫そうです。
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液漏れでハンダも腐食している部分があり、ここは古いハンダを除去し、新しいハンダで再ハンダ付けしました。
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基板洗浄したのですが、このままでは今度はハンダが錆びるのが心配です。
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そこで
HOZAN PC BOARD PROTECTOR
を使って基板のハンダ面を防錆コーティングしました。
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髪をシャンプーした後にトリートメントするようなものです。
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薄く吹き付けるだけで十分です。
厚くコーティングすると剥がれやすくなります。
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[保護膜が形成されて空気に触れるのを防ぐ]=[錆の発生を抑える] のです。
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絶縁性も体積抵抗が 0.8×1015Ω・cm あるので、高周波部分にも使えます。
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絶縁破壊電圧も 3.5kV (AC50Hz) あります。
コーティング後にハンダ付けも問題ありません。
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防錆コーティングするとハンダ面に艶が出てピカッと光り、まるで新品以上の綺麗な輝きになります。
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プラスチックに金属メッキされたノブやボタンなどは長い時間の間にサビてきますが、こういった素材にも有効です。
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プリセットメモリバックアップ時間について
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電気二重層コンデンサは AC プラグを抜いた時にプリセットメモリの記憶をバックアップ保持します。
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取扱説明書の7ページを見るとバックアップ時間は [3日間] と書いてあります。
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今回、0.047F → 1F と21倍の容量になったので 3日×21倍=63日 (2ヶ月) バックアップできるかもしれません。
リペア (その5):その他
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RCA 端子のハンダクラック予防補修
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リアパネルの RCA 端子のリードは基板にハンダ付けされてます。
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このハンダ付け部分は、常に [リアパネル] [基板] の2方向からストレスを受けており、ハンダクラックしやすいです。
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このハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
これで、またしばらくは大丈夫です。
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フロントパネル内側の清掃
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今回フロントパネルを分解したので、この時にフロントパネル内を清掃しました。
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周波数などを表示している部分の透明版の内側に煤状の汚れがあり、清掃で表示が少し明るくなりました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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以下のように良好でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| Q88-E |
+27V |
+28.4V |
〇 |
| Q92-E |
+15V |
+15.2V |
〇 |
| Q98-E |
-15V |
-14.2V |
〇 |
| IC30-OUT |
+5.6V |
+5.57V |
〇 |
| Q100-E |
-33.5V |
-33.1V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
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再調整にて、感度がかなり上がり、[STEREO] 表示が出るようになって音質が向上しました。
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ステレオセパレーションや高調波歪率などは以下のように良好です。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
60 |
64 |
dB |
| NARROW |
57 |
57 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.019 |
% |
| stereo |
0.019 |
% |
| NARROW |
mono |
0.023 |
% |
| stereo |
0.045 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-78 |
-80 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.27 |
dB |
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AM 受信部
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[純正 AM ループアンテナ] が添付されなかったので、やむを得ず (純正でない) 手持ちのループアンテナで調整しました。
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従って、[純正 AM ループアンテナ] では最高感度にならないと思います。
使ってみました
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デザイン
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フロンパネルはカーブが付けられたアルミ・ヘアラインです。
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FM アンテナ F 端子が2個あります。
アンテナを2系統から選択できます。
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残念ながら、ボタン操作は硬く、プラスチックで感触はイマイチです。
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プリセットメモリは39局分もあり、使い切れません。
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留守録用のプログラムメモリは3局分あります。
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[ACTIVE RECEPTION] 機能
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[RF ATT] [IF BAND] [MODE (AUTO/HI-BLEND/MONO)] を受信状態に合わせて、MCU が自動的に切り換えてくれます。
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面白い機能です。
MCU が状況判断するのに2秒くらい掛かります。
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受信性能と音質
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FM フロントエンドは5連バリコン相当で、高感度で妨害電波排除能力にも優れ、高性能です。
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KENWOOD らしいカチッとした音質で、良い音です。
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AM stereo はフヮ~としたステレオ感です。
音質は高音まで気持ち良く出ます。
良い音です。