KENWOOD KT-7020 (4号機)

KENWOOD KT-7020 (4号機) が到着

2024年8月12日、岡山県玉野市の O さんから KENWOOD KT-7020 の修理依頼品が到着しました。

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外観＆動作チェック

1. 修理依頼者のコメント
   
   
   • 他のチューナーに比べて感度が悪いだけです。
     
     
   • おそらく部品交換は不要ですが、今後10年は安定して使いたいので調整お願いします。
     
     
2. 外観チェック
   
   
   • 製造シリアル番号は [00400304] で、電源コードの製造マーキングより [1989年製造品] とわかりました。
     
     
   • [純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
     
     
   • フロントパネルの右側で天板への折り返し部に目立つ2本の線キズがあります。 天板の同じ箇所にもビニコートのキズがあります。
     
     
   • 天板のフロント最前部の左右上側が変形しています。 天板を外して再取り付けする手順が悪くて変形したと思います。
     
     
   • 上記以外はそう問題はなく、全体として綺麗なほうです。
     
     
3. 電源 ON してチェック
   
   
   • [POWER] スイッチを ON にすると正常に電源が入り、ディスプレイは新品同様の輝度があります。 操作ボタン等はそれなりに反応します。
     
     
   • ディスプレイの透明板の内側で [DIRECT] [STREO] 表示あたりに、おそらくカビと思われる曇り (汚れ) があります。
     
     
   • プリセットが消えて初期値になっていました。 バックアップ用の電解コンデンサが劣化しているかもしれません。
     
     
   • FM 受信
     
     
     • [STEREO] 表示が出て、ほぼ問題なく受信できます。 周波数ズレは感じません。
       
       
     • RF SELECTOR = DIRECT で [S メータ] は4レベル (フルは5レベル) しか振れず、やや感度落ちしているようです。
       
       
       • 当方は 90dBf 程度の電波レベルがあるので、本来ならフルになるはずです。
         
         
     • [REC CAL] ボタンでテスト音が出て、ここも正常です。
       
       
     • 動作は特に問題なさそうなので、現状の性能値を計測してみました。
       
       
       • ステレオセパレーションはこの機種にしては落ち込んでいますが実用範囲です。 高調波歪率も同様です。
         
         

       項目	IF BAND	stereo/mono	L	R	単位
       ステレオセパレーション (1kHz)	WIDE	stereo	38	37	dB
       高調波歪率 (1kHz)	WIDE	mono	0.040		%
       		stereo	0.040		%
       パイロット信号キャリアリーク	WIDE	stereo	-61	-65	dB

       
       
   • AM 受信
     
     
     • [純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、手持ちの純正とは違うループアンテナでチェックしました。
       
       
     • 手持ちのループアンテナと KT-7020 の相性がたまたま良いのか、感度良く受信できました。 特に問題なさそうです。
       
       
4. カバーを開けてチェック
   
   
   • 内部は綺麗で、目視で劣化とわかる部品は見当たりません。
     
     

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リペア：ディスプレイの透明板の内側で [DIRECT] [STREO] 表示あたりに汚れがある

1. 概要
   
   
   • 修理依頼者に外観等の手直しはしなくてよいか問い合わせたところ、気にしないので不要とのことでした。 再調整だけでよいとのこと。
     
     
   • 電源電圧を測定するには [ディスプレイ基板] を持ち上げる必要があります。 この時に FL 管を見ると、ここにゴミが付いていました。
     
     
   • このため、今回はこのゴミ除去だけすることにしました。
     
     
2. 修理
   
   
   • ゴミはカビだと思っていたので、通常の無水アルコールで簡単に取れると思ったのですが全然取れません。
     
     
   • なんと！瞬間接着剤 でした。 なぜ？こんな所に瞬間接着剤のモレ跡があるのだろう？？？ 想像を超えています。
     
     
   • 無水アルコールでは取れないのでアセトンを使って溶かして綺麗に直りました。
     
     

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再調整

1. 電圧チェック (VP)
   
   
   • 実測値は以下のように良好でした。
     
     

     VP	標準電圧	実測電圧	判定	備考
     J15	+14.5V	+14.2V	〇	Q55-E	[POWER] スイッチ OFF で 0V になる
     J256	-12.9V	-12.7V	〇	Q56-E
     J16	+27.8V	+28.3V	〇	Q58-E
     J135	+4.9V	+5.05V	〇	Q60-E
     J157	-16.7V	-16.6V	〇	Q61-E
     J159	+5.6V	+5.64V	〇	IC23-OUT	[POWER] スイッチ OFF でも AC プラグが コンセントにささっていると常に電圧が出ている

     
     
2. FM/AM 受信部の調整
   
   
   • KT-7020 (1号機) に記載の手順で再調整しました。
     
     
3. 調整結果
   
   
   • FM 受信部
     
     
     • 少し同調点ズレがありました。 再調整で規定内に入りました。
       
       
     • FM フロントエンドのトラッキング調整ズレがありました。 再調整で感度が上がりました。
       
       
     • PLL 検波が大きく調整ズレしていました。 再調整で規定内に入りました。
       
       
     • 再調整にて、ステレオセパレーションや高調波歪率などが大きく改善し、素晴らしく良い音になりました。
       
       

     項目	IF BAND	stereo/mono	L	R	単位
     ステレオセパレーション (1kHz)	WIDE	stereo	70	70	dB
     	NARROW		28	27	dB
     高調波歪率 (1kHz)	WIDE	mono	0.025		%
     		stereo	0.027		%
     	NARROW	mono	0.19		%
     		stereo	0.19		%
     パイロット信号キャリアリーク	WIDE	stereo	-82	-76	dB
     オーディオ出力レベル偏差	WIDE	mono	0	0	dB
     REC CAL	WIDE	mono	375.0		Hz
     			-9.1		dB

     
     
   • AM 受信部
     
     
     • [純正 AM ループアンテナ] が添付されなかったので、IF 調整だけ実施しました。
       
       

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使ってみました

1. 修理＆再調整が終わって
   
   
   • この個体には外観にやや問題があるものの動作的にはそう問題がなかったので、再調整だけで新品時の性能に戻りました。
     
     
   • 再調整でステレオセパレーションが大幅に上がったので、解像度の良い音が出るようになりました。
     
     
   • 2028年で AM 放送がほぼ終了 しますが、移行したワイド FM を KT-7020 で聴くには 周波数コンバータ を製作すれば可能です。
     
     
2. デザイン
   
   
   • フロントパネルがヘアラインアルミ材なので質感があります。
     
     
   • [TUNING] ノブもアルミ材で質感があります。
     
     
   • 天板など、鉄板の厚みが薄く剛性不足です。 弱そうな筐体です。 この上に他の機器を乗せないほうがよいです。
     
     
   • 操作ボタン構造がコストダウンされており、ボタン操作が重くてぎこちないです。
     
     
   • FM アンテナ入力は F 端子になっていて、妨害電波が混入しにくいです。
     
     
   • シグナル強度表示のバーが3本あって、アナログ式の中点メーターのシミュレーションをやっています。
     
     
   • プリセットメモリは A1〜A0 + B1〜B0 の合計20局あります。 これだけあれば、まず十分です。
     
     
3. 感度や音質
   
   
   • 音は間違いなく良いです。 受信性能も良いです。 お奨めできる機種です。
     
     
   • D-3300T, KT-1100D, KT-V990 系統を継承する正統派のチューナ で、受信性能や音質もほとんど変わらないです。
     
     
   • しかも、中古価格は D-3300T や KT-1100D よりかなり安いのでお買い得です。
     
     

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