SONY ST-S333ESA (24号機) が到着
2026年2月21日、東京都国立市の S さんより
SONY ST-S333ESA
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
ハードオフで購入した正規中古品です。
ジャンク品ではありません。
-
FM の受信周波数が -0.1MHz ずれています。
オート受信でも -0.1MHz ずれて止まりステレオランプが点灯します。
-
FM の感度が下がっている感じがします。
メモリーバックアップが効きません。
-
AM は、正常動作レベルかと思います。
-
外観のチェック
-
製造シリアル番号は [200363] で、電源コードの製造マーキングより [1991年製造品] と判明しました。
-
純正でない [AM ループアンテナ] が添付されていました。
-
全体的に非常に綺麗な逸品で、指摘する問題はなさそうです。
RCA 端子には輝きが残っています。
-
ループアンテナを留めるプラスチックホルダの一部が割れていました。
-
電源 ON してチェック
-
電源は正常に入り、表示器の輝度は新品同様です。
-
各ボタンは正常に反応します。
[CAL TONE] ボタンでテスト音が出ました。
-
FM 受信
-
S メータは 40~50% しか振れず、感度落ちしているようです。
-
-0.1MHz の周波数ズレがあり、放送周波数より 0.1MHz 低い周波数表示で受信しますが [STEREO] 表示は出ます。
-
AM 受信
-
添付された純正でない [AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
-
特に問題なく感度が良く良好に受信できました。
このアンテナとの相性は良いです。
-
カバーを開けてチェック
-
内部は非常に綺麗で、基板を目視で眺めて明らかに劣化とわかる部品は見当たりません。
リペア (その1):FM で -0.1MHz の周波数ズレ
-
原因
-
FM 同調点を検出する [IFT251] が経年変化で調整ズレしたためです。
-
修理
-
右の写真で赤〇で囲んだ [IFT251] を再調整して直りました。
-
修理後の動作チェック
-
放送局の周波数で [STEREO] 表示が出てステレオの良い音で受信できることを確認しました。
-
オートスキャン受信で放送局の正しい周波数で停止することを確認しました。
リペア (その2):FM で感度落ちしている
-
原因
-
FM フロントエンドに使われているトリマコンデンサ×3個を回しても S メータに変化がありませんでした。
-
トリマコンデンサが3個とも故障して容量抜けしています。
これが原因です。
-
修理
-
[トリマコンデンサ] ×3個を一斉交換しました。
-
左の写真は交換後で、赤〇で囲んだ部品がトリマコンデンサです。
10pF セラミックトリマコンデンサにしました。
-
右の写真はこれまで基板に実装されていた故障したトリマコンデンサです。
底部にあるハトメ部分がサビて接触不良になるのです。

-
修理後の動作チェック
-
交換してからトラッキング調整して、(筆者の環境で) S メータがフルになりました。
リペア (その3):メモリバックアップが効かない
-
概要
-
「メモリバックアップが効かない」は修理依頼者のコメントです。
-
電源 OFF → 10分後に ON 程度ではプリセットメモリがバックアップされていました。
-
おそらく1時間とか半日とか OFF にすると発生するのだと思います。
-
いずれにしても製造後45年経過しているので、メモリバックアップ用の電気二重層コンデンサが寿命になっていると思います。
-
[タンタルコンデンサ] は短絡事故が多く、別の種類のコンデンサに交換すると幸せになります。
-
使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
-
タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
-
半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
-
換装する積層セラミックコンデンサはタンタルより ESR が低く高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
-
修理
-
以下のリストように部品を交換しました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C604 |
10uF/6.3V (タンタル) |
10uF/25V (積層セラミック) |
|
| C605 |
0.1F/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
-
左の写真は交換後で、小さな赤〇で囲んだのが [C604] で、大きな赤〇は [C605] です。
-
右の写真はこれまで基板に実装されていた劣化した電気二重層コンデンサとタンタルコンデンサです。

