KENWOOD KT-6050 (3号機) が到着
2024年4月19日、栃木県那須郡の N さんより
KENWOOD KT-6050
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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依頼者のコメント
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時間が経つと同調バーが右にずれ、音がモノラルになり STEREO ランプも消えます。
これの修理調整をお願いします。
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劣化部品があれば交換をお願いします。
プリセットメモリ用のコンデンサの交換もお願いします。
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ハンダクラックしている箇所があれば修理願います。
その他お気付きの点があれば、修理交換等お願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [50200047] で、電源コードの製造マーキングより [1994年製造品] と判明しました。
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[純正 AM ループアンテナ] [リモコン] が添付されていました。
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フロントパネルは非常に綺麗です。
リアパネルも綺麗で RCA 端子に輝きがあります。
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天板には汚れはありますが、概ね綺麗です。
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底板に [2005年5月27日] [2009年6月15日] の2枚の KENWOOD メンテンナンスシールが貼り付けられていました。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、操作ボタンの動作は正常です。
まだ見えますが FL 表示器はかなり痩せています。
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FM 受信
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一応ステレオ受信できますが、周波数ズレしかかっています。
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音が大きくなると T メータの右側の赤いバーと [STEREO] 表示が点滅します。
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感度落ちしているようで、[ACTIVE RECEPTION] モードでは当方の強電界レベルでも [NARROW] が選択されます。
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AM 受信
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特に問題なく感度よく受信できました。
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AM ステレオ放送は2024年3月末で終了しているので、ステレオ受信は確認できませんでした。
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カバーを開けてチェック
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基板には薄っすらとしたスス状の汚れはありますが綺麗なほうです。
目視でわかる劣化部品は見当たりません。
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なぜか? [天板] [フロントパネル] [リアパネル] の裏側に黒いネチャネチャした両面テープでアルミ箔、またはその剥がし跡があります。
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銅板を貼るのはたまに見かけますが、アルミ箔は初めてです。
何のお呪いだろう???
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表側から見えない部分なので、ここは放置です。
リペア (その1):FM で周波数ズレしかかっている
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原因
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修理
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[L35] を再調整して直りました。
音の解像度がぐんと上がって良い音になりました。
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同時に、[T メータの右側の赤いバー] [STEREO] 表示が点滅する現象も直りました。
リペア (その2):FM で感度落ちしている
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原因は2つありました
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1つは、VT 電圧を作る電源回路の電解コンデンサの容量抜けです。
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VT 電圧とはバリキャップに印加する電圧で、この電圧を可変することで放送に同調します。
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出力電圧に大きなリップルが乗り、VT 電圧が十分に上がり切れないのです。
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大きな 10V くらいのリップルが乗っているため、同調しても不安定です。
主に感度が揺らぎます。
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もう 1つは、FM フロントエンドのトラッキング調整ズレです。
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修理
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VT 電圧の元電源用の2個の電解コンデンサを交換して直りました。
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[C293] は液漏れしていたので、おそらく故障したのはこちらです。
この際なので2個ともバサッとも交換しました。
| 基板 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| チューナ基板 |
C290 |
330uF/50V (85℃) |
560uF/50V (105℃) |
VT 電圧の元電源用 |
| C293 |
330uF/50V (85℃) |
560uF/50V (105℃) |
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左の写真は [C290] [C293] 交換後で、右の写真は故障していた元の電解コンデンサです。

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トラッキング調整ズレは再調整して直りました。
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修理後の動作確認
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当方の強電界レベルで [ACTIVE RECEPTION] モードで [WIDE] が選択されるようになりました。
直りました!!!
リペア (その3):劣化しやすい部品を交換 ・・・ 修理依頼者の要求
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部品交換リスト
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KT-6050 で劣化しやすい部品は以下です。
これらを交換することになります。
| 基板 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| チューナ基板 |
C311 |
4.7uF/35V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
容量抜けすると電源 ON できなくなる |
| フロントパネル基板 |
C30 |
0.47uF/50V (電解) |
1uF/50V (積セラ) |
| C43 |
0.047F/5.5V |
1F/5.5V |
プリセットをバックアップする電気二重層コンデンサ |
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予防交換
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左の写真で黄〇で囲んだ部品は [C311] の交換後です。
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右の写真で小さい黄〇で囲んだ部品は [C30] の交換後で、大きい黄〇で囲んだ部品は [C43] の交換後です。
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[C43] は元々ディスプレイと基板の間にあり、非常に交換し辛いです。
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そこで、写真の位置に新たに取り付け穴を開けて実装しました。

