SONY ST-SA5ES (3号機) をゲット!
2011年1月19日、ヤフオクで
SONY ST-SA5ES
の故障品を落札しました。
故障と聞くとどうしても欲しくなるのは、たぶん
病気
でしょう。
2011年に修理&再調整したのですが13年経ったので、2024年10月に部品の予防交換と再調整をしました。
程度&動作チェック
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出品者のコメント
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電源は入るような音はしますが、ディスプレイしないので確認できません。
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本体のみです。
天板や正面に小キズはありますが、綺麗なほうと思います。
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外観
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製造シリアル番号は [250092] で、電源コードの製造マーキングより [1994年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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フロントパネルの左下エッジに少しキズはありますが、それ以外にキズはありません。
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フロントパネルの折り返しで天板側にムラがあります。
天板に擦れ汚れがあります。
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リアパネル, 側板, 底板はいずれも綺麗で問題ありません。
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[天板、側板の取り付けネジ]×14本にサビ、[リアパネルの銅メッキネジ]×10本にくすみが出ています。
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電源 ON してチェック
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電源スイッチを入れても内部のリレー音が聞こえるだけで、FL 表示が出ず全く動作しません。
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これ以上チェックしようがありません。
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カバーを開けてチェック
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いじられた形跡はなく、目視では特に問題なさそうに思いました。
リペア (その1):FL 表示が出ず全く動作しない
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調査と原因
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まずは電源回路の出力電圧チェックをしました。
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筐体 (GND)~電圧ポイント間の電圧をチェックするも、全く電圧がありません。
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左側で [MPX~CONTROL 間のアースバー] を GND にして電圧ポイントの電圧をチェックすると正常な電圧が出ています。
これは GND 系統がオカシイと言う事です。
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左側で [MPX~CONTROL 間のアースバー] を基点にして、各アースバーの導通チェックをすると、[WOIS~DET 間のアースバー] [MPX~POWER SUPPLY 間のアースバー] の導通がありません。
これ以外のアースバーでは導通があります。
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調査結果から [アースバーが半田クラックしている] のが原因です。
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修理
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全部の [アースバー] のハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
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ついでに、[FM ANTENNA (A/B)] [AM ANTENNA] [OUTPUT] 端子のリードのハンダ付け部分も補修ハンダ付けしました。
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修理後の動作確認
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FL 表示が出て正常に動作するようになりました。
FL 表示の輝度も新品同様です。
直りました!!!
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直ったのですが、FM の感度が非常に悪いです。
リペア (その2):FM の感度が非常に悪い
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調査と原因
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FM フロントエンドの [CT101] [CT102] [CT103] の RF 系トリマコンデンサを調整すると感度は一旦上がりますが、しばらくすると感度低下します。
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再度トリマコンデンサを調整すると感度は一旦上がりますが、またしばらくすると感度低下します。
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これの繰り返しです。
原因はトリマコンデンサの故障です。
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修理
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左の写真は [CT101] [CT102] [CT103] を 10pF トリマコンデンサに交換後です。
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右の写真は元の劣化したトリマコンデンサです。
ハトメのような接触部がサビて接触不良を起こすのです。

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修理後の動作確認
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FM の受信感度が上がり、ロングランしてみても低下することはありません。
直りました!!!
リペア (その3):[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] 予防交換
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概要
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[電気二重層コンデンサ] は電源消失時にプリセットメモリの記憶を一定期間保持します。
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[電気二重層コンデンサ] には寿命があるので予防交換しますが、ついでに [タンタルコンデンサ] も交換します。
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[タンタルコンデンサ] は短絡事故が多く、別の種類のコンデンサに交換すると幸せになります。
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使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
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タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
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半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
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換装する積層セラミックコンデンサはタンタルより ESR が低く高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
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修理 (予防交換)
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交換リスト
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
C437 |
10uF/6.3V (タンタル) |
10uF/25V (積層セラミック) |
|
C604 |
10uF/6.3V (タンタル) |
10uF/25V (積層セラミック) |
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C605 |
0.1F/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
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左の写真は交換後です。
大きな黄〇が [C605]、その下が [C604] です。
残る1つは [C437] です。
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右の写真は交換前に基板に実装されていた [C605] [C604] [C437] です。

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電気二重層コンデンサは 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月プリセットメモリを保持できるかも?
リペア (その4):外観の手直し
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[天板、側板の取り付けネジ (全部で14本) ] にサビがある
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[バインド 3×6 ネジ] と交換しました。
写真の上が純正ネジ、下が購入したネジです。
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リアパネルに見える銅メッキされたネジを内部の綺麗なネジと交換しました。
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清掃
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全体のゴミを排除してから OA クリーナにてクリーニングしました。
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完全には綺麗になりませんでしたが、並みの中古の外観に戻りました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
13年ぶりに測ってほぼズレていませんでした。
VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+30.9V |
〇 |
VT 電源 |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+14.9V |
〇 |
アナログ系 |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.5V |
〇 |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.1V |
〇 |
デジタル系 |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.59V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整
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FM 受信部
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13年ぶりの再調整で・・・
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同調点調整がかなりズレていました。
WOIS (IF 歪補正) 調整が少しズレていました。
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やはり10年を目安とした定期的な再調整は必要と思います。
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感度や音質がグ~ンと上がり、ST-SA5ES 本来の艶っぽい音が蘇りました。
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再調整結果は以下です。
問題なく良好な数値です。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
55 |
58 |
dB |
NARROW |
34 |
33 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.015 |
% |
stereo |
0.027 |
% |
NARROW |
mono |
0.14 |
% |
stereo |
0.14 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-72 |
-75 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
-5.1 |
dB |
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AM 受信部
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手持ちの [ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] で最高感度になるように調整しました。
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AM stereo 放送は消滅したので、この調整はやっていません。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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最初の調整から13年経って再度調整しましたが、やはり少しズレが発生していました。
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同調点電圧は正しくは 0V で、誤動作し始めるのが 450mV くらいです。
これが13年で 300mV 程度になっていました。
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もう5~6年くらいは持ちそうな気がしますが、やはり 1回/10年 程度の再調整をすると安心と言えます。
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再々調整により、本来の素晴らしい性能になっています。
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ワイド FM 対応クリコン
を製作すればワイド FM 受信ができます。
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ST-SA5ES はアンテナ端子が2つあるので、ワイド FM 受信に便利です。
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現在の AM 放送は2028年にほぼ消滅するので今から準備するのが吉です。
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手持ちの [RM-J301] 専用リモコンでの操作も良好でした。
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デザイン
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素晴らしい精悍なデザインで高級感あります。
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サイドウッドの代わりにアルミ製のサイドパネルがあって、これがイイです。
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(C リングパネルがないので) 直接的で軽快なボタン操作ができます。
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感度と音質
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FM の感度は抜群に良く、S/N が良いです。
細かい音がよく聴けます。
艶っぽい音がします。
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AM の感度も抜群に良く、S/N も良いです。
AM としては音質も良く、放送を楽しめます。