SONY ST-S333ESA (13号機) が到着
2023年10月24日、山梨県木南アルプス市の T さんより
SONY ST-S333ESA
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
ヤフオクで落札した SONY ST-S333ESA の調子が悪く修理をお願いします。
-
本体を揺すると左右のスピーカ出力が乱れるので貴殿の HP の情報を見て IFT251 の調整を試みました。
-
ですが上手くできずに、いたずらに調整して分からなくなっている状態です。
-
現在は一応聞くことは出来ていますが、本来の性能は発揮していないと思います。
-
外観
-
製造シリアル番号は [201092] で、電源コードの製造マーキングより [1991年製造品] と判明しました。
-
[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
[サイドウッド] [天板を側面から留めるネジ×4本] が欠品しています。
-
C リングパネル内のボタン名表示パネルが外れて浮いていました。
-
フロントパネルの天板への折り返し左側にキズがあります。
これ以外は [フロントパネル] [リアパネル] [底板] 綺麗です。
-
リアパネルの端子類には輝きが残っており、良好です。
-
電源 ON にてチェック
-
電源は問題なく入りました。
各ボタン操作は良好です。
ディスプレイの輝度は新品同様に明るいです。
-
[RCA 出力端子] を揺すると音が途切れます。
ハンダクラックしています。
-
FM 受信
-
[STEREO] ランプが点灯し問題なく受信できます。
S メータの振れからみると感度低下していそうです。
-
時報の音にやや歪感があります。
[AUTO TUNING] [MUTING] 動作は正常です。
-
AM 受信
-
純正ではない SONY 製ループアンテナを接続してチェックしました。
-
特に問題なく受信できます。
感度も良好です。
-
カバーを開けてチェック
-
内部は綺麗で、基板も綺麗です。
目視でわかる劣化部品は無いようにみえます。
-
再調整作業すると(あれば)部品の劣化しているのがわかるかもしれません。
リペア (その1):全体的にハンダクラックが多数ありそう
-
全体のハンダクラックの状況を観察
-
[RCA 出力端子] を揺すると音が途切れるのはハンダクラックです。
-
このため、全体のハンダクラックの状況を観察してみました。
-
左の写真はオーディオ出力端子の R チャンネルで、見事にハンンダクラックしています。
L チャンネルも同様でした。
-
右の写真は FM アンテナ [A] 端子で、見事にハンンダクラックしています。
[B] 端子も同様でした。

-
左の写真のように基板上に細長い銅板が何枚も走っていますが、これがアースバーです。
電源ラインにも使っていますがアースバーと呼ぶ。
-
アースバーの裏側を観察すると、右の写真のようにあちこちで見事にハンンダクラックしています。

-
結局、本機は
ハンダクラックだらけでガタガタ
とわかりました。
-
修理
-
リアパネルにある [FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] [RCA 出力端子] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
-
8枚ある全ての [アースバー] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
-
補修ハンダ付けは、古いハンダを吸引して除去し、新しいハンダを付けるのが正しいやり方です。
-
補修後、[RCA 出力端子] を揺すっても音が途切れなくなり、FM 感度も少し上がりました。
見事! 直りました!!!
リペア (その2):C リングパネル内のボタン名表示パネルが外れている
-
原因
-
パネル裏側の粘着面の粘着力が弱くなっているからです。
-
修理
-
粘着力回復は無理なので G17 ボンドを少量塗布して貼り付け、
直りました!!!
再調整
-
電源電圧チェック (VP)
-
実測値は以下のように良好でした。
VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+30.3V |
〇 |
PLL |
JW89 |
+15V |
+14.6V |
〇 |
AUDIO |
JW145 |
-17V |
-17.7V |
〇 |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.4V |
〇 |
DIGITAL |
JW220 |
+5.6V |
+5.75V |
〇 |
DIGITAL |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
再調整中に劣化を感じた箇所はなく、全て規定内に収まりました。
-
FM 受信部
-
再調整で下のような優秀な性能になりました。
到着時の音に歪感があったのも直りました。
-
特に IF BAND = WIDE 時のステレオセパレーションと高調波歪率が素晴らしいです。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
69 |
dB |
NARROW |
36 |
35 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0056 |
% |
stereo |
0.014 |
% |
NARROW |
mono |
0.18 |
% |
stereo |
0.18 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-72 |
-73 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.25 |
dB |
CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
468.8 |
Hz |
-6.2 |
dB |
-
AM 受信部
-
元々動作良好だったのと [純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので IF 調整だけしました。
使ってみました
-
今回の修理の感想
-
ハンダクラックが散見される機種ですが、本機は特に酷かったです。
全て直したので安心して使えます。
-
ハンダクラックがあった以外は劣化部品もなく、性能的には当たりの個体でした。
-
全体的にゴールド基調のデザイン
-
フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
-
FM 受信
-
感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
-
解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
-
AM 受信
-
感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。