SONY ST-515 (2号機) をゲット!
2023年5月5日、子供の日のお祝いにメリカリで購入した
SONY ST-515
のジャンク品が到着しました。
送料税込1,800円でした。
この写真はメルカリからの転載です。
ST-515 の存在は
ST-515 (1号機)
に触れるまで知らかったのですが、技術的にとっても面白いと思いました。
ST-515 の情報がないか電網検索していたら、ジャンク品がたまたまメリカリで販売されていたので即ゲット!したのです。
FM-AM PROGRAM TUNER で、バリコン式なのに
デジタル周波数表示
があって
PLL クリスタルロック方式
です。
FM/AM とも5局ずつプリセットでき、
手動で指針をプリセット位置まで動かす
という風変わりな機種です。
程度&動作チェック
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販売者のコメント
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外観は使用に伴うキズや落としきれないヨゴレ等はありますが比較的綺麗な状態です。
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通電は確認出来ましたが、以下の理由でジャンク品での出品です
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FM は物理目盛りとデジタル表示がズレていてツマミを回してもデジタルが殆ど動きません。
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AM は目盛りとデジタル表示はほぼ合致してます。
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FM/AM とも受信出来ていないのか、音出し確認出来ませんでした。
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外観
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製造シリアル番号は [207168] で、電源コードの製造マーキングより [1978年製造品] と判明しました。
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キズやスレはほぼ無いのですが、スイッチ先端などに軽いサビが出ています。
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[天板] [リアパネル] [底板] にキズは無く綺麗です。
全体的には綺麗な逸品です。
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フロントパネルに [希望の局にピタリ同調 クリスタルロック・シンセサイザー] というシールも貼りついたままです。
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電源 ON してチェック
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問題なく電源が入り、ランプ切れはないです。
デジタル周波数表示の輝度は新品同様です。
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FM は同調ノブを回してもデジタル周波数表示が 76MHz 付近のまま変化せず、全く受信できません。
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AM は正常に受信できました。
デジタル周波数表示も正常です。
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[PROGRAM SENSOR] スイッチを ON すると常時 FM バンドのままとなり、故障しています。
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カバーを開けてチェック
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FM OSC BUFFER の [CT102] トリマコンデンサが壊れてバラバラになっています。
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基板は綺麗でいじられた形跡がなく、こういう意味では
ST-515 (1号機)
より状態が良いです。
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バリコン機構のプーリー軸が外れかかっています。
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右の写真で黄〇で囲んだ部分の隙間がないのが正しいです。
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あと 5mm ほど隙間が大きくなると、プーリーごと軸が外れ、小さいギアも外れてバラバラになります。
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手で押すと元に戻るのですが、しばらく使っていると同様になります。
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今まではカバーの側面にプーリーが当たって脱落が防止できていました。
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隙間ができるとフロントエンドのトラッキングがズレます。
対策が必要です。
リペア (その1):FM 受信不可のトラブルシューティング
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FM OSC BUFFER の [CT102] トリマコンデンサを交換しました
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元のトリマコンデンサは右の写真のようにバラバラになり、可動部と固定部を連結するピンクのプラスチックが割れていました。
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これで直ればラッキーの思いで、10pF のセラミックトリマコンデンサと交換しました。
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右の写真は交換後で、黄〇で囲んだ部品です。
新たに取付穴を開けて交換したので、まるで最初からこうだったみたいでしょ。
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残念ながら、これでは直りませんでした。

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オシロスコープで波形チェックして不具合箇所を探しました
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右の回路図の PLL 基準周波数 OSC が発振していませんでした。
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[XT502] 17.585MHz は海外バンド用で、日本バンドでは 18.100MHz です。
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[Q508] を [2SC1923-Y] に交換して発振するようになりました。
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動作確認してみると ・・・
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同調ノブを回すと 76〜85MHz の間は指針にデジタル周波数表示が追随しますが、85MHz 以上になるとデジタル周波数表示は 85MHz のままです。
少しは直ったようです。
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同調ノブを 76MHz から高い周波数にしながら VT 電圧を測定してみると、85MHz で 11V になり、これ以上の周波数でも 11V のままです。
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調整しても VT 電圧が 90MHz で規定の 22V まで上がりません。
まだ故障箇所があるようです。
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VT 電圧が規定の 22V まで上がらない
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原因は下の回路図にある VT 電圧出力用の DC アンプの故障でした。
[Q505] [Q506] を交換して直りました。
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この回路にはタンタルコンデンサが使われていたので、これらも交換しました。
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タンタルコンデンサはある日突然、短絡故障するので危ないのです。
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積層セラミックコンデンサのほうが ESR が低く、高周波特性が良いです。
また無極性なので安心感あります。
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部品交換リストは以下です。
[C512] [C513] の容量が変わっていますが、この回路では大丈夫でしょう。
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
Q505 |
2SC705 |
2SC733 |
トランジスタ |
Q506 |
2SC705 |
2SC733 |
C511 |
0.68uF/35V |
0.68uF/50V |
タンタルコンデンサ ↓ 積層セラミックコンデンサ |
C512 |
6.8uF/35V |
10uF/50V |
C513 |
47uF/6.3V |
10uF/25V |
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動作チェックして完全に直ったことを確認しました
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FM 放送が 76〜90MHz のいずれでも指針とデジタル周波数表示が一致して感度良く受信できました。
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完全に直りました!
FM 放送が受信できるチューナはイイで〜す!!!
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下の写真は部品交換後で、黄〇で囲んだ [黒:トランジスタ] [青:積層セラミックコンデンサ] です。