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左の写真の赤〇で囲んだ部分には元の [C43] がハンダ付けされていました。
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どうやら [C43] が液漏れして黄〇で囲んだ部分のパターンを腐食させたようです。
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パターン自体は生きていたので、腐食がこれ以上進まないよう
PC ボードプロテクタ
でコーティングしました。
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右の写真は、左から順にこれまで基板に実装されていた古い [C311] [C30] [C43] です。

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プリセットメモリバックアップ時間について
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電気二重層コンデンサは AC プラグを抜いた時にプリセットメモリの記憶をバックアップ保持します。
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取扱説明書の7ページを見るとバックアップ時間は [3日間] と書いてあります。
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今回、0.047F → 1F と21倍の容量になったので 3日×21倍=63日 (2ヶ月) バックアップできるかもしれません。
リペア (その4):ハンダクラック予防補修 ・・・ 修理依頼者の要求
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リアパネル端子でのハンダクラック予防補修
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リアパネル端子でリードが基板に直接ハンダ付けされいるものはハンダクラックしやすいです。
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このハンダ付け部分は、常に [リアパネル] [基板] の2方向からストレスを受けており、ハンダクラックしやすいです。
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ハンダクラック予防補修が必要な端子
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左の写真は [SYSTEM CONTROL] [OUTPUT] 端子です。
右の写真は [AM ANTENNA] 端子です。
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これらのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
これで、またしばらくは大丈夫です。

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パワートランジスタのハンダクラック予防補修
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放熱器搭載のパワートランジスタは、常に [放熱器] [基板] の2方向からストレスを受けており、ハンダクラックしやすいです。
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放熱器のないパワートランジスタでも図体が大きいので意図せず触ったりして、ハンダクラックしやすいです。
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これらのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
これで、またしばらくは大丈夫です。

リペア (その5):再修理 (2025年8月20日)
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修理依頼者より
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S メータの振れがゼロです。
ANTENNA A/Bどちらでも同じです。
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FM アンテナが2系統あり、どちらに接続しても変わりません。
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2025年8月20日に届いたので早速チェック
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我が家の環境では FM はなんとか受信できましたが不安定です。
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S メータの振れが 0~1 くらいでフラフラします。
[STEREO] 表示も一緒に点いたり消えたりします。
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このような状態ですが、感度落ちではなさそうです。
出てくる音の S/N は良く正常です。
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AM も同じような状況で、受信はできますが S メータの振れが 0~1 くらいでフラフラします。
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調査と原因
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FM/AM とも [チューナ基板] で S メータ電圧を測定すると正常電圧が出ていました。
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[チューナ基板] の S メータ電圧は [フロントパネル基板] にあるマイクロコンピュータが取り込んで表示します。
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こうなると [フロントパネル基板] のほうに問題があることになります。
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最終的に下の回路で
×
マークを付けたところの基板パターンが断線しているのが原因とがわかりました。
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サラッと書いていますが、これを見つけるのに半日もかかりました。
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なぜならルーペで拡大して眺めても断線しているように見えないのです。
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テスタで導通チェックしてやっとわかりました。

