Pioneer F-120 (4号機) が到着
2024年2月1日、千葉市の M さんより
Pioneer F-120
の修理依頼品が到着しました。
パルスカウント検波
の PLL シンセサイザ FM/AM チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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FM で同調ズレしています。
FM 東京 80.0MHz が 79.9MHz で受信します。
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プリセットボタンの不良 (クッション劣化) があります。
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愛着があり修理をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号シールが剥がれて無くなっているので、番号がわかりません。
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電源コードの製造マーキングより [1983年製造品] とわかりました。
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[純正ではない AM ループアンテナ] の添付がありました。
このアンテナで最高感度になるよう調整します。
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フロントパネルの天板への折り返し部分に少しキズがあり、天板にはサビがあります。
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リアパネルにサビが出ています。
端子類には輝きが残っています。
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電源 ON してチェック
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電源は入り、操作ボタンは正しく反応します。
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修理依頼者のいう「プリセットボタンの不良 (クッション劣化)」は、良いボタンと劣化したボタンが入り混じっている感じです。
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周波数表示の輝度がかなり下がっています。
この表示器は F-120 専用品です。
さて、どうするか。
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FM 受信
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-0.1MHz の周波数ズレがあり、[正しい周波数]-[0.1MHz] に周波数を設定しないと受信できません。
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[STEREO] ランプは点灯しますが、これも -0.1MHz ズレた周波数でしか点灯しません。
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AM 受信
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添付された [純正ではない AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
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問題なく受信できます。
感度も良いです。
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カバーを開けてチェック
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ほぼ密閉構造のためか内部は綺麗です。
目視でわかる劣化部品は見当たりません。
リペア (その1):周波数表示の輝度がかなり下がっている
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検討
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周波数表示器は F-120 専用品となっており、交換部品が入手できません。
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やむを得ず、手持ちの F-120 から表示器を外して本機に移植することにします。
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修理
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表示器を交換したので、当たり前ですが直りました。
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この表示器はいつもある訳ではないので、修理依頼者はラッキーと思います。
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下の写真は、これまで実装されていた劣化した表示器です。
けっこう複雑な部品構成です。

リペア (その2):[STATION CALL] ボタンのクッションが劣化している
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現状チェック
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根本的には F-120 の構造設計不良と思います。
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現状は下の写真のように修理されていました。
オリジナル状態ではありませんでした。

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修理
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まずは現状のクッションを除去し、タクトスイッチとレバーを無水アルコールで洗浄しました。
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右の写真の [大里 575-069 衝撃吸収クッション] (直径10mm、10個入り) をレバー側に貼り付けました。
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[筐体側のレバー]~[タクトスイッチ] の間隔にバラツキがあるようで、少しボタンごとに感触が変わります。
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更に薄いクッションを重ね貼りして調整しましたが、完全には同じ感触にはなりませんでした。
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実用的に使える程度には直りました。
リペア (その3):FM フロントエンドのトリマコンデンサ故障
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状況
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再調整していて気が付きました。
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FM フロントエンドにある [TC1] [TC2] [TC3] トリマコンデンサが3個とも調整容量が不安定です。
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トリマコンデンサが3個とも故障しています。
これでは再調整できません。
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修理
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左の写真は交換前で、黄〇で囲んだ部品がトリマコンデンサです。
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右の写真はトリマコンデンサ交換後です。
10pF トリマコンデンサです。

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交換後はスムーズに調整できるようになり、感度が大きく上がりました。
直りました!
リペア (その4):プリセトメモリバックアップ用電解コンデンサ交換 ・・・ 予防保守
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概要
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F-120 においては [C513] 2200uF/6.3V 電解コンデンサでプリセットメモリ内容のバックアップをしています。
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AC プラグをコンセントに挿入した状態では、[POWER] スイッチが OFF でもメモリには給電されていてメモリ内容は消えません。
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AC プラグをコンセントから抜くと [C513] でメモリ内容をバックアップします。
たぶん、1週間くらいバックアップできます。
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なぜか?この [C513] の故障が多いです。
本機は製造から40年以上経っているので交換したほうがよいです。
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修理 ・・・ 予防交換
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以下のリストのように予防交換しました。
耐熱105℃品にして信頼性を上げました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C513 |
2200uF/6.3V (85℃) |
2200uF/6.3V (105℃) |
電解コンデンサ |
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左の写真は [C513] 交換前で、右の写真は交換後です。

リペア (その5):ハンダクラック補修
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概要
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F-120 にはハンダクラックしやすい箇所があります。
リアパネルの端子と基板とのハンダ付け部分です。
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このハンダ付け部分には [リアパネル] と [基板] の2方向から常にストレスがかかっているので、経年変化でクラックするのです。
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ハンダクラックの有無をチェック
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左の写真で黄〇の箇所は [OUTPUT] 端子のハンダ付け部分です。
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リードのハンダ付けにピンと同心円のようなものが見えますが、これがハンダクラックです。
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右の写真で黄枠の箇所はアンテナ端子のハンダ付け部分です。
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この写真ではわかり辛いですが、ここにもハンダクラックがありました。

