Technics ST-9030T

Technics ST-9030T が到着

2010年9月22日、M さんから Technics ST-9030T の修理依頼品が到着しました。

高級 FM 専用機 です。



程度&動作チェック

  1. 外観

  2. やって来た状態のまま電源 ON してチェックしました

  3. カバーを開けてみて判ったことですが、この ST-9030T は誰かがあちこちの調整点をいじった形跡があります



カバーを開けてみました

  1. 基板の作りは良いです。 写真をクリックすると拡大写真を表示します。

  2. 構成



リペア

  1. 全く受信できない

    1. 故障部位の切り分け

      • IF 部に 10.7MHz の FM 変調信号を直接入れてみたら、ちゃんと音が出てステレオにもなります。

      • と言う事はフロントエントが故障していることになります。

      • フロントエンドの RF 部をオシロスコープで順に調べましたが異常なし。

      • OSC 発信周波数が異常に高い → OSC 部の故障。

    2. フロントエンドの OSC 部の修理

      • OSC 発信用トランジスタ 2SC1674 を手持ちの同一品と交換 → 発信波形がシッカリしたが現象変わらず。

      • 虫メガネで OSC 部をジックリ観察すると、OSC トリマのリード接続で半田クラックを発見 → 手直し → 直った!!!

  2. リアパネルの端子に薄っすらとしたサビがある



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント

  2. 電源電圧チェックポイント (VP)

    VP 標準電圧 実測電圧 判定
    TR801-E +12.7V (未測定) -
    TR802-E +12.7V (未測定) -
    TR803-E -12.7V (未測定) -

  3. FM 受信部の調整

    手順 SSG出力 ST-9030T の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - mpx hi-blend : off
    servo tuning : off
    IF select : auto
    OUTPUT LEVEL : 最大
    - -  
    2 OFF - T102
    緑コア
    TP101 = 0±10mV wide null 仮調整
    3 T201
    緑コア
    TP201 = 0±10mV narrow null 仮調整
    4 78MHz 90dB
    無変調
    指針を 78MHz に合わせる L8 TP201 = 0±10mV OSC トラッキング調整
    ダイヤルスケールと指針を
    合わせるのが目的
    5 88MHz 90dB
    無変調
    指針を 88MHz に合わせる CT8
    6 手順4〜5を数回繰り返す
    7 78MHz 40dB
    無変調
    78MHz 受信 L1
    L2
    L3
    L4
    L5
    L6
    L7
    S メータ = 最大 RF トラッキング調整
    8 88MHz 40dB
    無変調
    88MHz 受信 CT1
    CT2
    CT3
    CT4
    CT5
    CT6
    CT7
    9 手順7〜8を数回繰り返す
    10 83MHz 40dB
    無変調
    83MHz 受信 T1 S メータ = 最大 IF 調整
    11 83MHz 90dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信 T102
    橙コア
    オーディオ出力 = 高調波歪率最小 wide 検波調整
    12 T102
    緑コア
    TP101 = 0±10mV
    13 手順11〜12を数回繰り返す
    14 83MHz 90dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信 VR504 オーディオ出力 = 1.4Vrms wide 出力レベル調整
    15 - TP302〜TP303 を短絡  
    16 83MHz 90dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信 T201
    橙コア
    オーディオ出力 = 高調波歪率最小 narrow 検波調整
    17 T201
    緑コア
    TP201 = 0±10mV
    18 手順16〜17を数回繰り返す
    19 83MHz 90dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信 VR503 オーディオ出力 = 1.4Vrms narrow 出力レベル調整
    20 - TP302〜TP303 を開放  
    21 83MHz 90dB
    無変調
    83MHz 受信
    servo tuning : auto
    T202
    T203
    TP102 = 最大 ミューティング IF 調整
    22 OFF VR401
    VR402
    VR401 と VR402 を時計回りに回し切る ミューティングレベル調整
    23 VR402 VR402 を半時計方向に回し
    オーディオ信号 OFF となったら
    回すのを止める
    24 83MHz 16dB
    mono 1kHz
    VR401 VR401 を半時計回りに回し切ってから
    VR401 を時計方向に回し
    オーディオ信号 ON となったら
    回すのを止める
    25 83MHz 100dB
    無変調
    83MHz 受信 VR501 S メータ = 4.7 S メータ調整
    26 83MHz 90dB
    無変調
    83MHz 受信
    servo tuning : auto
    VR602 TP601 = 19kHz
    周波数カウンタで測定
    VCO 調整
    27 83MHz 90dB
    stereo 1kHz L+R
    - オーディオ出力 (R) = 記録 stereo オーディオ出力調整
    28 VR702 オーディオ出力 (L) = 手順27と同一
    29 83MHz 90dB
    stereo 1kHz L-R
    L602 オーディオ出力 = 最大 SUB 調整
    30 83MHz 90dB
    stereo 1kHz L+R
    VR601
    L601
    オーディオ出力 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    31 CT701 オーディオ出力 = 38kHz 成分最小 サブキャリア (38kHz)
    キャンセル調整
    32 T1 オーディオ出力 = 高調波歪最小 wide stereo 歪補正
    33 83MHz 90dB
    stereo 1kHz L/R
    83MHz 受信 VR701 オーディオ出力 (R/L) = 最小 wide セパレーション調整
    34 TP302〜TP303 を短絡 narrow セパレーション調整
    35 83MHz 受信 VR703 オーディオ出力 (R/L) = 最小
    36 TP302〜TP303 を開放
    37 83MHz 31dB
    stero 1kHz L
    83MHz 受信
    mpx hi-blend : auto
    VR502 VR502 を時計回りに回し切ってから
    VR502 を半時計方向に回し
    R ch. OFF となったら回すのを止める
    オートハイブレンド調整
    38 83MHz 90dB
    無変調
    TP101 に 200kHz 20〜30mV サイン波を入力する オート IF 調整
    39 83MHz 受信 T302 D302 アノード側電圧 = 最大
    40 TP101 に 300kHz 20〜30mV サイン波を入力する
    41 83MHz 受信 T301 D302 アノード側電圧 = 最大

