Technics ST-9030T (7号機) をゲット!
2023年12月18日、埼玉県入間市の H さんから
Technics ST-9030T
を研究用に寄贈いただきました。
写真は照明 LED 化後です。
野暮ったい電球色から、スッキリとした現代的なクリーム色とホワイト色に変わりました。
高級 FM 専用機
です。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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今回、チューナを新たに1台導入したことで、本機が追い出される事になりました。
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[servo tuning] スイッチ ON にして暫くすると [wide] [stereo] ランプが点滅し始めます。
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合わせて内部よりカチッカチッと音が聴こえてきます。
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[servo tuning] スイッチ OFF にすれば問題ないようです。
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外観は年式相応です。
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外観
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製造シリアル番号は [AJ6K06A075G] で、電源コードの製造マーキングより [1976年製造品] とわかりました。
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フロントパネルは正面からパッと見は綺麗に見えますが、最上部のエッジ部分にポツポツとしたアルマイトハゲがあります。
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[天板] [側板] [リアパネル] [底板] は問題なく、半世紀ビンテージ品としては綺麗です。
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電源 OFF の状態で [T メータ] の針が左側にズレています。
メータ内部の調整が必要です。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に ON しました。
照明のランプ切れはないですが、やや暗い感じがします。
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[S メータ] [T メータ] の動きはほぼ正常で、ステレオ感のある良い音が出ました。
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電源 ON 直後は [wide] [stereo] ランプが点滅することがありました。
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ずっと通電していると、この現象が消えました。
内部が暖まると直るようです。
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[tuning] ノブ操作で [T メータ] の動きは左右対称になっておらず、同調点の調整ズレが原因でしょう。
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[tuning] ノブを操作すると僅かにガサゴソ雑音が出ます。
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[mpx hi-blend] [servo tuning] [IF select] スイッチの動きが少し重いです。
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カバーを開けてチェック
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薄っすらとした煤状の汚れはありますが、内部はかなり綺麗です。
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[wide] [stereo] ランプは交換されています。
ダイヤル照明ランプも交換されているかもしれません。
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[IFT] [ボリューム] などに調整された形跡があります。
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IC やトランジスタの足は黒ずんでおらず、
マイグレーション
の発生はなさそうです。
リペア (その1):照明ランプなどが暗い
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フィラメントランプ → LED 化
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フィラメントランプは寿命が短いです。
そこで長寿命の LED にします。
使った LED は以下です。
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左の FUSE 型 LED はダイヤルとメータの照明に使います。
全部で5個使います。
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1個で [6000K 白色 LED]×9個分搭載しています。
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右砲弾型 LED は [wide] [stereo] 表示に使います。
全部で2個使います。
5mm 白色、10000mcd、照射角 60°です。

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[フィラメントランプ]→[LED] への回路
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[ダイヤル+メータ] のランプは AC 駆動でしたが、LED は DC 駆動する必要があります。
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ST-9030T に既にある -20V 電源を使って LED を駆動します。
負電源を使うのは電流に余裕があるからです。
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この回路では LED×5本に 47mA 流れるので、LED 1個あたり 9.4mA です。
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電流制限抵抗270Ωは、元 stereo ランプ回路に使われていた R618 を流用しました。
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[wide] のランプは DC 駆動なので、R327 の電流制限抵抗を変更して LED と置き換えました。
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[stereo] のランプは DC 駆動なので、R618 の電流制限抵抗を変更して LED と置き換えました。
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これだけだと、[stereo] ランプ駆動回路の漏れ電流でステレオでない時も薄っすらと点灯してしまいます。
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LED は VF 電圧を超えると微弱な電流でも光ってしまうのです。
ある意味、フィラメントランプより感度が高い。
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対策として 1kΩ の電圧制限抵抗を入れました。
漏れ電流があっても VF 電圧以下にする。

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LED 化により消費電力が大きく減ってエコになりました。
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フィラメントランプの時は 6.3V×250mA×5個+6.3V×40mA×2個=8.4W 消費していました。
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LED 化後の照明での消費電力は 1W 以下になりました。
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すなわち、8.4W→1W となり、明るくなったのに 7.4W もエコになったのです。
リペア (その2):[T メータ] の針が左側にズレている
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[T メータ] の分解
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[T メータ] 表面の左右にあるネジを外すと、左の写真のように透明カバーを外せます。
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右の写真で赤→で示したレバーを動かすと、針の位置を調節できるはずですが ・・・
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なぜかわかりませんが、前回修理した誰かがネジロック剤でレバーが動かないよう固定しています。
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横方向に赤のペイントのように見えるのがネジロック剤です。
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これだけ大盛に塗りたくっているとレバーが動きません。
困った!!!

