SONY ST-S333ESA (14号機) が到着
2023年12月14日、千葉県船橋市の O さんより
SONY ST-S333ESA
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
ステレオ表示ランプが点滅後消え、以後どの FM 局をじ受信してもモノラルになっています。
-
外観
-
製造シリアル番号は [201800] で、電源コードの製造マーキングより [1992年製造品] と判明しました。
-
[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
あちこちキズやスレはあるもののパッと見は綺麗です。
-
[サイドウッド] はなく、[天板を側面から留めるネジ×4本] が非純正ネジです。
-
リアパネルの端子類には輝きが残っており、問題ありません。
-
電源 ON にてチェック
-
電源は問題なく入りました。
各ボタン操作は問題なく、ディスプレイの輝度は新品同様に明るいです。
-
プリセットは全部消えて初期状態になっていました。
-
プリセットメモリバックアップ用の電気二重層コンデンサが劣化している可能性があります。
-
FM 受信
-
S メータは正常に振れますが、ピークは放送周波数から -0.1MHz になっており周波数ズレしています。
-
受信できますが最初 [STEREO] 表示が出ませんでした。
-
数時間 ON したままにしておいたら [STEREO] 表示が点滅し始めました。
-
修理依頼者のいう現象の再現です。
いずれにしろ故障しています。
-
AM 受信
-
[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので [ST-SA5ES 純正 AM アンテナ] を接続してチェックしました。
-
特に問題なく受信できます。
感度も良好です。
-
カバーを開けてチェック
-
なぜか?天板を留める部分のネジ穴部分にかなりのサビが出ています。
-
右の写真は天板前の右の部分です。
天板後の左にも同じくサビが出ています。
-
その他の部分にはサビはないのでたぶん大丈夫だとは思いますが ・・・
-
使用環境があまりよくないかも???
-
全体的に薄く綿埃が絨毯のように堆積しています。
-
目視でわかる劣化部品は無いようにみえます。
リペア (その1):[STEREO] 表示が出なかったり点滅したりする
-
調査
-
同調点ズレが原因である可能性もあるので、これを調整してみましたが、現象は変わりませんでした。
-
右の回路図はステレオ復調の MPX 回路の一部分です。
ステレオ復調は IC の [CXA1064] が行います。
-
[CXA1064] の 10pin は入力で、ステレオ復調の必要がない時に 2.5V 以上の電圧を入れると、ステレオ復調を停止します。
この結果、[STEREO] 表示が消灯します。
-
ST-S333ESA における、ステレオ復調の必要がない時とは以下です。
-
AM 放送を受信している時 ・・・ [AM +B] 信号が +13V になります
-
FM 受信中であるが、同調が完了していない時 ・・・ [AUTO STOP] 信号が +4V になります
-
すなわち、FM 受信中に [CXA1064] の 10pin が 0V でないと [STEREO] 表示が出ません。
-
不具合現象が出て [STEREO] 表示が点滅している時に、これらの電圧を測ってみました。
-
思った通り、[CXA1064] の 10pin が 0~4V 辺りをフラフラしていました。
これが要因に間違いないです。
-
この時に [AM +B] [AUTO STOP] 信号は 0V でした。
と言うことは、これらの信号が要因ではありません。
-
こうなると、普通には [CXA1064] 自身の故障となりますが ・・・
-
[CXA1064] の 10pin をルーペで観察すると、やや黒ずんでいます。
-
マイグレーションが発生して隣の 9pin または 11pin とレアショートしている可能性があります。
-
9~10pin 間と 10~11pin 間を爪楊枝を使ってクリーニングしたら直りました。
-
FM ステレオ受信時に [CXA1064] の 10pin はフラフラせず 0V になったままです。
良好です。
-
マイグレーションが不具合の原因とわかりました。
-
マイグレーション
とは金属カビのようなもので、電圧差のある pin 間で20年以上かけて成長します。
-
最終的に IC の pin 間をレアショートさせて障害に至ります。
-
カビみたいなものですからレアショートの状態は不安定で現象が出たり出なかったりを繰り返します。
-
対策 (修理)
-
やや硬めのブラシと
エレクトロニッククリーナ
を使って [CXA1064] の足に付いたマイグレーションを除去しました。
-
マイグレーションは空気 (湿気) に触れることで発生します。
逆に言えば足が空気に触れなければマイグレーションは発生しないのです。
-
[CXA1064] の足をワニスコーティングして空気に触れない対策も実施しました。
リペア (その2):メモリバックアップ用の電気二重層コンデンサが劣化している可能性がある
-
[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] の交換
-
左の写真の小さな赤〇で囲んだ [C603] 10uF/6.3V タンタル → 10uF/25V 積層セラミックコンデンサに交換しました。
-
左の写真の大きな赤〇で囲んだ [C605] を 1F/5.5V 電気二重層コンデンサに交換しました。
-
右の写真は [C603] [C605] 交換後です。

