SONY ST-S333ESG (18号機) が到着
2024年3月20日、岩手県北上市の H さんより
SONY ST-S333ESG
の修理依頼品が届きました。
程度&動作チェック
-
依頼者のコメント
-
FM の受信感度が低くなり電波状態が悪い時は MUTING ON で受信出来なくなってしまいます。
-
FM の受信感度以外は問題ないようです。
-
外観
-
製造シリアル番号は [207495] で、電源コードの製造マーキングより [1990年製造品] とわかりました。
-
[純正 AM ループアンテナ] は添付されていませんでした。
-
まるで新品に見えるほど
完璧に綺麗な逸品
です。
よくこのような状態の ST-S333ESG が存在することに驚きます。
-
電源 ON にてチェック
-
電源が入り、ディスプレイは新品同様の明るさ、操作ボタンの反応は正常です。
-
FM 受信
-
当方の 84dBf の電波強度の環境で S メータの振れは 80% くらいで、-20dBf 程度感度落ちしています。
-
[STEREO] 表示が出て、オートチューニングもできます。
感度以外に特に問題はなさそうです。
-
現状のオーディオ性能値を測定してみました。
良好な範囲に収まっています。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
53 |
58 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.013 |
% |
| stereo |
0.038 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-53 |
-62 |
dB |
-
AM 受信
-
AM ループアンテナの添付がなかったので、[SONY ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
-
感度は良く特に問題はなさそうです。
-
カバーを開けてチェック
-
内部は非常に綺麗です。
目視で劣化とわかる部品はなさそうです。
-
同調点 [R256] 両端の電圧は 60mV で問題ありません。
-
FM フロントエンドのトリマコンデンサ [CT101] [CT102] [CT103] を回してみると、容量変化が連続的ではなく、劣化しているようです。
リペア (その1):FM で S メータの振れが少なく感度落ちしている
-
原因
-
FM フロントエンドにあるトリマコンデンサ [CT101] [CT102] [CT103] が故障・劣化したためです。
-
[トリマコンデンサ] はハトメ構造になっており、経年変化でハトメ部分が接触不良になって容量抜けします。
-
こうなると FM の感度が低下します。
少しずつ徐々に不良になっていくので気付くのが遅れます。
-
ST-S333ES シリーズでは [トリマコンデンサ] の故障が散見されます。
-
修理
-
[トリマコンデンサ] ×3個を一斉交換しました。
-
左の写真で赤〇で囲んだ部品が交換後です。
10pF セラミックトリマコンデンサを使いました。
-
右の写真は交換前に基板に実装されていたトリマコンデンサです。

-
動作確認
-
トリマコンデンサを調整すると、感度が上がって S メータがビュ~ンと振れるようになりました。
直りました。
リペア (その2):[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] の交換
-
概要
-
[電気二重層コンデンサ] は電源 OFF 時のプリセット情報をバックアップします。
-
既に前回の修理者が 0.33F/5.5V に交換していました。
(オリジナルは 0.1F/5.5V)
-
このままでもよいのですが、当方で標準にしている容量が大きい 1F/5.5V にします。
-
[タンタルコンデンサ] は短絡事故が多く、別の種類のコンデンサに交換すると幸せになります。
-
使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
-
タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
-
半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
-
換装する積層セラミックコンデンサはタンタルより ESR が低く高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
-
交換
-
左の写真で、小さな赤〇で囲んだのが [C604]、大きな赤〇で囲んだのが [C605] の交換後です。
-
右の写真は交換前に基板に実装されていた [C605] [C604] です。

-
以下は交換リストです。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C604 |
10uF/6.3V (タンタル) |
10uF/25V (積層セラミック) |
|
| C605 |
0.33F/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
-
電気二重層コンデンサはオリジナルの 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
リペア (その3):ハンダクラック予防補修
-
ハンダクラック状況の観察
-
前回の修理者が [アースバー] [RCA 端子] のハンダクラック予防補修済でした。
-
ただし、前回の修理者が [RCA 端子] をリアパネルに瞬間接着剤で貼り付けていました。
-
こうなるとリアパネルを取り外すことができないのです。
接着を剥がすのに難儀しました。
-
リアパネルを外せないと、今後のメンテナンスで困るので剥がしたままにしました。
-
アースバーのハンダ付け補修で数ヵ所、テンプラ状態になっている部分がありました。
-
ST-S333ESG に基板上に細長い銅板が8本走っていますが、これがアースバーです。
-
左の写真は FM アンテナ端子と基板とのハンダ付け部分です。
見事にハンダクラックしていました。
-
右の写真は電源部の [Q931] [R931] ハンダ付け部分です。
ハンダクラック気味です。
-
ここは部品の発熱がハンダ付け部分に加わり、更に電源 ON/OFF で熱くなったり/冷めたりするので、ハンダが劣化するのです。

-
補修
-
アースバーのハンダ付け部分で心配な箇所を補修ハンダ付けしました。
-
電源部の熱を持つ部品のハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
-
[FM ANTENNA (A/B)] [AM ANTENNA] 端子のリードのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
再調整
-
電源電圧チェック (VP)
-
実測値は以下のように良好です。
| VP |
表示電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| JW88 |
+30V |
+30.7V |
〇 |
PLL |
| JW89 |
+15V |
+14.9V |
〇 |
AUDIO |
| JW145 |
-17V |
-17.8V |
〇 |
FL |
| JW213 |
+13V |
+13.5V |
〇 |
DIGITAL |
| JW220 |
+5V |
+5.68V |
〇 |
DIGITAL |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
FM 受信部
-
フロントエンドのトリマコンデンサの全数交換と再調整で感度が大きくアップしました。
-
上記以外に調整ズレはほとんどなく、前回の修理者がキチンと調整していたようです。
-
ステレオセパレーションと高調波歪率はかなり改善して、音の解像度が良くなりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
60 |
64 |
dB |
| NARROW |
38 |
38 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0097 |
% |
| stereo |
0.024 |
% |
| NARROW |
mono |
0.10 |
% |
| stereo |
0.10 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-72 |
-76 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
| CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
419.9 |
Hz |
| -7.3 |
dB |
-
AM 受信部
-
[ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] で最高感度になるように調整しました。
-
別のループアンテナで使うと感度が落ちます。
ループアンテナは同調回路の一部なのです。
使ってみました
-
修理&再調整が終わって
-
この ST-S333ESG は外観も調整状態もかなり良い状態でした。
前回の修理者は技術的に優秀なかただと思います。
-
トリマコンデンサ交換で感度が蘇って良かったです。
-
手持ちの [RM-J300] 専用リモコンでの操作も良好でした。
-
ワイド FM 対応クリコン
でのワイド FM 受信も良好でした。
-
ST-S333ESG はアンテナ端子が2つあるので、ワイド FM 受信に便利です。
-
全体的にブラック基調のデザイン
-
SONY デザインはやはり格好イイです。
-
デザインが良くて性能も良い、持つべき価値があります。
-
フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
-
左右のサイドウッドが高級感を醸し出しています。
-
FM 受信
-
感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
-
解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
-
AM 受信
-
感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。