KENWOOD L-01T (5号機) が到着
2024年2月9日、長崎県諫早市の T さんから
KENWOOD L-01T
の修理依頼品が到着しました。
定価16万円
の高級 FM 専用チューナで
パルスカウント検波
です。
この写真は照明 LED 化後です。
程度&動作チェック
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依頼者のコメント
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受信はしているものの感度は低下しているように感じます。
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ダイヤルは引っかかりや、時折空回りすることもあります。
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照明は微妙に不安定な感じがあり、LED への変更したいです。
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外観
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製造シリアル番号は [10320021] で、電源コードの製造マーキングより [1980年製造品] とわかりました。
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木製天板のエッジにポツポツと塗装ハゲはありますが、全体的には綺麗な状態です。
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木製天板を左右から留めるネジ×4本ともサビています。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、[S メータ] [T メータ] が振れて、[STEREO] ランプが点灯して問題なく受信できます。
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修理依頼者のいう感度低下は感じません。
再調整で少し感度が上がるかもしれませんが ・・・
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電源 ON 直後に [MUTING] [WIDE] [NARROW] [DIRECT] [NORMAL] ランプが点灯しませんでした。
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[TUNING] ノブを回していくと、指針が 80~85MHz 辺りで動かなくなります。
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電源 ON してしばらく時間が経つと動くようになります。
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おそらく、ダイヤル照明に使っている散光板が長年のランプの熱に晒されて変形しているのだと思います。
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カバーを開けてチェック
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内部の基板には少し煤状のゴミが付着しています。
目視で劣化とわかる部品はなさそうです。
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ダイヤル照明に使っている散光板が湾曲しています。
これが指針に当たって動きが悪くなっているのです。
リペア (その1):照明用フィラメントランプの完全 LED 化
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LED 化前の [照明基板]
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写真の一番下にあるダイヤル照明用散光板が大きく湾曲しています。
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フィラメントランプの熱に長時間晒されて変形したのです。
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ここまで湾曲してしまうと手直しできません。
LED 化して散光板を取り除くしかないです。

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リプレースに使う LED
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左の写真のテープ LED は [ダイヤルスケール] [S メータ] [T メータ] [WORDS] 照明に使います。
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1m あたり高輝度 LED 240個の凄まじい製品です。
発色はウォームホワイト (電球色) です。
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5mm 砲弾型 LED はセレクタとステレオ表示に使います。
[白色、10000mcd、照射角60度] です。
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3mm 砲弾型 LED は指針に使います。
[青色、8400mcd、照射角30度] です。

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LED 化した表示回路と LED 化した照明基板
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LED 化した表示回路です。
全て DC 駆動に変更しました。

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LED 化した [照明基板] です。

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テープ LED にすると [ダイヤルスケール] [S メータ] [T メータ] [WORDS] 用散光板は不要になるので除去しました。
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[セレクタ] [STEREO] 用の散光板はそのまま使いました。
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[WORDS] 照明の周りにある四角い枠は自作の遮光板です。
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ボール紙で簡単工作し、黒ラッカー塗装してからボンドで貼り付けました。
サイズは 110(W)×13(H)×10(D) mm です。
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テープ LED を貼り付ける位置は重要です。
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LED の中心を基板下から、[ダイヤルスケール] 用 9mm、[S/T メータ] 用 32mm、[WORDS] 用 24mm にします。
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L-01T はテープ LED 照明化すると幸せになれます!
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LED 化後はムラのない非常にスッキリとした素晴らしい表示になりました。
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L-01T が発売された時代には [青色 LED] [高輝度 LED] [高輝度テープ LED] がなかったのです。
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技術進化が LED 化を可能にしました。
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フィラメントランプの時は 8V/0.15A のランプを23個使っていたので、照明だけで実に 28W 電力消費していました。
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LED 化後の電力消費は 5W くらいです。
発熱はほぼないです。
SDGs に貢献できます。
電気代も安くなります。
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長い目で見ると、今回の費用は安くなった電気代で回収できます。

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LED 化により以下の不具合も同時に直りました
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[TUNING] ノブを回していくと、指針が 80~85MHz 辺りで動かなくなる。
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[MUTING] [WIDE] [NARROW] [DIRECT] [NORMAL] ランプが点灯しない。
リペア (その2):[電源基板] の電解コンデンサ交換
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交換の方針
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[電源基板] の電解コンデンサのうち、容量が大きいものだけ交換します。
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これらは放熱器の熱に晒されて劣化しやすいのです。
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交換リスト
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以下のように、[耐熱性アップ] [容量アップ] [耐電圧アップ] を図りました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C3 |
2200uF/25V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
耐熱性アップ 耐電圧アップ |
| C15 |
2200uF/25V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
| C18 |
2200uF/16V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
| C4 |
1000uF/25V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
耐熱性アップ 容量アップ 耐電圧アップ |
| C5 |
1000uF/25V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
| C8 |
1000uF/25V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
| C10 |
1000uF/25V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
| C13 |
1000uF/25V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
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交換前後の写真
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下の写真は電解コンデンサ交換前です。
黄〇で囲んだ電解コンデンサが交換対象です。

