SONY ST-S333ESXⅡ (9号機) が到着
2024年3月8日、埼玉県加須市の I さんより
SONY ST-S333ESXⅡ
の修理依頼品が到着しました。
再度故障して、2026年9月7日に再入院していただきましたがトンデモナイことに。
一番最後の項にまとめました。
程度&動作チェック
-
修理依頼者からのコメント
-
最近感度にむらがあり、感度が上がったり下がったりします。
受信しますが、メータが振れません。
-
アンテナを交換しましたが現象が変わらないので、チューナの不具合かなと思います。
-
受信中に「しゅるしゅる」というノイズが入ります。
-
AM の受信感度が極端に悪いです。
-
外観
-
製造シリアル番号は [208065] で、電源コードの製造マーキングより [1988年製造品] とわかりました。
-
サイドウッドは付いていません。
[純正 AM ループアンテナ] は添付されていませんでした。
-
全体的に汚れ・キズ・スレ・ヘコミなどがありますが、正面から見たフロントパネルは綺麗です。
-
リアパネルの状態は良好です。
端子類にクスミはありますが、使用には問題なさそうです。
-
電源 ON してチェック
-
電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様で、操作ボタンの動作も正常で問題ありません。
-
FM 受信
-
当方のアンテナレベル 84dBf の環境では、S メータが振れ、[STEREO] 表示が出て、問題なく音が出ます。
-
ただし、やはり感度は下がっている感じです。
-
修理依頼者の言う [感度が上がったり下がったりする] [「しゅるしゅる」というノイズが入る] は確認できませんでした。
-
いずれも修理依頼者宅のアンテナ環境が疑わしいです。
特に後者はマルチパス妨害の現象と思われます。
-
AM 受信
-
[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので [ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
-
受信は良好で感度も良いです。
特に問題ないです。
-
修理依頼者がいう [AM の受信感度が極端に悪い] は確認できませんでした。
-
カバーを開けてチェック
-
内部は綺麗で、目視で劣化とわかる部品は見当たりません。
リペア (その1):FM の感度が下がっている
-
原因
-
FM フロントエンドのトリマコンデンサ [CT101] [CT102] [CT103] の3個とも劣化故障したためです。
-
回してみると、容量が連続的に変化せず、叩くと容量が変わります。
-
修理
-
左の写真はトリマコンデンサ交換後で、赤〇で囲んだ部品です。
-
右の写真は、交換前に基板に実装されていた故障したトリマコンデンサです。

-
トリマコンデンサ交換後に再調整して感度は倍になりました。
リペア (その2):[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] 交換
-
概要
-
メモリをバックアップする電気二重層コンデンサは製造後36年経っているので、そろそろ寿命です。
-
タンタルコンデンサは短絡事故をおこしやすいので、別の種類のコンデンサに置き換えたほうが良いです。
-
交換リスト
-
下の表のように交換します。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C604 |
10uF/6.3V (タンタルコンデンサ) |
10uF/25V (積層セラミックコンデンサ) |
タンタルよりセラミックのほうが ESR が低く優秀 |
| C605 |
39mF/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
-
交換
-
左の写真は部品交換後で、小さい赤〇で囲んだのが [C604]、大きい赤〇で囲んだのが [C605] です。
-
右の写真は、交換前に基板に実装されていた部品です。
電気二重層コンデンサは容量が増えたのに、逆に劇的に小さくなりました。
技術の進化です。

