SONY ST-S333ESG (12号機) が到着
2023年12月15日、熊本市北区の T さんより
SONY ST-S333ESG
の修理依頼品が届きました。
程度&動作チェック
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依頼者のコメント
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新品で購入し、以後約30年使っていましたが、1年ほど前からハム音がでるようになりました。
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ジジジ゙というよりは、低音のウーンという母音系の音です。
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音楽が強奏のときは殆ど分からず、弱奏のときは目立ちますので音量は一定で常時鳴ってなっている印象です。
ボリュームの大小には比例します。
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また、感度も少し落ちてきたようですし、ハム音とは別に音楽がフォルテでドンと鳴ると音が若干濁り音像がぼやける印象があります。
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外観
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製造シリアル番号は [201163] で、電源コードの製造マーキングより [1989年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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なんだかくたびれているといった外観です。
あちこち小キズやスレがありますが、フロントパネルはパッと見綺麗です。
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オーディオ機器は使ってこそ価値があり、ここまで使い込んだというのはある意味、立派です。
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サイドウッドがありません。
天板をサイドから留める4本のネジ (サイドウッドを留めるネジ) がありません。
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電源 ON にてチェック
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電源は問題なく入り、各ボタンやノブの操作はそれなりにできますが [TUNING] ノブの動きが重いです。
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ディスプレイの明るさが少し暗いように思います。
そして、チラツキも感じます。
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更に所々でヤセがあります。
また、ディスプレイ内に煤のような汚れがあって曇っています。
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プリセットメモリが全部クリアされて初期値に戻っていました。
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メモリバックアップ用の電気二重層コンデンサが劣化していると思います。
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FM 受信
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問題なく受信でき、周波数ズレはなく、[STEREO] 表示も点きました。
ただし、大きい音のところで [STEREO] 表示が点滅します。
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出てくる音に少しブーンというハム音が混じっています。
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[CAL TONE] 音は出ますが音の周波数が高い気がします。
通常はポーという音ですが、ピーに近いです。
特に問題ないですが。
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので [ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
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問題なく受信でき、S メータも振れ、音も出ます。
感度も良好です。
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カバーを開けてチェック
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内部にはビッシリ綿埃が絨毯にように堆積しています。
埃で部品番号も読み取れません。
まずは清掃が必要です。
リペア (その1):まずは全体的なメンテナンス
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内部にはビッシリ綿埃が絨毯にように堆積している
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まずは綿埃を除去しないと部品すら見えません。
エアブロアと刷毛で清掃したら、綺麗な基板が見えました。
ヤレヤレ。
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あらためて部品の状態を目視チェック
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[C605] 0.1F/5.5V 電気二重層コンデンサに錆が出ています。
交換すべきです。
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[C603] 10uF/6.3V タンタルコンデンサは短絡故障しやすいので、積層セラミックコンデンサに交換すべきです。
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基板の中で電源回路部に部品の発熱による変色があります。
これはやむを得ないですが、問題はありません。
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上記以外は目視で劣化と思われる部品は見当たりませんでした。
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電源電圧チェック
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DMM で測定した結果は以下です。
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[JW88] を×としたのは、電圧がフラフラ動いているためです。
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[JW145] は全然ダメです。
電圧もフラフラ動いています。
| VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| JW88 |
+30V |
+30.9V |
+28.6V |
× |
PLL |
| JW89 |
+15V |
+16.3V |
+15.0V |
〇 |
AUDIO |
| JW145 |
-17V |
-17.5V |
-6.83V |
× |
FL |
| JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.4V |
〇 |
DIGITAL |
| JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.68V |
〇 |
DIGITAL |
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オシロスコープで各電圧のリップルをチェックしました。
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[JW88] には 2V くらいのリップルが乗っています。
これがハム音が聞こえる原因でしょう。
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リップルが FM フロントエンドの OSC に周波数変調をかけているのです。
そしてハム音として聞こえます。
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[JW145] には 100% のリップルが乗っています。
これがディスプレイが暗くチラツキがある原因でしょう。
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[JW89] [JW213] [JW220] にはリップルが乗っておらず綺麗です。
本来、これが普通なのです。
リペア (その2):電源回路の小容量電解コンデンサを全数交換
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[JW88] [JW145] にリップルが乗る原因
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[C922] 330uF/50V、[C923] 330uF/50V が放熱器からの熱を受けて容量抜けしたと判明しました。
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特に [C932] は完全に容量ゼロになっていました。
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電解コンデンサは熱に弱く、熱で電解液が蒸発するのです。
熱に晒されなければ、そう劣化することはありません。
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こうなると、電源回路で使っている電解コンデンサの小容量のものは全数交換したほうがよいです。
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交換作業の記録
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交換リストは以下です。
容量・耐圧は少し上げ、耐熱は 105℃ クラス品にして信頼性を上げました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
| C906 |
100uF/25V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
| C915 |
470uF/35V (85℃) |
560uF/50V (105℃) |
| C916 |
47uF/10V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
| C917 |
100uF/16V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
| C922 |
330uF/50V (85℃) |
560uF/50V (105℃) |
| C923 |
47uF/50V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
| C924 |
47uF/50V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
| C932 |
330uF/50V (85℃) |
560uF/50V (105℃) |
| C933 |
47uF/35V (85℃) |
56uF/35V (105℃) |
| C934 |
47uF/35V (85℃) |
56uF/35V (105℃) |
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左の写真は交換前で、右の写真は交換後です。
赤〇で囲んだ電解コンデンサを交換しました。
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交換した電解コンデンサは熱を持つ放熱器から少しでも離す工夫をしています。
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[C932] は放熱器に近過ぎるため、基板の裏側に取り付けて熱から逃げました。