  4. 調整結果

    1. トラッキング調整の結果は以下です。 ダイヤルスケールと実際の受信周波数がほぼ一致する優秀な性能です。

      周波数 (MHz) 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90
      スケールの読み 76.00 77.00 78.00 79.00 80.01 81.01 82.02 83.04 84.02 85.00 85.99 86.98 87.98 88.99 90.00

    2. FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。 問題ない数値です。

      項目 IF select L R 単位
      ステレオセパレーション (1kHz) wide 52 52 dB
      narrow 42 43 dB
      パイロット信号キャリアリーク wide -82 -82 dB
      オーディオ出力レベル偏差 (MONO) 0 0 dB



使ってみました

  1. 全体の印象

  2. 機能関連

  3. 高感度で高音質



仕様ほか

  1. ドキュメント

  2. 仕様

    項目 仕様
    受信周波数範囲 76.0〜90.0MHz
    実用感度 (75Ω) 1.2uV /12.8dBf (新 IHF)
    歪率 mono : 0.08% (wide) / 0.15% (narrow)
    stereo : 0.08% (wide) / 0.3% (narrow)
    S/N 比 (IHF) mono : 80dB
    周波数特性 20Hz〜18kHz +0.1 -0.5dB
    選択度 wide : 25dB
    narrow : 90dB
    キャプチャーレシオ wide : 0.8B
    narrow : 2.0dB
    イメージ妨害比 135dB (83MHz)
    IF 妨害比 135dB (83MHz)
    スプリアス妨害比 135dB (83MHz)
    AM 抑圧比 58dB
    ステレオセパレーション wide : 50dB (1kHz), 40dB (10kHz)
    narrow : 40dB (1kHz), 30dB (10kHz)
    リークキャリア -65dB
    アンテナインピーダンス 75Ω不平衡型
    出力レベル Variable : 0〜1.5V
    Fixed : 0.7V
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力 20W
    外形寸法 450(W)×92(H)×370(D)mm
    重量 7kg
    その他  
    発売時期 1976年
    定価 80,000円