TRIO KT-900 (5号機) が到着!
2023年8月2日、埼玉県川越市の N さんより、
TRIO KT-900
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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FM の周波数が 3MHz ほど低い方にズレています。
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ステレオだと受信しません。
モノラルだと受信できます。
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外観
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製造シリアル番号は [21101292] で、電源コードの製造マーキングより [1982年製造品] とわかりました。
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全体的には状態は良く綺麗です。
[純正 AM ループアンテナ] が添付されていました。
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フロンパネルはパネル内にかなり綿埃が溜まっています。
リアパネルの端子類には輝きが残っており、状態は良いです。
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電源 ON してチェック
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問題なく電源 ON できました。
ランプ切れはありません。
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FM 受信
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辛うじて受信できるのですが、-3.0MHz 程度周波数ズレしています。
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79.5MHz の放送がダイヤル指針で 76.5MHz 辺りで受信します。
受信音はそれなりに良いです。
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感度も大きく低下していますが、これは周波数ズレのためで、まずは周波数ズレを直さないと他に不具合あるかわかりません。
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AM 受信
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感度が低下している感じがしますが、受信はできます。
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カバーを開けてチェック
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内部は綺麗で、目視で劣化とわかる部品は見当たりません。
リペア
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大きく周波数ズレしている
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左の写真で黄〇で囲んだ部品が FM OSC 発振用トリマコンデンサです。
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このトリマコンデンサを回しても同調に変化がありません。
トリマコンデンサの完全故障
です。
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もうこのトリマコンデンサは使えないので、ラジオペンチで破壊して除去しました。
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右の写真は外付けした新しいトリマコンデンサです。
10pF セラミックトリマコンデンサを使いました。
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G17 ボンドで固定しましたが、十分な強度があります。

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トリマコンデンサ交換後に動作チェックしました。
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放送電波と自分の耳だけでトリマコンデンサを仮調整しました。
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放送周波数とダイヤル指針が示す周波数が合うようになりました。
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S メータがビューンとフルまで振れ、[STEREO] ランプも点灯します。
直りました!!!
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各種計測したところ、2nd IF 周波数が 3.4MHz になっている ・・・ 異常
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2nd IF 周波数は 1.96MHz が正しいです。
この周波数が狂っても受信はできるのですが、S/N が悪くなります。
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2nd IF 周波数は、左の写真で黄〇で囲んだ [L5] コイルで調整しますが、3MHz 以下にならず、オカシイです。
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右の写真のように [L5] を基板から外してみました。

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左の写真は [L5] の裏側です。
チクワの形をしたチタコンが真っ黒になって劣化しています。
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劣化したチタコンを除去し、[L5] を基板に戻しました。
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取り外したチタコンを
LCR メータ
で容量計測すると 107pF でした。
ここは 82pF が正しいので、やはり劣化しています。
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右の写真のように、劣化したチタコンの代わりに 30ppm 温度補償積層セラミックコンデンサ 82pF を基板の裏側に取り付けました。

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コンデンサ交換後に動作チェックしました。
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[L5] 調整で 2nd IF 周波数を規定値の 1.96MHz に設定できました。
直りました!!!
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バリコン軸接触不良回復 ・・・ 予防保守
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本機ではまだ顕在化していませんが、バリコン軸が接触不良になると [ガサガサ雑音] [感度低下] の現象が出ます。
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本機は製造後40年以上経っており、バリコン軸の接触回復は必須です。
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
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[1]~[2] を何度も何度も繰り返します。
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仕上げに、軸受けに
CRC 5-56
を塗布して防錆処置します。
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本機でも大量の緑青サビが湧き出ました。
やっておいて良かった!!!
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フロンパネルはパネル内にかなり綿埃が溜まっている
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フロントパネルを分解して内部を清掃しました。
一番外側にある強化ガラスは取り外して中性洗剤で水洗いしました。
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新品時の綺麗さに回復しました。
直りました!!!
再調整
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電圧チェック
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以下のように正常です。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| J83 |
+14V |
+13.4V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
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やはり、製造後40年を過ぎているので、あちこちズレがありましたが、再調整で規定値に収まりました。
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高調波歪率は以下のような良好な値に調整できました。
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ステレオセパレーションは、この機種としてはやや低いですが、問題はないです。
十分なステレオ感が出ます。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
47 |
47 |
dB |
| NARROW |
45 |
46 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.044 |
% |
| stereo |
0.054 |
% |
| NARROW |
mono |
0.25 |
% |
| stereo |
0.25 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-65 |
-66 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
-0.26 |
dB |
| REC CAL 信号 |
WIDE |
mono |
445.3 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
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AM 受信部
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ややズレがありましたが、調整で少し感度が上がりました。
使ってみました
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デザイン
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デザインは良いです。
フロントパネル枠がプラスチックなのがやや残念です。
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ダイヤルスケール部全体がイルミネーション照明されており綺麗
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最前面は強化ガラス
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チューニングノブは直径 41mm の無垢アルミ
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S メータは 7 レベルの LED バー表示
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T メータは [→ ←] の LED 表示
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感度や音質
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FM は TRIO らしい高解像度でカチッとした高音質です。
感度も良いです。
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やはり、パルスカウント検波の音は良いです。
別格です。
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AM は高感度で S/N が高いです。