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修理
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断線したパターンの代わりにジャンパ線を飛ばしてつなぎ合わせました。
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修理後の動作チェック
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FM/AM とも S メータが大きく振れ綺麗な音て受信できるようになりました。
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FM では [STEREO] 表示も出ます。
直りました!
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念のため性能測定して前回の調整値と相違ないことを確認しました。
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FM 同調点が少しズレていたので、ここは再調整で規定内に入りました。
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考察
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回路図の [IC1] はマイクロコンピュータです。
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断線した箇所は [IC1] の VDD (電源入力) で、この電圧 (+5V) がないと [IC1] は動作できないはずです。
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でも実際は、[IC1] はほぼ動作していました。
一見、S メータ周りだけが異常のような。
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[IC1] の 30pin [+5V] には給電されていたので、ここからの漏れ電圧で [IC1] が動作していたのだと思います。
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これを検証しようと [IC1] の
uPD78043 のデータシート
を参照しました。
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ところが、これには等価回路図がないので、[IC1] なぜ?ほぼ動いていたのかこれ以上追究できません。
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コメント
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本機は「リペア (その3)」のところで書いたように、過去に [C43] が液漏れして [フロントパネル基板] が腐食しているのです。
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この腐食が進行してパターンが断線に至ったというのが真の原因です。
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基板が一旦腐食すると、目視ではほとんど断線判別不能です。
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不具合が出た時に現象を確認してモグラ叩き的に修理するしかないです。
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ですから、残念ながらこの先、別の不具合が出る可能性が残ります。
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恒久的に直すなら [フロントパネル基板] を交換するしかないです。
ジャンクの KT-6050 を入手してそこから移植。
リペア (その6):その他
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一番大きな [チューナ基板] を外したら基板と底板の間から蛾のミイラが出てきた!!!
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かなり大きな蛾でした。
いったいどこから入ってきたのだろう?
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修理依頼者の趣味ではないと思うので、ミイラを除去処置しました。
お守り代わりだったのなら申し訳なし。
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フロントパネル内側の清掃
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特にディスプレイ用の透明板の内側に真っ黒なススがこびりついていました。
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ススを除去したらディスプレイがかなり見やすくなりました。
見やすくなっただけでヤセが直った訳ではありません。
念のため。
再調整
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電圧チェック (VP)
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以下のように良好でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| Q88-E |
+27V |
+27.3V |
〇 |
| Q92-E |
+15V |
+15.0V |
〇 |
| Q98-E |
-15V |
-14.1V |
〇 |
| IC30-OUT |
+5.6V |
+5.52V |
〇 |
| Q100-E |
-33.5V |
-30.3V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
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VT 元電源が故障していたこともあり、フロントエンドのトラッキング調整で感度が大きく上がりました。
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PLL 検波と DCC 調整にて、高調波歪率が大きく下がりました。
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セパレーション調整にて、ステレオセパレーションが大きく上がりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
62 |
70 |
dB |
| NARROW |
65 |
62 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0086 |
% |
| stereo |
0.022 |
% |
| NARROW |
mono |
0.014 |
% |
| stereo |
0.047 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-85 |
-86 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.26 |
dB |
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AM 受信部
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[純正 AM ループアンテナ] にて最高感度になるよう調整しました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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電解コンデンサの容量抜けで性能劣化していましたが、修理&再調整で元の性能に戻せて良かったです。
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音質も到着時よりビックリするほど良くなりました。
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KT-6050 はやはり性能も音質も良いです。
残念なのはコストダウンでディスプレイが劣化しやすいことです。
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添付された純正リモコン [RC-T0600] のリモコンコードを解析しました。
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取得したリモコンコードは
みんなのリモコン・データベース
に追加しました。
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これでリモコンを複製することが可能です。
KT-6050 はリモコンがないとフル操作できない機種です。
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ワイド FM 対応クリコン
でのワイド FM 受信も良好でした。
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KT-6050 はアンテナ端子が2つあるので、ワイド FM 受信に便利です。
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デザイン
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フロンパネルはカーブが付けられたアルミ・ヘアラインです。
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FM アンテナ F 端子が2個あります。
アンテナを2系統から選択できます。
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残念ながら、ボタン操作は硬く、プラスチックで感触はイマイチです。
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プリセットメモリは39局分もあり、使い切れません。
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留守録用のプログラムメモリは3局分あります。
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[ACTIVE RECEPTION] 機能
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[RF ATT] [IF BAND] [MODE (AUTO/HI-BLEND/MONO)] を受信状態に合わせて、MCU が自動的に切り換えてくれます。
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面白い機能ですが、MCU が状況判断するのに2秒くらい掛かります。
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受信性能と音質
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FM フロントエンドは5連バリコン相当で、高感度で妨害電波排除能力にも優れ、高性能です。
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KENWOOD らしいカチッとした音質で、良い音です。
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AM は高音まで気持ち良く出ます。
良い音です。