SONY ST-SA5ES (6号機) が到着!
2023年12月3日、山梨県都留市の K さんより
SONY ST-SA5ES
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者からのコメント
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数年前知人から譲られた SONY ST-SA5ES です。
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周波数のズレがあったので港北ネットワークサービスでメンテンスしてもらいました。
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調整のみで直り、他に悪い所はなく立派な音になり使用しておりました。
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数日前、突然音が割れるようになりました。
特に低音が出ると全体にバリバリという音になります。
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外観
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製造シリアル番号は [201568] で、電源コードの製造マーキングより [1996年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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電源コードを短く切ってプラグが交換されています。
動作に問題はありません。
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正面から見ると非常に綺麗ですが、天板や側板に小傷・スレなどがあります。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様です。
ボタン操作に問題はなく良好です。
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FM 受信
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-0.1MHz の周波数ズレがあります。
80Mz の放送を 79.9MHz で受信しないと [STEREO] 表示が出ません。
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音は正常で、修理依頼者の言う [音が割れる] [低音が出ると全体にバリバリ音になる] は確認できませんでした。
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AM 受信
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ちゃんと受信して音も出ます。
ニッポン放送 (1242kHz) では AM STEREO で受信できます。
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カバーを開けてチェック
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内部の基板は非常に綺麗です。
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電解コンデンサの膨張や液漏れは見られません。
まだ大丈夫と思います。
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FM 同調点調整の [IFT251] のコアを回してみると S カーブが出て調整可能でした。
リペア
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-0.1MHz の周波数ズレがある
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同調点検出用の [IFT251] を再調整して直りました。
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この機種は同調点ズレがあると [S メータ] の振れが少なくなりますが、再調整後は正常な振れになりました。
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更に FM フロントエンドのトラッキングを再調整したので、少し感度が上がりました。
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ハンダクラック対策
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リアパネルの端子類
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どうしても端子のリードと基板の間で機械的なタワミを原因とするハンダクラックが発生しやすいのです。
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[RCA 端子] [FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] のリード〜基板の部分に補修ハンダ付けしました。
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ST-SA5ES には銅製のアースバーが敷かれています。
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これはこれで素晴らしいのですが、経年変化でアースバーでハンダクラックが発生しやすいのです。
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左の写真で細長い銅板がアースバーです。
筆者はアースバーと呼んでいますが、実際には電源ラインもあります。
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基板の裏側でアースバーのハンダ付け部分を見ると、右の写真のように見事にクラックしていました。
これが何か所もありました。
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全てのアースバー〜基板の部分に補修ハンダ付けしました。
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[タンタルコンデンサ] [電気二重層コンデンサ] の予防交換
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左の写真の小さな赤〇で囲んだ [C603] 10uF/6V タンタルコンデンサを右の写真の 10uF/25V 積層セラミックコンデンサに交換しました。
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左の写真の大きな赤〇で囲んだ [C605] 0.1F/5.5V を右の写真の 1F/5.5V に交換しました。
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タンタルコンデンサは短絡事故が多いです。
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使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
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タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
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半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
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換装した積層セラミックコンデンサはタンタルより高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
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電気二重層コンデンサは 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように正常でした。
VP |
表示電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+30.5V |
〇 |
PLL |
JW89 |
+15V |
+15.0V |
〇 |
AUDIO |
JW145 |
-17V |
-17.2V |
〇 |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.1V |
〇 |
DIGITAL |
JW220 |
+5V |
+5.62V |
〇 |
DIGITAL |
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FM/AM 受信部の調整
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再調整結果
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FM 受信部
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ステレオセパレーションや高調波歪率などは以下のように素晴らしく良好になりました。
項目 |
IF BAND |
stero/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
69 |
70 |
dB |
NARROW |
35 |
39 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.012 |
% |
stereo |
0.012 |
% |
NARROW |
mono |
0.12 |
% |
stereo |
0.41 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-70 |
-72 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.01 |
dB |
CAL TONE |
WIDE |
mono |
419.9 |
Hz |
-5.4 |
dB |
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AM 受信部
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AM は手持ちの [ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] で最高性能になるよう調整しました。
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AM の場合はループアンテナも同調回路の一部なので、純正アンテナ以外で使うと感度が落ちます。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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修理依頼者の言う [音が割れる] [低音が出ると全体にバリバリ音になる] は確認できませんでした。
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再調整後の性能値は優秀でです。
修理依頼者の受信環境に問題があるのではと思われます。
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おそらく、アンテナの劣化でマルチパス歪が発生しているのでは?
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今回、周波数ズレがあり、これは再調整で直ったので多少改善するかもしれません。
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デザイン
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素晴らしい精悍なデザインで高級感あります。
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サイドウッドの代わりにアルミ製のサイドパネルがあって、これがイイです。
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(C リングパネルがないので) 直接的で軽快なボタン操作ができます。
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感度と音質
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FM の感度は抜群に良く、S/N が良いです。
細かい音がよく聴けます。
艶っぽい音がします。
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AM の感度も抜群に良く、S/N も良いです。
AM としては音質も良く、放送を楽しめます。