SONY ST-S333ESJ (5号機) が到着
2023年11月20日、愛知県知多郡 Y さんより
SONY ST-S333ESJ
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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症状はFMは FM 愛知 80.7MHz → 80.5MHz で受信し FM 局全てが -0.2MHz の周波数ズレがあります。
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レベルメータの振れがかなり少なく、ノイズが入ります。
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外観
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製造シリアル番号は [251483] で、電源コードの製造マーキングより [1994年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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ほぼキズやスレは見当たらず、綺麗な逸品です。
リアパネルの端子類はピカピカした輝きがあります。
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電源 ON してチェック
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問題なく電源が入り、FL の輝度は新品同様、各ボタン操作も正常です。
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FM 受信
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MUTING OFF にしないと受信できません。
S メータは最小レベルしか振れません。
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出てくる音は正常ですが、[STEREO] ランプは点灯しません。
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、[ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
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問題なく良好に受信できました。
ニッポン放送 (1242kHz) では [STEREO] 表示も出ます。
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カバーを開けてチェック
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非常に綺麗です。
目視では部品は問題ないように思います。
リペア
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-0.2MHz の周波数ズレがある
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経年変化で同調点調整が大幅にズレて 0V であるところが、2.5V 以上になっていました。
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[IFT251] を再調整して直りました。
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感度低下している
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FM フロントエンドのトラッキング調整が大きくズレていました。
再調整して感度が大きく上がりました。
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上記の [1] [2] の調整後、正しい周波数で受信でき [STEREO] 表示も出ます。
直りました!!!
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[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] の予防交換
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[C605] 0.1F/5.5V → 1F/5.5V に交換しました。
左の写真の大きな赤〇で囲んだ部品です。
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[C603] 10uF/6.3V タンタル → 10uF/25V 積層セラミックコンデンサに交換しました。
左の写真の小さな赤〇で囲んだ部品です。
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右の写真は、交換前に基板に実装されていた部品です。
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電気二重層コンデンサは 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
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タンタルコンデンサは短絡事故が多いです。
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使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
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タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
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半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
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換装した積層セラミックコンデンサはタンタルより高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
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ハンダクラック予防対策
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リアパネルの端子類
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どうしても端子のリードと基板の間で機械的なタワミを原因とするハンダクラックが発生しやすいのです。
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下の左の写真で赤〇の部分は RCA 端子のリード部のハンダ付け部分です。
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[RCA 端子] [FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] のリード~基板の部分に補修ハンダ付けしました。
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ST-S333ES シリーズでは銅製のアースバーが敷かれています。
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これはこれで素晴らしいのですが、経年変化でアースバーでハンダクラックが発生しやすいのです。
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下の右の写真で細長い銅板がアースバーです。
筆者はアースバーと呼んでいますが、実際には電源ラインもあります。
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全てのアースバー~基板の部分に補修ハンダ付けしました。
再調整
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電源電圧チェック
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特に問題なく良好です。
ジャンパー |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 (用途) |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+29.9V |
〇 |
PLL (同調) |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+14.9V |
〇 |
AUDIO SYSTEM |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.5V |
〇 |
FL 管 |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.0V |
〇 |
DIGITAL SYSTEM |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.66V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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スレレオセパレーションが低下していましたが、再調整で 20dB (10倍) 上がり、音の解像度が良い素晴らしい音になりました。
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再調整後は下のような素晴らしい性能に蘇りました。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
65 |
70 |
dB |
NARROW |
37 |
37 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.027 |
% |
stereo |
0.027 |
% |
NARROW |
mono |
0.049 |
% |
stereo |
0.049 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-73 |
-70 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.27 |
dB |
CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
376.8 |
Hz |
-4.9 |
dB |
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AM 受信
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到着時から問題はなく、[純正 AM ループアンテナ] の添付がないので、IF 調整だけ実施しました。
使ってみました
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全体的に黒基調のデザイン
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SONY デザインそのものです。
恰好イイです。
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。