Pioneer F-717 (4号機) をゲット!
2025年5月17日、東京都調布市の T さんより
Pioneer F-717
を研究用に寄贈いただきました。
2026年3月3日にメンテナンスを完了しました。
本機は2023年8月に修理して返却しています。
今回、理由は不明ですが寄贈となりました。
前回の修理と今回の手直し (タクトスイッチ全数交換など) をミックスした記事に改訂しました。
調整はやり直しました。
程度&動作チェック
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寄贈者のコメント
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時々、音声が数秒間途切れ、それが数回続きます。
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アンテナ接続は CATV に同軸ケーブルでつないでいます。
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他のチュー ナでは症状が出ないので、本個体の問題ではないかと推測して います。
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外観
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製造シリアル番号は [HH1000610] で、電源コードの製造マーキングより [1987年製造品] と判明しました。
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[純正 AM ループアンテナ] は添付されていませんでした。
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汚れはありますが致命的なヘコミやキズはないです。
全体的には並の中古状態です。
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天板にベタツキがあります。
ビニコート鉄板のビニールの経年劣化です。
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電源 ON してチェック
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電源は良好に入り、ディスプレイの輝度は新品同様に明るいです。
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各ボタン操作でなかなか効かなかったりチャタリングがあります。
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[REC LEVEL CHECK] ボタン ON で正常にテスト音が出ます。
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オーディオ出力 RCA 端子に手を触れると音が極小になりました。
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AM 放送と REC LEVEL 音は全く聴こえません。
FM ステレオ放送だけが僅かに音が出ています。
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RCA 端子を揺すると正常に音が出ました。
おそらくオーディオ出力端子のハンダクラックでしょう。
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たぶん、GND 側の接触不良で L-R 音になったのでしょう。
だからモノラル音の AM と REC LEVEL 音が聞こえない。
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FM 受信
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受信して音は出ますが、S メータが全く振れず、STEREO 表示も出ません。
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発生頻度が非常に低いのですが、音が途切れることがあります。
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] が付属していなかったので、右の写真の筆者が標準にしているループアンテナを接続してチェックしました。
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SONY ST-SA5ES などの大型ループアンテナです。
中古市場によく出ています。
横幅 28cm、高さ 12cm くらいのサイズです。
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ローカル放送では [S メータ] がフルに振れ良好に受信できました。
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このアンテナとの相性は良いです。
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カバーを開けてチェック
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内部は綺麗です。
基板に目視で明らかに劣化とわかる部品はありません。
リペア (その1):FM 受信で音は出るが、S メータが全く振れず、STEREO 表示も出ない
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調査と原因
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一番怪しい FM 同調点検出の TP24~TP26 間電圧を測定してみたら 0.7V でした。
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この電圧は調整目標値が 0±10mV です。
原因は FM 同調点電圧異常です。
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修理
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右の写真で赤〇で囲んだ [T103] を調整して FM 同調点電圧を 0V に調整し直しました。
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修理後の動作チェック
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[STEREO] 表示が出て、綺麗なステレオ音が出ることを確認しました。
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S メータは振れるようになったのですが 70% くらいで、感度落ちしているようです。
リペア (その2):FM 受信で感度落ちしている
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調査と原因
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FM フロントエンドにある3個ある RF トリマコンデンサを回してみましたが [S メータ] の振れに変化がありません。
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原因は RF トリマコンデンサ全部の劣化です。
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修理
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左の写真はトリマコンデンサ交換前で、赤〇で囲んだ部品です。
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右の写真はトリマコンデンサ交換後で、3個とも交換しました。
容量は全て 10pF です。

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修理後の動作チェック
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RF トラッキング調整したら感度が蘇って、S メータがフルに振れるようになりました。
リペア (その3):オーディオ出力 RCA 端子に手を触れると音が極小になった
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調査と原因
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右の写真は L チャンネル RCA 端子の GND 側リードのハンダ付け部分です。
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ハンダがひび割れています。
これがハンダクラックです。
R チャンネル RCA 端子も同様でした。

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原因はこのハンダクラックに間違いありません。
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修理
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RCA 端子を補修ハンダ付けしました。
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RCA 端子と同様にリアパネルにある [FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] も補修ハンダ付けしました。
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更に F-717 でハンダクラックを発生しやすいパワートランジスタのリードも補修ハンダ付けしました。
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上の右の写真で赤□で囲んだ放熱器と一緒に実装されているパワートランジスタです。
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修理後の動作チェック
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FM 受信中に [RCA 端子] [FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] を揺すっても異常が発生しないことを確認しました。
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これでまた10年以上安心して使えます。
リペア (その4):非常に低い発生頻度で音が途切れる
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調査と原因
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まず、再現性が乏しく30分~数時間で1回再現するかどうかの頻度です。
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MUTING = ON/OFF 設定に関わらず音が途切れます。
1秒くらい無音になって自然回復する感じです。
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MUTING = OFF の時に発生しても無音になり雑音は聞こえません。
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音が途切れると同時に [STEREO] 表示も消えます。
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以上の現象から考えると、電源ミューティングが誤動作した可能性が高いですが、あくまで推定です。
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電源ミューティングの目的は電源 ON/OFF 時のポップノイズ抑止です。
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この目的のため、MUTING = OFF 時でもミューティングがかかります。
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下の回路図は電源ミューティング周りです。
黄□で囲んだ部分が電源ミューティング回路です。
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INT2 には電源 ON であれば常時 20ms 周期のパルスが出ます。
電源 OFF の時はパルスは出なくなります。
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INT2 は MCU (マイクロコンピュータ) の INT2 端子に接続され、20ms ごとに MCU に割り込みがかかります。
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電源ミューティングを ON/OFF しているのは MCU です。
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20ms ごとに割り込みが入っている時は、MCU は 電源ミューティングを OFF (解除) します。
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割り込みが入らなくなると、MCU は電源ミューティングを ON (実行) します。