-
修理後の動作チェック
-
正常にプリセット保存と読み出しができることを確認しました。
-
コメント
-
電気二重層コンデンサは 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
-
実際には自己放電もあるので数ヶ月でしょう。
リペア (その4):ハンダクラック補修
-
ST-S333ES シリーズにはハンダクラックしやすい箇所があるという持病があります
-
左の写真はリアパネルにある端子類の裏側です。
写真のように端子のリードが基板に直接ハンダ付けされています。
-
端子のリードのハンダ付け部はリアパネルと基板の2方向から常にストレスがかかりハンダクラックしやすいです。
-
基板上に細長い銅板が何枚も走っていますが、これはアースバーです。
電源ラインにも使っていますがアースバーと呼ぶ。
-
アースバーの裏側のハンダ付け部分はハンンダクラックしやすいです。
-
なぜなら、基板と銅板の熱膨張率が違うからです。

-
修理
-
[FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] [RCA 出力端子] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
-
[RCA 出力端子] の右チャンネルが完全にハンダクラックしていました。
-
8枚ある全ての [アースバー] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
-
修理後の動作チェック
-
RCA 端子に挿入したプラグを揺すっても音が途切れないことを確認しました。
-
アンテナ端子や基板をハンマリング試験しても異常が発生しないことを確認しました。
リペア (その5):その他
-
サイドウッドが左右とも外し難い
-
サイドウッドに貼り付けられたプラスチック板から粘着物がはみ出して天板の側面側に貼り付いたためです。
-
はみ出た粘着物を無水アルコールで除去し、粘着物がはみ出しても側面に貼り付かないよう、ポリイミドテープで養生しました。
再調整
-
電源電圧チェック (VP)
-
実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| JW88 |
+30V |
+31.1V |
〇 |
PLL |
| JW89 |
+15V |
+14.7V |
〇 |
AUDIO |
| JW145 |
-17V |
-18.0V |
〇 |
FL |
| JW213 |
+13V |
+13.5V |
〇 |
DIGITAL |
| JW220 |
+5.6V |
+5.60V |
〇 |
DIGITAL |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
FM 受信部
-
フロントエンドの OSC トラッキング調整でやや大きなズレがありました。
再調整で規定内に入りました。
-
フロントエンドのトリマコンデンサを全数交換したので RF トラッキング調整をやり直しました。
-
PLL 検波の NULL 調整が大きくズレていました。
誰かが弄ったと思います。
再調整で規定内に入りました。
-
NARROW ゲインが上がり過ぎていました。
誰かが弄ったと思います。
再調整で規定内に入りました。
-
再調整でステレオセパレーションと高調波歪率はすごく良い数値になりました。
この個体は当たり!と思います。
-
通常、ST-S333ESA の IF BAND = NARROW 時のステレオセパレーションは 30dB くらいしかありませんが、本機は 50dB 超えと素晴らしいです。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
59 |
54 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.010 |
% |
| stereo |
0.024 |
% |
| NARROW |
mono |
0.44 |
% |
| stereo |
0.44 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-70 |
-75 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
| CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
398 |
Hz |
| -5.5 |
dB |
-
AM 受信
-
添付された純正でない [AM ループアンテナ] で最高感度になるように調整しました。
使ってみました
-
修理&再調整が終わって
-
本機は修理&再調整でみるみる感度が上がり、ステレオセパレーションも ST-S333ESA でもトップクラスの性能になりました。
-
修理&再調整の効果が顕著でした。
素晴らしい!!!
-
外観もディスプレイも新品同様だし音も良いので、当たりの個体!です。
-
リモコンの添付がありませんでしたが・・・
-
デザイン
-
シャンパンゴールド基調の優れたデザインです。
-
フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
-
FM 受信
-
感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
-
解像度がある素晴らしい音。
現代のチューナ (値段は高いが。) とは全く異次元の音です。
-
AM 受信