SONY ST-S333ESA (17号機) が到着
2025年6月10日、茨城県牛久市の W さんより
SONY ST-S333ESA
の修理依頼品が到着しました。
修理依頼者からは「ちゃんと受信できるので再調整だけ」と聞いていましたが、さてさて・・・
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
一応、受信できておりステレオインジケーターも点灯します。
-
経年劣化が進んでいると思い、修理というよりは再調整をお願いしたく思います。
-
一点気になっているのは Inter FM (89.7MHz) に対する感度が異常に悪いことです。
-
外観
-
製造シリアル番号は [202659] で、電源コードの製造マーキングより [1992年製造品] と判明しました。
-
[純正 AM ループアンテナ] [純正リモコン RM-J300] の添付はありませんでした。
-
フロントパネルは綺麗です。
天板への折り返し部分に軽い色ムラがありますがそう目立たないです。
-
サイドウッドは綺麗です。
リアパネルは綺麗ですが、端子類に使用には支障ない程度のサビが出ています。
-
天板と底板は綺麗です。
天板の留めネジにサビが出ています。
-
電源 ON してチェック
-
電源は問題なく入りました。
各ボタン操作は問題なく、ディスプレイの輝度は新品同様に明るいです。
-
[CAL TONE] ボタンを押すとテスト音は正常に出ます。
-
S メータの3つ目のバーが点灯したりしなかったりと変です。
-
電源を入れたままにしていたら常時点灯しなくなりました。
-
S メータのバーは20本ありますが、2本単位で点灯するので3つ目が消えて4つ目が点くということはあり得ません。
-
これは表示器内部の故障で、表示器を交換しないと直りません。
-
表示器が入手できないので、ここは修理できません。
支障なく使えるので諦めですね。
-
FM 受信
-
かなり感度落ちしています。
-
筆者の環境では S メータがフル近くに振れるはずが 20% くらいのフレです。
-
しかも周波数が高くなるほど感度落ちが激しくなるようです。
-
[STEREO] 表示が出て綺麗な音が出ます。
-
一応オートチューニングもできますが、高い周波数の放送局を検出できません。
-
AM 受信
-
[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、[ST-SA5ES の 純正 AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
-
全く受信できません。
S メータも振れません。
完全に故障しています。
-
カバーを開けてチェック
-
基板全体に綿埃がビッシリ堆積しており、部品番号などの文字が全く読めません。
酷い状態です。
-
まずは綿埃を除去しないとメンテナンスができないので、仕方なくエアブロアと刷毛で清掃しました。
リペア (その1):FM でかなり感度落ちしている
-
調査と原因
-
感度落ちの要因は [FM フロントエンド] [IF 増幅部] です。
-
FM フロントエンドに RF 同調回路に実装されているトリマコンデンサが3個ありますが、そのどれを回しても S メータに変化がありません。
-
トリマコンデンサが完全に故障しています。
原因はこれです。
-
修理
-
[トリマコンデンサ] ×3個を一斉交換しました。
-
左の写真はトリマコンデンサ交換後で、赤〇で囲んだ部品です。
10pF セラミックトリマコンデンサにしました。
-
右の写真は基板から取り外した故障したトリマコンデンサです。
-
写真からわかるようにトリマコンデンサはハトメ構造で、経年変化でここが接触不良になって容量抜けします。

