SONY ST-S333ES (3号機) をゲット!
2023年5月31日、茨城県結城市の Y さんより
SONY ST-S333ES
を研究用に寄贈いただきました。
忙しくて1年以上放置状態でしたが、2024年9月にメンテナンスしました。
程度&動作チェック
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寄贈者のコメント
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動作します。
私の耳では問題ありません。
寄贈します。
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外観
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製造シリアル番号は [201276] で、電源コードの製造マーキングより [1984年製造品] とわかりました。
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[純正 AM バーアンテナ] は付属していませんでした。
この純正バーアンテナ (Wave Catcher) の手持ちはあります。
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全体的に汚れがあります。
汚れだけでヘコミやワレと言った致命的なものがないのが救いです。
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フロントパネルに汚れがあり、左側で天板への折り返し部分に線キズがあります。
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リアパネルにある RCA 端子に少しサビありますが、使用には問題ないです。
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天板の塗装の一部が盛り上がっている箇所があり、再塗装しないと直らないです。
ラックに入れれば見えない部分なのでアキラメか。
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底板は綺麗なほうです。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、各ボタンも正常に反応します。
FL 表示器に劣化はなく新品同様な輝きです。
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局名ラベルがデタラメです。
例えば [FM HOKKAIDO] [FM SENDAI] [FM OSAKA] など全国各地の放送局になっています。
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FM 受信
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問題なく受信でき、[STEREO] 表示も出ます。
オートチューニングで正しい放送周波数を検出できます。
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AM 受信
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音が全く出ません。
周波数に関係なく S メータはフルに振れていてオカシイです。
同調している感じがしません。
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プリセットしても電源 OFF にすると消えてしまいます。
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カバーを開けてチェック
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基板には綿埃が溜まっています。
これは清掃でマシになると思います。
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基板自体は綺麗で、目視で劣化とわかる部品は見当たりません。
良い状態です。
リペア (その1):AM が全く受信できない
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調査
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VT 電圧は受信周波数に合わせて変化するので、OSC と RF 系は問題なさそうです。
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LA1245 周辺の電解コンデンサが短絡故障していないかチェックしたところ、全て問題なかったです。
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ふと、AM 受信 IC [IC301] LA1245 の背中を触ってみると、熱くて触り続けていられないです。
これはオカシイです。
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こうなると、ほぼ [LA1245] 故障確定です。
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修理
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基板から [LA1245] を取り外し、IC ソケット化してから新しい [LA1245] と交換しました。
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
IC301 |
LA1245 |
LA1245 |
IC ソケット化してから交換 |
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左の写真は [LA1245] を IC ソケット化して交換した後で、右の写真はこれまで基板に実装されていた故障した [LA1245] です。
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修理後の動作確認
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AM 放送を受信すると S メータが適切に振れ音が出ました。
直りました!!!
リペア (その2):プリセットしても電源 OFF にすると消えてしまう
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原因
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ST-S333ES は CR2025 コインバッテリでメモリバックアップしますが、このバッテリが寿命になったためです。
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修理
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[寿命のあるコインバッテリでのバックアップ] を [電気二重層コンデンサを使ったバックアップ] に改造します。
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[BT501] を [CR2025]→[電気二重層コンデンサ 1F/5.5V] に変更し、180Ω を追加します。
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電気二重層コンデンサ化の改造実施
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左の写真は改造後の電気二重層コンデンサ 1F/5.5V です。
180Ωの抵抗は基板裏に取り付けました。
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右の写真は改造前に実装されていた故障した [CR2025] です。
出力電圧を測ると 0V で、完全に昇天していました。
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改造後の動作確認
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一晩電源 OFF にしてから次の日の朝に電源 ON してプリセットメモリが消えていないことを確認しました。
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限られた修理時間では長期的確認はできないので、1ヶ月程度バックアップできることを祈ります。
リペア (その3):ハンダクラック予防対策
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概要
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ST-S333ES の作りを眺めたところ、ハンダクラックしやすそうな箇所は [電源 IC] [アースバー] と思われました。
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左の写真は電源 IC [IC701] LA5665 で、ハンダ付け部に基板と放熱器からストレスがかかります。
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右の写真の端にある銅板が [アースバー] で、基板と銅版の熱膨張率が異なるのでハンダ付け部にストレスがかかります。
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修理 (予防対策)
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[IC701] [アースバー] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
リペア (その4):局名ラベルが関西圏のものになっている
