SONY ST-S333ESJ (7号機) が到着
2024年2月19日、千葉県船橋市の K さんより
SONY ST-S333ESJ
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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ハードオフでジャンク品を購入しました。
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サイドウッドが剥がれていて見映えが悪かったのか3千円でした。
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値札には「受信出来ました」と書かれていました。
電源を入れて表示だけを確認して持ち帰りました。
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周波数表示が 0.1MHz ズレています。
S メータが2位までしか上がらず、感度が悪いです。
高音が割れて聞こえます。
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総合的なリペア、調整をお願いします。
予防的部品交換、ハンダクラック対策をお願いします。
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長く使いたいと思っていますのでよろしくお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [250707] で、電源コードの製造マーキングより [1993年製造品] とわかりました。
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純正ではない AM ループアンテナが添付されていました。
AM はこのアンテナでマッチングするよう調整しようと思います。
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ほぼキズやスレは見当たらず、なかなか綺麗です。
これで3千円なら超お買い得と思います。
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リアパネルの端子類は新品同様にピカピカしています。
サイドウッドは欠品しています。
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底面にある4個の脚のうち、フロント右側の脚の滑り止めシート (ゴム?) が取れてしまっています。
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設置ガタツキが出るので、ホームセンタで同じようなシートを買って処置したほうがよいです。
当方では処置しません。
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電源 ON してチェック
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問題なく電源が入り、FL の輝度は新品同様、各ボタン操作も正常です。
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FM 受信
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当方の電波レベルは 84dBf 程度ありますが、S メータは2~3レベルくらいしか振れず、明らかに感度低下しています。
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-0.1MHz の周波数ズレがあり、80.0MHz の放送が 79.9MHz で受信します。
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このズレた周波数で [STEREO] 表示が出ますが、音はやや歪っぽいです。
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AM 受信
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添付された [AM ループアンテナ] を接続してチェックし、問題なく良好に受信できました。
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感度は良く、ニッポン放送 (1242kHz) では [STEREO] 表示も出ます。
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カバーを開けてチェック
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全体的に薄っすらと綿ボコリが堆積しています。
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基板はオリナルのままと思います。
目視でわかる劣化部品は見当たりません。
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放送波で仮調整してみました。
部品が生きているかの確認が目的です。
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同調点調整の [IFT251] のコアを回したら周波数ズレが直りました。
[IFT251] は正常で再調整可能です。
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FM フロントエンド部の [CT103] トリマコンデンサを軽く叩いたら S メータがフルになりました。
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[CT103] は故障しています。
[CT101] [CT102] も一緒に交換したほうがよいです。
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[C605] 電気二重層コンデンサにサビが出ています。
もう交換時期でもあるので交換したほうがよいです。
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[C604] にタンタルコンデンサが使われていますが、これは短絡事故が多いので交換したほうがよいです。
リペア (その1):明らかに感度低下している
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原因
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主に [CT103] が故障して容量抜けしたのが原因です。
ハトメ部分が接触不良になって容量抜けするのです。
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こうなると FM の感度が低下します。
少しずつ徐々に不良になっていくので気付くのが遅れます。
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ST-S333ES シリーズでは [トリマコンデンサ] の故障が散見されます。
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修理
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[トリマコンデンサ] ×3個を一斉交換しました。
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下の写真で、黄〇で囲んだのが交換前の [トリマコンデンサ] です。
左から [CT101] [CT102] [CT103] です。

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[RF トリマコンデンサ] 交換後です。
10pF セラミックトリマコンデンサを使いました。

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修理後の動作チェック
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S メータがビュ~ンと振れるようになり、感度が蘇りました。
リペア (その2):[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] の予防交換
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交換リスト
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以下のように部品交換します。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C604 |
10uF/6.3V (タンタル) |
10uF/25V (積層セラミック) |
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| C605 |
0.1F/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
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交換
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左の写真の小さな黄〇で囲んだのが [C604] で、大きな黄〇は [C605] です。
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右の写真は [C604] [C605] 交換後です。

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解説
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電気二重層コンデンサは 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
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タンタルコンデンサは短絡事故が多い。
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使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
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タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
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半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
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換装した積層セラミックコンデンサはタンタルより ESR が低く高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
リペア (その3):ハンダクラックのチェックと修理
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ハンダクラックの状況を観察
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ST-S333ES シリーズにはハンダクラックしやすい箇所があるという持病があります。
チェックしてみました。
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左の写真はオーディオ出力端子の基板へのハンダ付け部分で、左右チャンネル全部がハンンダクラックしていました。
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黄〇で囲ったハンダ付け部に同心円状のヒビ割れが見えますが、これがハンダクラックです。
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完全なハンダクラックで、端子を揺すると一緒グラグラ揺れます。
酷い状況です。
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右の写真のように基板上に細長い銅板が何枚も走っていますが、これがアースバーです。
電源ラインにも使っていますがアースバーと呼ぶ。
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アースバーの裏側のハンダ付け部分もハンンダクラックしやすく、あちこちでハンダクラックが見られました。

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修理
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リアパネルにある [FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] [RCA 出力端子] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
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8枚ある全ての [アースバー] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
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補修ハンダ付けは、古いハンダを吸引して除去し、新しいハンダを付けるのが正しいやり方です。
リペア (その4):その他
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内部の全体的に薄っすらと綿ボコリが堆積している
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エアブロアと刷毛を使って、できる範囲で清掃しました。
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交換した部品の記念写真
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右の写真は修理前に基板に実装されていた部品です。
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左から [トリマコンデンサ] [電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] です。
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トリマコンデンサを取り外す時に足が取れてしまいました。
機構的にも劣化していたようです。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP (ジャンパー) |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 (用途) |
| JW88 |
+30V |
+30.9V |
+30.9V |
〇 |
PLL (同調) |
| JW89 |
+15V |
+16.3V |
+14.8V |
〇 |
AUDIO SYSTEM |
| JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.8V |
〇 |
FL 管 |
| JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.1V |
〇 |
DIGITAL SYSTEM |
| JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.63V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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再調整でスレレオセパレーションや高調波歪率が大きく改善し、音の解像度が良い素晴らしい音になりました。
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再調整後は下のような素晴らしい性能に蘇りました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
60 |
65 |
dB |
| NARROW |
35 |
35 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0062 |
% |
| stereo |
0.014 |
% |
| NARROW |
mono |
0.091 |
% |
| stereo |
0.091 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-70 |
-69 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.01 |
dB |
| CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
387.6 |
Hz |
| -5.9 |
dB |
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AM 受信
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添付された (純正ではない) ループアンテナで最高感度になるよう調整しました。
このアンテナとの相性は良かったです。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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ST-S333ES シリーズでよくある劣化箇所が全て故障していました。
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到着時はガタガタだった性能が、本来の素晴らしい性能に蘇ってよかったです。
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全体的にゴールド基調のデザイン
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SONY デザインそのものです。
恰好イイです。
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。