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交換後のチェック
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ハム音が消え、クリアな音になりました。
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ディスプレイのチラツキがなくなり、明るさもかなり上がりました。
リペア (その3):[電気二重層コンデンサ] と [タンタルコンデンサ] の交換
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交換作業の記録
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左の写真の小さな赤〇で囲んだ [C603] 10uF/6.3V タンタル → 10uF/25V 積層セラミックコンデンサに交換しました。
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左の写真の大きな赤〇で囲んだ [C605] には錆が出ていました。
これを 1F/5.5V 電気二重層コンデンサに交換しました。
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右の写真は [C603] [C605] 交換後です。

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コメント
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電気二重層コンデンサはデフォールトの 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
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タンタルコンデンサは短絡事故が多いです。
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使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
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タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
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半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
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換装した積層セラミックコンデンサはタンタルより高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
リペア (その4):ハンダクラック状況点検と修理
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ハンダクラックの状況点検
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左の写真はオーディオ出力端子の L チャンネルで、見事にハンンダクラックしています。
R チャンネルも同様でした。
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右の写真はアンテナ端子の B 側で、見事にハンンダクラックしています。
A 側も同様でした。

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修理
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リアパネルにある [FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] [RCA 出力端子] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
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補修ハンダ付けは、古いハンダを吸引して除去し、新しいハンダを付けるのが正しいやり方です。
リペア (その5):その他
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ディスプレイ内に煤のような汚れがあって曇っている
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フロントパネルを分解して汚れを除去しました。
全体的によく見えるようになりました。
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ついでにパネル内の綿埃も除去しました。
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[TUNING] ノブの動きが重い
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大きい音のところで [STEREO] 表示が点滅する
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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今回は電解コンデンサ交換の修理を行い、修理後は以下のように良好です。
| VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| JW88 |
+30V |
+30.9V |
+30.6V |
〇 |
PLL |
| JW89 |
+15V |
+16.3V |
+15.0V |
〇 |
AUDIO |
| JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.9V |
〇 |
FL |
| JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.4V |
〇 |
DIGITAL |
| JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.68V |
〇 |
DIGITAL |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
50 |
50 |
dB |
| NARROW |
45 |
43 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0082 |
% |
| stereo |
0.030 |
% |
| NARROW |
mono |
0.19 |
% |
| stereo |
0.26 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-73 |
-73 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.25 |
dB |
| CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
656.8 |
Hz |
| -8.1 |
dB |
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AM 受信部
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、IF 調整だけしました。
使ってみました
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全体的にブラック基調のデザイン
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SONY デザインはやはり格好イイです。
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デザインが良くて性能も良い、持つべき価値があります。
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。