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概要
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関西以外で使う場合、放送局名と合わない局名ラベルは邪魔なだけです。
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別に局名なんか表示しなくても、選択されているプリセットボタンがわかるだけで十分です。
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局名ラベルを単なるバー表示にする
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左の写真の上はメーカ製の局名ラベルで、これを下のラベルに交換します。
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新しいラベルは百均のセリアで購入した [半透明フロストタイプ・クラフトプラバン] を加工したものです。
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このプラバンは透明ではなく障子紙のような模様が入った半透明板です。
ハサミで加工できます。
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このプラバンの元サイズは B5 なので好きなだけラベルを作れます。
文字や絵も書き込めます。
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右の写真は自作の局名ラベルを取り付けてプリセット選択した様子です。
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写真のように単に細長いバー表示としました。
これで十分と思います。
リペア (その5):その他
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基板上に少しゴミが溜まっている
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エアブロアと刷毛を使って清掃して綺麗になりました。
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フロントパネル内外の清掃
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天板の清掃
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天板には何やら溶けて固まったような塗装ムラがあって、これは一旦塗装を落として再塗装しないと直りません。
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リンレイ NEW プロインパクト中性
で清掃だけしました。
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ラックに入れれば見えない部分なので、そう問題はないのでは。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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電源部の電解コンデンサの一部を交換したので、実測値は以下のように良好になりました。
VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW76 (IC701-7pin) |
+15V |
+15.5V |
+15.8V |
〇 |
アナログ系 |
JW78 (IC701-5pin) |
+5V |
+5.5V |
+5.66V |
〇 |
デジタル系 |
JW73 (Q701-E) |
+30V |
+32V |
+30.5V |
〇 |
VT 電源 |
JW83 (D705-A) |
-30V |
-31V |
-30.4V |
〇 |
FL |
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FM/AM 受信部の調整
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再調整結果
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FM 受信
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ステレオセパレーションが落ち込んでいましたが、再調整で以下のような素晴らしい性能に蘇りました。
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この結果、解像度の高い良音になりました。
再調整前後で全然違う音になりました。
項目 |
DISTANT |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
OFF |
stereo |
70 |
70 |
dB |
ON |
45 |
45 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
OFF |
mono |
0.020 |
% |
stereo |
0.087 |
% |
ON |
mono |
0.022 |
% |
stereo |
0.092 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
OFF |
stereo |
-75 |
-71 |
dB |
オーディオ出力偏差 (1kHz) |
OFF |
mono |
0 |
-0.10 |
dB |
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AM 受信
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[LA1245] を交換したので全て再調整し直しました。
2028年で AM 放送がほぼ消滅するのですが・・・
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純正バーアンテナ (Wave Catcher) で最高感度になるように再調整しました。
使ってみました
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デザイン
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輝かしい ST-S333ES の礎になった記念すべきモデル
です。
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ES シリーズらしい高級感ある素晴らしいデザインです。
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フロントパネルは分厚い黒ヘアラインアルミで質感があります。
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プリセットボタンはアルミ材で重厚感があります。
豪華です。
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FM アンテナ入力は F 端子で、妨害電波の混入をシッカリ防止できます。
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プリセットメモリは FM/AM ランダムに10局分です。
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[DISTANT] ボタン
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通常は [DISTANT] = OFF で使います。
近接局からの妨害 (雑音) が入る場合に ON すると改善することがあります。
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FM 受信時は、PLL 検波のループ時定数を切り換えて検波帯域を狭くします。
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AM 受信時は、高域周波数特性を減衰します。
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FM/AM 受信いずれも雑音軽減と音質低下のトレードオフになるので、できれば使わないほうが良いです。
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感度と音質
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FM 受信
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感度は良く、
一聴して判る高音質
です。
S/N が良く細かい音がよく聴けます。
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解像度感とスッキリ感のある音質です。
少し、低域が軽くて高域が強いです。
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AM 受信
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純正の外付けアンテナはループアンテナではなく、バーアンテナ構造の
Wave Catcher
です。
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磁界型のアンテナのため、周辺雑音を拾いにくく、S/N 良く受信できます。
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[Wave Catcher] の手持品があったので、これで確認しました。
感度は良いです。