Technics ST-S6 が到着
2026年2月22日、秋田市の S さんより
Technics ST-S6
の修理依頼品が到着しました。
周波数表示は変更できるものの全く動作していない状態でした。
さてさて・・・
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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若い頃に購入したものです。
突然故障してしまいました。
修理お願いします。
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電源は入りますが音声が出ません。
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周波数のデジタル表示はするのですがシグナルインジケーターは表示しません。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [AE1413A326] で、電源コードの製造マーキングより [1981年製造品] とわかりました。
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ビックリするくらい綺麗な逸品です。
特に指摘する問題はないです。
さすがワンオーナー品です。
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使用には問題ない程度ですが、RCA 端子の [コントロール] [マルチ出力] に少しクスミがあります。
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電源 ON してチェック
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電源は入り、周波数表示は出ましたが、[S メータ] などの表示が全く出ません。
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tuning の [<] [>] ボタンを押すと周波数表示は変わるのですが、FM/AM とも全く受信していません。
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FM/AM とも音は出ず、局間ノイズすら出ないです。
全く動作していないという感じです。
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こういう状態なので、ここでのチェックはこれ以上できません。
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カバーを開けてチェック
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天板カバーを外した瞬間、プーンとした化学物質のような匂いがしました。
何だかオカシイ!
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内部の基板は綺麗で、目視で劣化とわかる部品はありません。
リペア (その1):FM/AM とも全く動作していない
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調査と原因
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全く動作していない時は普通に考えて電源回路が故障していることが多いです。
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[Q701]-E から出力される +12V 電圧を測定すると、+8V くらいで電圧がフラフラ変化しています。
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下の回路図は [Q701] の周りです。
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赤〇で囲んだ [C706] の+極で電圧測定すると +10V くらいです。
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標準値は回路図に記載されている +19.0V なので、ここがオカシイです。

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詳細を調べるため、左の写真のように筐体のシャーシ部分を外しました。
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ST-S6 には点検用裏ブタが無いので、部品にアクセスするにはこのようにするしかないのです。
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たぶんコストダウンのためと思うのですが、修理する時の手間が大変で、修理コストは大きくアップします。
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この裸状態でも電源を入れると動作します。
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基板の裏側で [C706] 周りをチェックすると、右の写真のような
原因らしき不具合を発見!
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[C706] というシルク印刷の上側が [C706] の-電極です。
ここから
電解液が液漏れ
しています。
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初めて天板カバーを外した時の「プーンとした化学物質のような匂い」は電解液の匂いだったのです。
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修理には、このような普通ではない状態に気付く感性が必要です。
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液漏れした電解液で [C706] の-電極パターンと、近くの以下の2本のパターンが腐食して断線しています。
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1つは FM IF band = normal ラインで、もう1つは MPX 19KHz ラインでした。
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間違いなく [C706] 故障が原因です。
故障が波及して他の部分も一緒に故障したといった・・・

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修理
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まずは、[C706] を以下のリストのように交換しました。
容量と耐熱を上げて信頼性も上がりました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C706 |
1000uF/25V (85℃) |
1500uF/25V (105℃) |
電解コンデンサ |
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左の写真は交換後で、赤〇で囲んだ部品が [C706] です。
右の写真は元の故障していた [C706] です。

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次に、腐食したパターンをアルコール洗浄し、断線したパターンを下の写真で黄矢印で示した電線で補修しました。

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修理後の動作チェック
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FM で S メータがフルに点灯し、[normal] ランプが点灯し、[STEREO] [Quartz lock] 表示が出て、良好受信できました。
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AM で S メータがフルに点灯し、[Quartz lock] 表示が出て、良好受信できました。
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全て正常です。
蘇りました!
リペア (その2):電気二重層コンデンサ交換
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概要
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電気二重層コンデンサで電源消失時のプリセットメモリをバックアップします。
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取扱説明書によると ST-S6 のメモリバックアップ保証期間は1週間です。
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ST-S6 に使われている電気二重層コンデンサは半世紀前の大型の古臭い製品です。
そろそろ寿命です。
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修理
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オリジナルでは [3.3F/1.8V] の電気二重層コンデンサを3個直列接続して [1.1F/5.4V] として使われています。
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最新の電気二重層コンデンサを使うと [1F/5.5V] 1個で済みます。
そして大きさも劇的に小さくなります。
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以下は部品交換リストです。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C717 |
3.3F/1.8V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
| C718 |
3.3F/1.8V |
| C719 |
3.3F/1.8V |
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左の写真はオリジナル状態で [C717] [C718] [C719] と3個も実装されていました。
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右の写真は交換した電気二重層コンデンサ [1F/5.5V] です。
1個になって小さくなりました。

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修理後の動作チェック
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プリセットが正常で、かつ、コールも正しいことを確認しました。
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電源コードを抜いて、しばらく経ってから再度入れて、プリセットが消えていないことを確認しました。
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1週間バックアップできるかの試験には1週間以上かかるので、これはやっていません。
リペア (その3):ハンダクラック予防補修
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ST-S6 でハンダクラックしやすい箇所
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左の写真は RCA 端子の裏側です。
リードが直接基板にハンダ付けされています。
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このハンダ付け部分はリアパネルと基板の2方向から常にストレスを受けているのでクラックしやすいです。
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右の写真で黄〇で囲んだパワートランジスタのハンダ付け部分は、自身の発熱でハンダが劣化してクラックしやすいです。

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修理 (補修)
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上記で説明したハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
これでまた10年以上大丈夫と思います。
リペア (その4):その他
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[コントロール] [マルチ出力] 端子に少しクスミがある
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ピカール液
を使ってマイクロ研磨してかなり輝きが蘇りました。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 (用途) |
| Q701-E |
+12V |
+12.4V |
〇 |
TUNER/AUDIO |
| Q705-E |
+5.5V |
+5.53V |
〇 |
DIGITAL |
| D706-K |
+32V |
+33.8V |
〇 |
VT |
| D709-A |
-25.5V |
-25.6V |
〇 |
FL |
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FM/AM 受信部の調整
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再調整結果
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FM 受信
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FM 同調点調整で大きなズレがありました。
再調整で規定内に入りました。
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FM フロントエンドの OSC トラッキング調整がかなりズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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FM フロントエンドの RF トラッキング調整で感度が大きく上がりました。
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MPX VCO 調整が大きくズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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再調整でステレオセパレーションと高調波歪率は下のような優秀な値になりました。
| 項目 |
IF band |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
normal |
stereo |
63 |
70 |
dB |
| super narrow |
23 |
23 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
normal |
mono |
0.090 |
% |
| stereo |
0.095 |
% |
| super narrow |
mono |
0.24 |
% |
| stereo |
0.37 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
normal |
stereo |
-64 |
-62 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
normal |
mono |
0 |
+0.95 |
dB |
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AM 受信
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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到着時は FM/AM とも故障して全く受信できませんでしたが、無事修理できてよかったです。
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修理後の再調整で優秀な性能と高音質に蘇りました。
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デザイン
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スッキリとしたデザインで、1981年型としてはよく纏まっています。
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薄型機としては大きいですが、兄貴の ST-S8 よりはマシです。
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フロントパネルの透明板内サブパネルへの照明がないので、暗い場所では文字が見難いです。
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FM アンテナ入力は F 端子なので妨害電波の混入を防げます。
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感度や音質
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再調整して良い音に蘇りました。
普通に十分高音質です。
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AM アンテナにバーアンテナが使われており、感度が良いです。