-
修理後の動作確認
-
交換したトリマコンデンサを再調整して (筆者の環境では) S メータがフルに振れるようになりました。
直りました!!!
リペア (その2):AM が全く受信できない
-
調査と原因
-
AM 受信に LA1245 という IC を使っています。
この背中に指で当たっても暖かくないのです。
右の写真でムカデのような部品の黒い LA1245 が動作していません。
-
LA1245 の電源に [R403] [R410] という FUSE 抵抗が使われています。
-
右の写真で、青〇で囲んだ部品が [R403] で、赤〇で囲んだ部品が [R410] です。
-
[R403] は220Ωですが、劣化して635Ωになっていました。
-
[R410] は150Ωですが、劣化して1020Ωになっていました。
-
原因は FUSE 抵抗 {R403] [R410] の劣化故障です。
-
他の回路にも故障している FUSE 抵抗がありそうです。
-
FUSE 抵抗のチェック
-
FUSE 抵抗は各回路の電源部に使われています。
この抵抗は劣化しやすいのが難点です。
-
チェックしてみると、以下の表のように9本が劣化しているとわかりました。
判定基準は定格の±50% 以内です。
| 回路 |
部品番号 |
標準値 (Ω) |
実測値 (Ω) |
判定 |
対策 |
| FM FRONT END |
R119 |
100 |
137 |
〇 |
|
| WOIS |
R203 |
10 |
10.3 |
〇 |
|
| R207 |
10 |
10.8 |
〇 |
|
| R211 |
10 |
10.6 |
〇 |
|
| R227 |
10 |
10.2 |
〇 |
|
| IF |
R259 |
100 |
185 |
× |
100Ω 1/2W に交換 |
| DET |
R274 |
10 |
10.2 |
〇 |
|
| R279 |
220 |
225 |
〇 |
|
| R292 |
100 |
163 |
× |
100Ω 1/2W に交換 |
| MPX |
R301 |
10 |
10.4 |
〇 |
|
| R327 |
47 |
152 |
× |
47Ω 1/2W に交換 |
| AM |
R403 |
220 |
635 |
× |
220Ω 1/2W に交換 |
| R410 |
150 |
1020 |
× |
150Ω 1/2W に交換 |
| PLL |
R511 |
220 |
300 |
〇 |
|
| R516 |
180 |
700 |
× |
180Ω 1/2W に交換 |
| CONTROL |
R626 |
47 |
91.1 |
× |
47Ω 1/2W に交換 |
| POWER SUPPLY |
R910 |
22 |
39.9 |
× |
22Ω 1/2W に交換 |
| R921 |
220 |
475 |
× |
220Ω 1/2W に交換 |
| R931 |
220 |
252 |
〇 |
|
| JW87 |
10 |
10.1 |
〇 |
|
-
修理
-
上の表のように劣化した FUSE 抵抗×9本を交換しました。
上の写真は故障していた FUSE 抵抗です。
-
修理後の動作確認
-
AM 受信で S メータがビューンと振れて放送を受信できるようになりました。
直りました!!!
-
AM 回路以外の FUSE 抵抗も交換したので、それぞれが元気になったはずです。
リペア (その3):[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] の交換
-
概要
-
[電気二重層コンデンサ] は電源 OFF 時のプリセット情報をバックアップします。
-
[タンタルコンデンサ] は短絡事故が多く、別の種類のコンデンサに交換すると幸せになります。
-
使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
-
タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
-
半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
-
換装する積層セラミックコンデンサはタンタルより ESR が低く高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
-
修理 (予防交換)
-
以下のリストように部品を交換しました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C604 |
10uF/6.3V (タンタル) |
10uF/25V (積層セラミック) |
|
| C605 |
0.1F/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
-
左の写真は部品交換後で、小さな赤〇で囲んだのが [C604] で、大きな赤〇は [C605] です。
-
右の写真は、基板から外した古い [C604] [C605] です。

-
修理後の動作確認
-
正常にプリセット保存と読み出しができることを確認しました。
-
コメント
-
電気二重層コンデンサは 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
-
実際には自己放電もあるので数ヶ月でしょう。
リペア (その4):ハンダクラック補修
-
概要
-
ST-S333ES シリーズにはハンダクラックしやすい箇所があるという持病があります。
-
左の写真はリアパネルにある端子類の裏側です。
写真のように端子のリードが基板に直接ハンダ付けされています。
-
端子のリードのハンダ付け部はリアパネルと基板の2方向から常にストレスがかかりハンダクラックしやすいです。
-
基板上に細長い銅板が何枚も走っていますが、これはアースバーです。
電源ラインにも使っていますがアースバーと呼ぶ。
-
アースバーの裏側のハンダ付け部分はハンンダクラックしやすいです。
-
なぜなら、基板と銅板の熱膨張率が違うからです。

-
修理 (予防補修)
-
[FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] [RCA 出力端子] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
-
8枚ある全ての [アースバー] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
-
なお、補修ハンダ付けしながら観察したら数ヵ所でハンダクラック寸前になっていました。
再調整
-
電源電圧チェック (VP)
-
実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| JW88 |
+30V |
+30.7V |
〇 |
PLL |
| JW89 |
+15V |
+14.6V |
〇 |
AUDIO |
| JW145 |
-17V |
-17.9V |
〇 |
FL |
| JW213 |
+13V |
+13.0V |
〇 |
DIGITAL |
| JW220 |
+5.6V |
+5.70V |
〇 |
DIGITAL |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
FM 受信部
-
FM 同調点が限界までズレていました。
再調整で規定内に入りました。
-
PLL 検波調整が大きくズレていました。
再調整で規定内に入りました。
-
パイロットキャンセル調整が大きくズレていました。
再調整で規定内に入りました。
-
再調整でステレオセパレーションと高調波歪率が大きく改善して音の解像度が上がりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
62 |
69 |
dB |
| NARROW |
58 |
58 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.014 |
% |
| stereo |
0.014 |
% |
| NARROW |
mono |
0.17 |
% |
| stereo |
0.17 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-72 |
-74 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
| CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
422 |
Hz |
| -5.2 |
dB |
-
AM 受信部
-
[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので IF 調整だけ実施しました。
-
残念ながら
AM 放送は2028年に終了
します。
-
ワイド FM 対応クリコン
を製作すれば ST-S333ESA でワイド FM が受信できます。
-
ST-S333ESA はアンテナ端子が2つあるので、ワイド FM 受信に便利です。
使ってみました
-
修理&再調整が終わって
-
修理依頼者から「動作するので再調整だけ」と聞いていたので楽勝と思っていたのに大違いです。
-
感度落ちは徐々に進行するので気が付かなかったのでしょう。
また AM 受信不可は、そもそも AM 放送を聴いていなかったのかも?
-
結局、筆者の所のフルメンテンスに近い修理が必要でした。
修理&再調整で ST-S333ESA 本来の性能に戻せてよかったです。
-
全体的にゴールド基調のデザイン
-
フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
-
FM 受信
-
感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
-
解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナとは全く異次元の音です。
-
AM 受信
-
感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。