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修理 (推定修理)
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電源ミューティングが誤動作していると推定したので、一番怪しいのは電解コンデンサです。
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以下の交換リストのように電解コンデンサを交換しました。
上の回路図で青〇で囲んだ電解コンデンサです。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C416 |
10uF/50V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
電解コンデンサ |
| C421 |
22uF/25V (85℃) |
22uF/50V (105℃) |
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左の写真は交換後で、青〇で囲んだ電解コンデンサです。
左が [C421] で右が [C416] です。
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右の写真は、基板から取り外した劣化していると思われる電解コンデンサです。

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修理後の動作チェック
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今回の修理は推定で行いました。
しかも、そもそも発生頻度がかなり低かったのです。
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ですから数日使ってみて「音が途切れる」現象が出るかどうか監視するしかなかったです。
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丸2日間使って音が途切れる現象は再現しませんでした。
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修理前には少なくとも半日に1~2回は発生していました。
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以上のように改善が確認できたので修理完了と結論しました。
リペア (その5):タクトスイッチ全数交換
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概要
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本機の各ボタンの反応は良くなく、一発で反応しないことや、チャタリングも多いです。
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我慢の限界を超える反応なので、各ボタンに対応するタクトスイッチを全数交換します。
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修理
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[フロントパネル基板] から [チューナ基板] に挿入されているフラットケーブルを外すと、フロントパネルが分離できます。
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黒色のフラットケーブルを外す時は、[チューナ基板] のコネクタロックを上に持ち上げてロック解除します。
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フラットケーブルをコネクタに挿入する場合は、先にコネクタロックを押し込んでロック状態にします。

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下の写真はどちらもタクトスイッチ交換後です。
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適合タクトスイッチは6mm 角で高さ 5mm で 4P タイプです。
これが26個もあります。

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数が多いので、一般のソルダスポイトを使って作業すると膨大な時間がかかります。
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[タクトスイッチ専用ハンダ吸引機] を使ったので、やや時間がかかる程度で交換できました。
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下の写真は基板から取り外した劣化したタクトスイッチです。

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修理後の動作チェック
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26個のボタンの全てが一発で正確に反応することを確認しました。
リペア (その6):その他
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RCA 端子にクスミがある
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ピカール液
でマイクロ研磨して輝きが少し回復しました。
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完全にはピカピカになりませんでしたが使用には問題ない程度になりました。
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天板にベタツキがある
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無水アルコールと中性クリーナで拭き取り、ベタツキは解消しました。
再調整
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電源電圧チェッック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| TP17 |
+13V |
+13.7V |
〇 |
チューナ全般 |
| CN501-1pin |
+5.6V |
+5.64V |
〇 |
MCU |
| CN501-4pin |
-8V |
-8.30V |
〇 |
FL |
| R401 左側 |
+27V |
+28.2V |
〇 |
VT 用電圧 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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全体的にあちこちズレまくっていました。
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FM 受信
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トリマコンデンサ交換と再調整で感度が大きく改善しました。
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再調整前はステレオセパレーションが 18dB 程度しかありませんでしたが、下のように大きく改善しました。
| 項目 |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
stereo |
55 |
70 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
mono |
0.010 |
% |
| stereo |
0.030 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
stereo |
-54 |
-50 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
mono |
0 |
-0.13 |
dB |
| REC LEVEL CHECK 信号 |
mono |
328 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
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AM 受信
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元々何の問題もなかったし、[純正 ループアンンテナ] の添付がなかったので、IF 調整だけしました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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修理コストの関係で前回実施しなかった「タクトスイッチ全数交換」などを実施し、納得の一台になりました。
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外観も並みの中古程度で悪くはないです。
十分実用になります。
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部品交換と再調整で新品時の性能に甦り、
良い音になりました!!!
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デザイン
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やはり、Pioneer のシンセサイザチューナの最高峰は F-717 です。
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F-717 に続く、F-757 や F-777 ではありません。
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[ノンスペクトラム IF] と [PLL 検波] で高性能です。
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プリセットメモリは24局分あります。
十分です。
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FM アンテナ用 F 端子が2個あって、アンテナを2系統から選択できます。
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感度と音質
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FM の感度は良く、繊細な良い音です。
特にボーカルで素晴らしい声を聴かせてくれます。
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AM の感度は良く、S/N も良いです。
音は AM としては普通レベルです。