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頑張ってネジロック剤を除去してレバーを調整
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まずはアセトンを使ってネジロック剤を溶かして除去しました。
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精密部分なので細心の注意が必要で、1時間ほどかかりました。
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次にほんの少し潤滑剤を塗布したら、やっとレバーが動くようになりました。
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レバーを調整して針がセンタを指すよう再調整しました。
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これで十分です。
ネジロック剤塗布は不要なので、このまま組み立てました。
リペア (その3):[tuning] ノブを操作すると僅かにガサゴソ雑音が出る
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原因
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バリコン軸の接触不良です。
古いチューナではよくある不具合です。
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修理
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本機は半世紀物ビンテージです。
バリコン軸の接触回復は必須です。
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
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[1]~[2] を何度も何度も繰り返します。
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仕上げに、軸受けに
CRC 5-56
を塗布して防錆処置します。
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8連バリコンなので、結構手間がかかりましたが、以上で回復しました。
もう [tuning] ノブを操作でガサゴソ雑音は出ません。
リペア (その4):その他
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電源 ON 直後は [wide] [stereo] ランプが点滅することがある
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後述の再調整で直りました。
[tuning] ノブ操作での [T メータ] の動きもほぼ左右対称になりました。
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フロントパネル最上部のエッジ部分にポツポツとしたアルマイトハゲがある
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ハゲというよりキズなので直せません。
やむを得ないので、黒のマジックインクで補修塗りして目立たなくなりました。
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内部に薄っすらとした煤状の汚れがある
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[mpx hi-blend] [servo tuning] [IF select] スイッチの動きが重い
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好です。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| TR801-E |
+12.7V |
+12.4V |
〇 |
| TR802-E |
+12.7V |
+12.4V |
〇 |
| TR803-E |
-12.7V |
-12.7V |
〇 |
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FM 受信部の調整
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調整結果
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フロントエンドの RF トラッキング調整ズレがありました。
再調整にて感度が上がりました。
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本機は wide/narrow でレシオ検波が別々となっており、どちらも大きく調整ズレしていました。
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[muting レベル] [auto hi-blend レベル] はデタラメでした。
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経年変化ではなく、前回の誰かの調整ミスと思います。
全て修正調整しました。
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ステレオセパレーションなどは以下となりました。
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セパレーションはもう少し欲しいですが、使用には問題ありません。
高調波歪率は良いです。
| 項目 |
IF select |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
wide |
stereo |
47 |
46 |
dB |
| narrow |
43 |
41 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
wide |
mono |
0.028 |
% |
| stereo |
0.028 |
% |
| narrow |
mono |
0.19 |
% |
| stereo |
0.19 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
wide |
stereo |
-79 |
-86 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
wide |
mono |
0 |
-0.70 |
dB |
使ってみました
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デザイン
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鉄の塊のようなチューナで、ズッシリ重いです。
そして頑丈な作りです。
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照明を LED 化したので、ダイヤル面は見やすいクリーム色になり、素敵です。
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設計者が本来目指したであろう色調になったと思います。
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ダイヤルとのズレも少なく、高精度のバリコンを使っています。
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チューニングノブは重量感と質感があり、操作性も良好です。
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FM アンテナ入力は F 端子なので、雑音電波が混入しないです。
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リアパネルにある [output level] ノブで出力レベルを可変できます。
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高感度で高音質
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豪華な作りで妨害排除能力が高く、S/N が非常に良く、結果的に高感度になっています。
スペック以上の受信能力があります。
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音のエネルギーが低域から高域までスッキリ伸びており、かなりの高音質です。