-
[C605] は [POWER] スイッチ OFF の時にプリセットメモリをバックアップします。
-
取扱説明書
の10ページにバックアップ時間は (39mF の時で) 1ヶ月と書かれています。
-
39mF → 1F と26倍の容量になったので計算上は26ヶ月になるはずです。
-
でも自己放電もあるので、実際には数ヶ月と思います。
リペア (その3):ハンダクラック予防補修
-
ハンダクラックが発生しやすい箇所
-
ST-S333ESXⅡではアースバーのハンダ付け部分でハンダクラックが発生しやすいです。
-
ST-S333ESG 以降の機種と違って、リアパネルの端子類はワイヤ接続になっているので、ここではハンダクラックしません。
-
予防補修
-
アースバーのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
これで安心して使えます。
再調整
-
電圧チェック (VP)
-
電圧の実測値は以下のように正常でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
備考 |
| JP4 |
+16V |
+15.1V |
チューナ用 |
| JP5 |
+13V |
+13.1V |
FL 管用 |
| JP6 |
+5.6V |
+5.58V |
デジタル用 (MCU) |
| JP7 |
+30V |
+31.1V |
VT 電圧用 |
| R909(R) |
-10V |
-9.92V |
コントロール用 |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
FM 受信
-
故障していたトリマコンデンサを交換したので、感度が上がりました。
-
同調点はギリギリ動作する 0.5V に近い 0.4V にズレていました。
再調整で規定内の 0V に調整できました。
-
ステレオセパレーションなどは以下のように素晴らしい数値になりました。
一級クラスの性能です。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
63 |
64 |
dB |
| NARROW |
37 |
38 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.011 |
% |
| stereo |
0.011 |
% |
| NARROW |
mono |
0.20 |
% |
| stereo |
0.20 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-72 |
-75 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
| CAL TONE |
WIDE |
mono |
301.5 |
Hz |
| -5.3 |
dB |
-
AM 受信
-
当方で標準にしている [ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] を接続して調整しました。
-
元々問題ない感度が更に向上しました。
使ってみました
-
修理&再調整が終わって
-
修理依頼者の言う不具合はほとんど確認できず、修理依頼者宅のアンテナ環境に問題がありそうです。
-
やはり ST-S333ESXⅡは優秀機です。
性能も音も良いです。
-
デザイン
-
精悍なデザインで使いやすいです。
-
後継機の
ST-S333ESG
よりシンプルなデザインですが、むしろこちらのほうが使いやすいです。
-
(C リングパネルがないので) 直接的な快適ボタン操作ができます。
-
感度と音質
-
FM の感度は抜群に良く、S/N が良いです。
細かい音がよく聴けます。
FM 放送らしい柔らかめの音質です。
-
AM の感度も抜群に良く、S/N も良いです。
AM としては音質も良く、放送を楽しめます。
再修理 (到着:2026年9月7日)
-
修理依頼者のコメント
-
メーター上ではきちんと受信はできているが、ザーというノイズだけで音声の出力がないです。
-
アンテナ線を外すとノイズはなくなります。
なお、アンテナ線を繋いでいると電源を切ってもザーというノイズは無くならないです。
-
アンプ部の故障かなとも思えますが、電源を切っても出るのが不思議です。
-
電源 ON してチェック
-
FM 受信で [S メータ] はフルに振れ [STEREO] 表示も出ますが音が出ません。
-
AM 受信で [S メータ] はフルに振れますが音が出ません。
-
[MUTING] = OFF にしても音が出ません。
[CAL TONE] = ON にしてもテスト信号が聞こえません。
-
以上より、まるで OUTPUT ラインが断線しているかのような振る舞いです。
-
FM を AUTO TUNING でチェック
-
周波数が 低い→高い 方向にスキャンさせると +0.1MHz の周波数で停止します。
-
周波数が 高い→低い 方向にスキャンさせると正しい周波数で停止します。
-
このことより、少し FM 同調点検出がズレているようです。
-
修理依頼者の言う「ザーという音」は全く確認できません。
-
電源回路の出力電圧は以下のように正常でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
備考 |
| JP4 |
+16V |
+15.3V |
チューナ用 |
| JP5 |
+13V |
+13.1V |
FL 管用 |
| JP6 |
+5.6V |
+5.59V |
デジタル用 (MCU) |
| JP7 |
+30V |
+31.3V |
VT 電圧用 |
| R909(R) |
-10V |
-10.0V |
コントロール用 |
-
調査
-
下の写真は [RCA 端子] [MPX 回路] 部分です。
-
黄色の枠で囲んだ FM ステレオ分離 MPX IC の [LA3450] が故障していました。
-
ほとんど正常なのですが、RCA 端子とつながる IC 内部の出力アンプが故障しているようです。
-
指を IC の背中に当てると火傷しそうなくらい熱いです。
この IC はここまで熱くならないはずです。
-
念のため、RCA 端子とつながっている [RCA 端子基板] [CN712 コネクタ] [アースバー] の基板パターンをチェックすると、トンデモナイ状態でした!

-
[RCA 端子基板] のパターンが赤矢印の箇所で (焼損ではなく) 蒸発やめくれ上がっていました。
全て GND パターンです。
-
パターンが蒸発するくらいですから、もの凄い大電流が通過したようです。

-
下の写真は、[CN712 コネクタ] [アースバー] の基板裏側を眺めたものです。
-
小さい赤矢印は [CN712 コネクタ] と [アースバー] のつなぎパターンが蒸発している箇所です。
どちらも GND パターンです。
-
大きい赤矢印は [アースバー] と基板の GND とのつなぎパターンが蒸発している箇所です。
当然 GND パターンです。

-
状況から RCA 端子に大電流が流れる要因「例えば、落雷がなかったか?」修理依頼者に確認
-
おそらく雷だと思われます。
食洗機、HDD 等々やられましたので。
アンプ側の異常はありません。
→もっと早く教えて欲しかった。
-
結論
-
か弱い電子機器であるチューナに雷サージの大電流が流れたらひとたまりもありません。
-
たとえ修理できても信頼性に疑問が残ります。
修理依頼者と相談して
修理不可
としました。