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修理
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劣化した古いハンダを除去し、新しいハンダで補修ハンダ付けして直りました。
リペア (その6):修理後しばらくは動作していたのですが、別の不具合が出て2024年3月14日に再修理しました
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修理依頼者より
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使用中(電源を入れた直後のケースもありますが)周波数表示などが消え、音が出なくなります。
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見た目は電源が落ちたような感じですが、通電しているようでありうっすらとメモリボタンのランプが点灯しています。
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また録音レベル調整用のテスト信号は音がでます。
モノラル状態にするとラジオの音声が聞こえることがあります。
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しばらくすると元に戻り通常通り使用できるようになります。
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事象は必ず再現するわけではなく1日通して使用できることもあります。
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到着後に不具合確認
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到着して初めて電源 ON したところ、周波数表示が点灯せず音が出ません ・・・ 現象再現!
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しばらく放置しておいたら急に周波数表示が出て正常になってしまいました。
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この後、電源 ON/OFF などしてみたのですが、現象再現せず正常です。
困った!!!
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現象よりは電源部に問題がありそうな感じ
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この推定に基づき、以下の対策をします。
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電源周りにハンダクラックがないかチェックし、あれば対策します。
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電源部の電解コンデンサが間欠レアショートしているかもしれないので、全数交換します。
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ハンダクラックのチェックと修理
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基板の裏側で電源部のパターンをルーペで拡大して、ハンダクラックがないかじっくりチェックしました。
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[放熱器が付いたパワートランジスタ] [ジャンパー線] にハンダクラック気味の箇所が見つかりました。
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たぶん、これが原因の可能性が高いです。
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パワートランジスタは熱が発生するので熱膨張でハンダ付け部分を劣化させます。
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見つかったハンダクラック気味の箇所を補修ハンダ付けして修理しました。
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電源部の電解コンデンサを全数交換
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先のハンダクラックが原因だったと思うのですが、電解コンデンサの間欠故障も否定できません。
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左の写真は交換後ですが、黄〇で囲んだ電解コンデンサ×9個を全数交換しました。
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右の写真は交換前に実装されていた電解コンデンサです。
液漏れは見られませんでした。

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交換リストは以下で、全て耐熱105℃クラス品を使用して信頼性を上げました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C401 |
47uF/50V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
電解コンデンサ |
| C403 |
47uF/50V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
| C404 |
1000uF/35V (85℃) |
1000uF/35V (105℃) |
| C405 |
470uF/35V (85℃) |
470uF/50V (105℃) |
| C406 |
220uF/50V (85℃) |
560uF/50V (105℃) |
| C409 |
47uF/50V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
| C410 |
220uF/50V (85℃) |
560uF/50V (105℃) |
| C411 |
22uF/25V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
| C412 |
2200uF/16V (85℃) |
2200uF/25V (105℃) |
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修理後に動作チェック
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電源 ON/OFF を何度も繰り返して、常に正常動作することを確認しました。
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今回は推定に基づく修理なので、当たっていない可能性は残ります。
使ってもらって様子を見ていただきたいと思います。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| Q403-C (放熱板) |
+13.7V |
+13.4V |
〇 |
| Q405-C (放熱板) |
+5.5V |
+5.38V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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-0.1MHz の周波数ズレは再調整で直り、到着時に歪っぽかった音も F-120 本来の良い音に蘇りました。
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ステレオセパレーションや高調波歪率などは以下のように素晴らしい性能になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
43 |
40 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0042 |
% |
| stereo |
0.0042 |
% |
| NARROW |
mono |
0.26 |
% |
| stereo |
0.26 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-58 |
-58 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.08 |
dB |
| CAL TONE |
WIDE |
mono |
333.8 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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F-120 は点検用裏ブタが無いなどメンテナンス性が悪いので部品交換に多大な時間がかかりました。
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修理後の再調整で F-120 本来の素晴らしい音質が蘇り、ホッとしました。
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デザイン
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FM を良い音で聴くためのシンプルデザインです。
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操作系もいたってシンプルです。
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表示は周波数を含め全て LED でシンプルな表示です。
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FM アンテナ入力端子が F 端子なので、妨害電波が混入しないです。
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FM の感度と音質
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スウェーデン国立放送局のモニタ機
に選定された実力があります。
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感度はかなり良いです。
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ステレオセパレーションが高く、スッキリとしているが比較的柔らかいパイオニアトーンです。
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AM の感度と音質