-
コメント
-
電気二重層コンデンサはデフォールトの 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
-
タンタルコンデンサは短絡事故が多いです。
-
使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
-
タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
-
半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
-
換装した積層セラミックコンデンサはタンタルより高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
リペア (その3):全体的にハンダクラックが多数ありそう
-
全体のハンダクラックの状況を観察
-
下の写真はオーディオ出力端子の L チャンネルで、見事にハンンダクラックしています。
R チャンネルも同様でした。

-
左の写真のように基板上に細長い銅板が何枚も走っていますが、これがアースバーです。
電源ラインにも使っていますがアースバーと呼ぶ。
-
アースバーの裏側を観察すると、右の写真のようにあちこちで見事にハンンダクラックしていました。

-
結局、本機は
ハンダクラックだらけでガタガタ
とわかりました。
-
修理
-
リアパネルにある [FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] [RCA 出力端子] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
-
8枚ある全ての [アースバー] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
-
補修ハンダ付けは、古いハンダを吸引して除去し、新しいハンダを付けるのが正しいやり方です。
リペア (その4):その他
-
内部の全体的に薄く綿埃が絨毯のように堆積している
-
エアブロアと刷毛を使って、できる範囲で清掃しました。
-
-0.1MHz の周波数ズレがある
再調整
-
電源電圧チェック (VP)
-
実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| JW88 |
+30V |
+31.0V |
〇 |
PLL |
| JW89 |
+15V |
+14.7V |
〇 |
AUDIO |
| JW145 |
-17V |
-17.9V |
〇 |
FL |
| JW213 |
+13V |
+13.2V |
〇 |
DIGITAL |
| JW220 |
+5.6V |
+5.64V |
〇 |
DIGITAL |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
再調整中に劣化を感じた箇所はなく、全て規定内に収まりました。
-
FM 受信部
-
FM フロントエンドでトラッキング調整ズレがありました。
再調整で感度が上がりました。
-
PLL 検波部でかなり調整ズレがありました。
再調整で聴き違えるほど音が良くなりました。
-
再調整で下のような良好な性能に蘇りました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
56 |
59 |
dB |
| NARROW |
42 |
44 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.010 |
% |
| stereo |
0.024 |
% |
| NARROW |
mono |
0.24 |
% |
| stereo |
0.24 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-73 |
-75 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
| CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
| -5.6 |
dB |
-
AM 受信部
-
元々動作良好だったのと [純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので IF 調整だけしました。
使ってみました
-
今回の修理の感想
-
マイグレーション発生が故障の原因でした。
-
マイグレーションは湿度が高いと成長しやすく、使用環境に問題ないかチェックしたほうがよいです。
-
ST-S333ES シリーズではハンダクラックの発生しやすい箇所があり、今回も全滅でした。
補修したので直っています。
-
全体的にゴールド基調のデザイン
-
フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
-
FM 受信
-
感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
-
解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
-
AM 受信
-
感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。