リペア (その2):照明 LED 化
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ST-515 (1号機)
と全く同じ方法で LED 化しましたが、LED 化後に以下の不具合出ました
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受信状態で [POWER] スイッチを OFF すると、一瞬ザッザッという雑音が聞こえます。
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FM/AM とも同じです。
LED 化前ではこの雑音はなかったことを確認しています。
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[PROGRAM SENSOR] スイッチ ON で AM 受信して放送が受信できると [LOCKED] ランプが薄っすら点灯します。
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LED 化前はどうだったか確認していないのですが、AM 受信では PLL ロックしないので消灯が正解と思います。
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1号機でも同様でしたが、この時は ST-515 に触れるのが初めてで、こんなものかなと思っていました。
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一番怪しそうなのは [LOCKED] ランプの LED 化です
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なぜなら、[LOCKED] ランプの出力で POWER OFF MUTING を掛けているのです。
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電源 OFF で +15V が急激に下がることを利用しています。
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フィラメントランプの時は 100mA 程度流れてインピーダンスが低いので、[Q406] コレクタ電圧がすぐに 0V になります。
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LED では数 mA しか流れずインピーダンスが高いので、[Q406] コレクタ電圧が 0V になるのに時間がかかるのです。
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これを1号機では [Q406] コレクタ〜GND 間に [1kΩ] の抵抗を入れて補っていました。
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1kΩではやや高過ぎたようで、実験の結果、[760Ω] 以下で雑音が出なくなったので、余裕をみて [470Ω] としました。
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下の右側は改訂 [LOCKED] ランプ LED 化です。
左側はフィラメントランプだった時です。
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同時に、[PROGRAM SENSOR] スイッチ ON で AM 受信時に [LOCKED] ランプが薄っすら点灯する現象も直りました。
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1号機と違うのは [470Ω] だけです。
1号機の修理依頼者さま、送っていただければ無償で抵抗交換します。

リペア (その3):PROGRAM SENSOR モード故障
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ST-515 (1号機)
と全く同じ方法で修理しました。
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同じ修理を1号機と2号機で2回やってみて、完全に直ることが確認できました。
リペア (その4):バリコン機構のプーリー軸が外れかかっている
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ST-515 (1号機)
と全く同じ方法で対策しました。
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製造時にはプーリー軸は [何か] で外れないように接合されていたはずですが、その [何か] がわかりません。
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KENWOOD L-01T
のようにプーリーの左右から糸掛けがされている機種では、[何か] の接合が外れても脱落しないです。
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本機のようにプーリー糸掛けがエンド端になる機種では、[何か] の接合が外れると脱落します。
リペア (その5):スイッチ先端などに軽いサビが出ている
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フロントパネルを分解して清掃しました
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スイッチトップやダイヤルスケールの飾りパーツのサビを削り取って、ほぼ綺麗になりました。
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フロントパネル内も清掃してクリーンになりました。
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分解して判明したのですが ・・・
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ダイヤル透明板はアクリル板ではなく、5mm 厚のガラス板でした。
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フロントパネルのアルミ板の厚みは 1.7mm もありました。
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手抜きはなく、かなりマトモな作りです。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように正常でした
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
Q801-E |
31V |
31.1V |
〇 |
Q803-E |
15V |
15.6V |
〇 |
Q804-E |
4.9V |
4.93V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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入手時は FM 受信できなかったので調整前後の比較はできませんが、以下のように良好な性能が出ました。
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ステレオセパレーションは良いです。
どこにもリークフィルタらしきものが入っていないので、キャリアリークは悪いです。
項目 |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
stereo |
54 |
52 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
mono |
0.21 |
% |
stereo |
0.21 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
stereo |
-27 |
-28 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
mono |
0 |
+0.05 |
dB |
使ってみました
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セットコンポのチューナにしては良好なデザイン
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精悍なデザインで、クラスを凌駕するルックスです。
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完全 LED 化したので、ルックスは高級機以上になったかも。
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指針がピタリ合うのは、実に気持ちが良い!!!
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しかもデジタル周波数表示もあります。
ここは高級機以上です。
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PROGRAM SENSOR 機能で、FM/AM とも5局ずつプリセットマーカをセットできます。
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FM アンテナ入力は [300Ω] [75Ω] 端子があります。
F 端子がないのが残念です。
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AM 受信はアンテナ端子につないだワイヤアンテナで受信します。
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オーディオ出力は RCA 端子付きケーブルが直結とプアな作りです。
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受信性能&音質
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FM は4連バリコン相当なので、感度や妨害波排除能力は優れています。
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FM はクォードラチュア検波特有のソフトな音質ですが、十分心地良い音が出ます。
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AM は (越谷では) 30cm 程度のワイヤアンテナでも十分受信でき、音も良いほうと思います。
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バリコン式チューナの風貌で、実は PLL シンセサイザチューナという、このギミックさがたまらなく良いです。