SONY ST-S333ESX (7号機) が到着!
2023年8月1日、埼玉県桶川市の O さんより
SONY ST-S333ESX
の修理依頼品が到着しました。
ST-S333ESX は好みの機種です。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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ハードオフにて購入しました。
修理や調整をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [20117] で、電源コードの製造マーキングより [1985年製造品] とわかりました。
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純正 AM ループアンテナが添付されていました。
左右のサイドウッドはありません。
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天板の手前で左側に目立つヘコミがあります。
[フロントパネル] [リアパネル] [底板] は綺麗です。
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リアパネルの端子類には輝きがあります。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様です。
ボタン操作に問題はなく良好です。
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FM 受信
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問題なく受信でき、ステレオになります。
オートチューニングで正しい周波数で停止します。
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特に問題なさそうなので、現状の性能値を測定してみました。
十分実用になる性能でした。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
44 |
48 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.022 |
% |
stereo |
0.022 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-54 |
-68 |
dB |
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AM 受信
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カバーを開けてチェック
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内部は非常に綺麗です。
ほんの少し綿埃がありましたが、口でフウフウするだけで完全に除去できました。
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基板上の部品に目視でわかる劣化は見られませんでした。
リペア:[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] 交換
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概要
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プリセットメモリをバックアップする電気二重層コンデンサは製造後39年経っているので、そろそろ寿命です。
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タンタルコンデンサは短絡事故をおこしやすいので、別の種類のコンデンサに置き換えたほうが良いです。
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交換リスト
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タンタルコンデンサより積層セラミックコンデンサのほうが ESR が低く優秀です。
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
C601 |
39mF/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
C613 |
10uF/16V (タンタル) |
10uF/25V (積セラ) |
積層セラミックコンデンサに交換 |
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交換
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左の写真は交換後の [C601] で、右の写真は交換後の [C613] です。
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右の写真は、交換前に基板に実装されていた [C601] [C613] です。
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交換前の電気二重層コンデンサは 39mF の容量しかないのに大きいです。
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白亜紀の代物なので交換したほうが幸せになれます。
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交換に使った電気二重層コンデンサは上の左の写真でわかるように小型です。
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電気二重層コンデンサで電源 OFF の時にプリセットメモリをバックアップします。
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バックアップ時間はオリジナルの 39mF の時で1ヶ月です。
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39mF → 1F と26倍の容量になったので計算上は26ヶ月になるはずです。
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でも自己放電もあるので、実際には数ヶ月と思います。
再調整
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電圧チェック (VP)
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電圧の実測値は以下のように正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
備考 |
JW174 |
+15V |
+15.3V |
チューナ用 |
JW122 |
+15V |
+15.6V |
FL 管用 |
JW169 |
+5.6V |
+5.60V |
デジタル用 (MCU) |
JW92 |
+30V |
+30.6V |
VT 電圧用 |
D907-A |
-6V |
-5.63V |
コントロール用 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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やや同調点ズレがありましたが、再調整で規定内に入りました。
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FM フロントエンドでトラッキングズレがありましたが、再調整で規定内に入りました。
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PLL 検波で少しズレがありましたが、再調整で規定内に入りました。
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ステレオセパレーションや高調波歪率は到着時より向上し、以下のように素晴らしい性能になりました。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
66 |
dB |
NARROW |
34 |
34 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.004 |
% |
stereo |
0.004 |
% |
NARROW |
mono |
0.34 |
% |
stereo |
0.34 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-79 |
-77 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
-6.0 |
dB |
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AM 受信
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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いわゆる修理が必要な故障はなく、寿命が心配な部品を交換しただけで済みました。
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本機は当たり!の個体と思われ素晴らしい性能に蘇りました。
音も最上級です。
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残念な天板のヘコミは、この上に百均で売っているランチョンマットを敷くと見えなくなりますよ。
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周波数コンバータ
を製作するとワイド FM も受信できますよ。
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デザイン
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パネルやボタンなどの機構部は贅沢な作りで、高級感があります。
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シンセサイザ機では不要と思う同調ノブがなく、スッキリしたデザインです。
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プリセットできるので普段はプリセット受信しますよね。
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そうすると同調ノブを使うことがないのです。
単なる飾りになっています。
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この機種の押しボタン機構は豪華な作りでお金がかかっています。
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ST-S333ESG 以降の機種ではコストダウンされてチープな作りです。
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FM アンテナ端子は本格的な F 端子になっていて、妨害電波の混入を防げます。
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感度と音質
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FM は、感度・S/N・解像度とも良く、細かい音がよく聴こえます。
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AM は、感度が良く、音も (AM としては) 良いです。
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ST-S333ESG 以降の機種より ST-S333ESX のほうが信頼性では上の気がします
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ST-S333ESG 以降の機種では問題になるパワートランジスタの発熱で基板のパターンが剥がれる心配がありません。
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ST-S333ESG 以降の機種では放熱器が付いていないパワートランスタは手で触れないくらい熱くなります。
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ST-S333ESX では同じパワートランジタを手で触っても暖かいなと感じる程度です。
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他にも ST-S333ESG 以降の機種より優れている箇所があります。
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リアパネルの端子類とは電線による配線なので、この部分でハンダクラックが発生することはないです。
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アースバーがないので、この部分でハンダクラックが発生することはないです。
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FL 表示器のグレードが高く超寿命です。