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下の写真は電解コンデンサ交換後です。
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交換前よりグレードの高い電解コンデンサを使ったのにサイズは小さくなりました。
技術の進化です。
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風通しが良くなったので信頼性も上がります。

リペア (その3):バリコン軸の接触不良回復
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トラッキング調整した時に気が付きました
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RF トラッキング調整では電波レベルが 30dB 程度の低いレベルで行います。
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この時に低い周波数で [S メータ] がユラユラ動いて調整できないのです。
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原因
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バリコンの故障です。
故障と言ってもバリコン軸の接触不良なので回復可能です。
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バリコンを観察すると、右の写真のようにバリコン軸に緑青サビが出ています。
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緑青サビは絶縁物なのでバリコン軸が接触不良になるのです。
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対策
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バリコン軸接触不良回復作業を実施しました。
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
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[1]~[2] を何度も何度も繰り返します。
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仕上げに、軸受けに
CRC 5-56
を塗布して防錆処置します。
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8連バリコンなので、結構手間がかかりましたが、以上で
直りました!!!
リペア (その4):ハンダクラックの予防補修
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L-01T でハンダクラックの発生しやすい箇所は RCA 端子
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リアパネルにある [RCA 端子] リードのハンダ付け部にはリアパネルと基板の2方向から常にストレスを受けているので、ハンダクラックしやすいです。
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右の写真で黄〇で囲んだハンダ付けです。
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予防補修
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黄〇で囲んだハンダを一旦除去し、新しいハンダで付け直しました。
リペア (その5):その他
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ダイヤル照明板の清掃
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照明 LED 化で [照明基板] を外したついでに、ダイヤル照明板を清掃しました。
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フロントエンドカバーの清掃
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フロントエンドカバーが埃などでかなり汚れていました。
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フロントエンドカバーを外し中性洗剤で水洗いして綺麗になりました。
再調整
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電源電圧チェッック (VP)
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実測値は以下のように正常でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| 電源基板 端子13 |
+14V |
+14.0V |
〇 |
Front End, IF |
| 電源基板 端子15 |
+16V |
+16.5V |
〇 |
MPX |
| 電源基板 端子17 |
-16V |
-16.5V |
〇 |
MPX |
| 電源基板 端子19 |
+12V |
+12.8V |
〇 |
1'st OSC |
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FM 受信部の調整
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調整結果
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やはり、修理依頼者のいう [感度低下] はありませんでした。
再調整で少し感度が上がりましたが ・・・
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L-01T は通常 [RF SELECTOR] = NORMAL で使うのが正しいです。
電波が強過ぎる時にだけ DIRECT にします。
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DIRECT ではフロントエンドの RF アンプをバイパスして感度を低下させて、強過ぎる電波に対応します。
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修理依頼者は DIRECT で使っていて感度が低下していると言っているのではないか???
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MPX の SUB レベルが下がっていましたが、再調整で正常値になりました。
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再調整でステレオセパレーションが上がり、音の解像度が上がりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
47 |
48 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.036 |
% |
| stereo |
0.044 |
% |
| NARROW |
mono |
0.054 |
% |
| stereo |
0.054 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-58 |
-61 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
-0.02 |
dB |
使ってみました
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修理を終わっての感想
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本機は状態が良かったので、再調整はスムーズでした。
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やはり、L-01T は照明 LED 化が正解です。
すごく綺麗な照明になります。
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再調整で L-01T 本来のゾクッとするリアルな音質に蘇ってよかったです。
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デザイン
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デザインはとても良いですが、ともかく大きいです。
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電源を入れるとダイヤル面などが照明でパッと浮き上がります。
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今回、照明を完全 LED 化したのでスッキリとした色合いになりました。
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チューニングノブから手を離すと、同調サーボロックがかかります。
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アンテナ端子に F 端子があるのが、ありがたいです。
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リアパネルにある [CONTINUOUS DIAL LIGHT] スイッチ
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[ON] で、ダイヤルスケールとメータ照明が常時点灯します。
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[OFF] で、ダイヤルスケールとメータ照明がチューニングノブに手を触れた時だけ点灯します。
面白い仕掛けです。
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感度や音質
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感度は良好で、高級機らしい安定な受信ができます。
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音はパルスカウント検波らしいスッキリ感があります。
解像度感のある澄みきった音に聞き惚れます。
低音はよく出ています。
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NHK FM でクラシック音楽を聴いていると、静寂の中からキラキラ輝く素晴らしい音が飛び出すのを感じます。
S/N が良いです。
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人の声にもリアルさを感じます。
目の前で話していると錯覚しそうです。
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素晴らしいチューナです。
ただし、半世紀物ですから新たに入手した場合は多くのリペアが必要になると思います。