SONY ST-SA50ES (5号機) が到着
2023年9月11日、東京都江東区の I さんより
SONY ST-SA50ES
の修理依頼品が到着しました。
ルックスの良いチューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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1998年1月4日に購入し現在まで使用しておりましたが、故障してしまいました。
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先日、FM 受信していたら、突然全く受信しなくなり(サー音)、しばらくす る と正常に受信できることを繰り返す現象が出ました。
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それから、一週間経過し、電源を入れると5分間くらいは正常に受信するが、また 突然全く受信しなくなる(サー音)現象が出ます。
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AM は正常に受信できています。
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外観
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製造シリアル番号は [200277] で、電源コードの製造マーキングより [1997年製造品] と判明しました。
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[純正 AM ループアンテナ] が添付されていました。
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[フロントパネル] [リアパネル] とも綺麗です。
天板には汚れがあります。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、ノブやボタンは正常に反応します。
FL 表示器の輝度はやや痩せていますが、まだまだ使えるレベルです。
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FM はオートサーチで正しい周波数で停止し、[STEREO] 表示が出て、音も綺麗に出ます。
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AM もオートサーチで正しい周波数で停止し、[STEREO] 表示が出て、音も綺麗に出ます。
関東でステレオ AM 放送しているのはニッポン放送 (1242kHz) だけです。
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FM 放送を聴いていたら、突然バリッという雑音が出てホワイトノイズだけ (局間ノイズ) になり、受信できなくなりました。
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放置していたら勝手に直りましたが、しばらくするとまた再現します。
これの繰り返しです。
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カバーを開けてチェック
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内部および基板は綺麗です。
目視で劣化がわかるような部品は見当たりません。
リペア:FM でホワイトノイズだけ (局間ノイズ) になり受信できない
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現象が出ている時にチェック
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本機の周りを歩いたり、筐体を叩くと直ることがあります。
要は本機に振動が加わると直ることがあるということです。
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音が出ない時の雑音は局間ノイズそのものですから、FM OSC 発振が停止している臭いです。
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おそらく、FM フロントエンドが故障しています。
OSC 発振の辺りでハンダクラックしている可能性が高いです。
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FM フロントエンドを基板から取り外し
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取り外しには [配線ピン×20本のハンダ付け] [ケースのハンダ付け×5箇所] のハンダを吸い取る必要があって、かなりの手間でした。
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下の写真は取り外した FM フロントエンドの金属カバーを外して撮影したものです。
写真をクリックすると大きな画像を表示できます。
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フロントエンド基板の裏側で米粒くらいのトランジスタなどが実装されており、部品交換は難しいです。
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FM OSC 発振部はロウ漬けされた緑色のコイルがあるシールド枠内です。
大きな IC がある枠の左隣にある、縦に長細い枠です。

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通常、ST-SA50ES の場合、FM フロントエンド故障と判明した時点で [修理不可] 判定しています
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極小の面付部品で作られており、ほぼ部品交換できないためです。
メーカ修理ではフロントエンドごと交換でしょう。
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今回は部品故障ではなくハンダクラックと思われたため、修理に挑戦してみました。
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FM フロントエンド裏側のハンダ付け部分をルーペで念入りにチェック
ありました! ハンダクラックが!!!
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左の写真の矢印の先です。
左の写真から時計回りに45度くらい回転させて、その部分を拡大したのが右の写真です。
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右の写真で丸くひび割れしているのが
ハンダクラック
です。
クラックして導通が不安定になっています。

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ハンダクラックしているパターンは OSC 発振用トランジスタのコレクタにつながっています。
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クラック部分が導通している時は (正常状態なので) OSC 発振し、断線した時は OSC 発振が停止していたのです。
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OSC 発振が停止すると、FM 受信できなくなって局間ノイズだけになります。
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現象との辻褄が合います。
故障原因は、このハンダクラックに間違いないです。
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FM フロントエンドの修理
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ハンダクラックしている部分を補修ハンダ付けしました。
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修理した FM フロントエンドを基板に再取付して動作チェック
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FM が安定的に受信できるようになりました。
見事! 直りました!!!
再調整
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電圧チェック (VP)
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ジャンパーで測定します。
電圧の実測値は以下のように正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
備考 |
JW035 |
+13V |
+13.2V |
チューナ用 |
JW034 |
+5.6V |
+5.62V |
デジタル用 (MCU) |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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ステレオセパレーションなどは以下となりました。
良好な数値です。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
60 |
59 |
dB |
NARROW |
60 |
57 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.099 |
% |
stereo |
0.099 |
% |
NARROW |
mono |
0.18 |
% |
stereo |
0.30 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-67 |
-68 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
-0.03 |
dB |
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AM 受信
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添付された [純正 AM ループアンテナ] で最高感度になるよう調整しました。
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若干感度が落ちていましたが、再調整で直りました。
使ってみました
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全体的にゴールド基調でなかなか優れたデザイン
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ともかく格好イイです。
さすが SONY です。
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RCA 端子も金メッキされており高級感あります。
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リアパネルや内部のネジは銅メッキされています。
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FM 電波入力レベルを正確に dB 表示できます。
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プリセットメモリは30局分あり、十分です。
放送局名を英数カナ文字で記憶&表示することができます。
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FM 受信
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良好な感度と十分な妨害電波排除能力があります。
クォードラチュア検波特有のソフトな音で、低音に厚みを感じます。
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AM 受信
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感度は良く、AM なりの音質で受信できます。
本機は AM stereo 対応ですが、ほとんどの放送が終わってしまったのが残念です。