TRIO KT-9900 (3号機) が到着
2024年7月11日、三重県伊勢市の Y さんから
TRIO KT-9900
の修理依頼品が到着しました。
この写真は照明を LED 化した後です。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
他社で修理調整した KT-9900 を6年ほど毎日使用中ですが、音がブツブツと途切れる現象が出ており困っております。
-
照明は LED 化してください。
明るさは、ソフトな感じが良いです。
-
KT-9900 の音質が気に入っており、今後末永く使いたいと思っています。
-
外観
-
製造シリアル番号は [050194] で、電源コードに製造マーキングより [1979年製造品] とわかりました。
-
全体的に新品同様に見える、かなり綺麗な逸品です。
特に指摘するような問題はありません。
-
なお、リアパネルにあるはずのプラスチック製クッションが左右ともありません。
邪魔になるので外したのかな?
-
電源 ON してチェック
-
電源は問題なく入り、ランプ切れはないです。
-
[S メータ] は当方の 85dBf 程度の電波レベルで 67dBf 程度なので、感度落ちしています。
[T メータ] は正しそうに振れます。
-
全体に +0.1MHz 程度の軽い周波数ズレがあります。
80MHz の放送が、指針が 80.1MHz で受信。
-
電源 ON から数分で以下の不具合現象が確認できました。
-
[MUTING] = OFF でも時々音が途切れます。
音の途切れた時に [STEREO] ランプは点灯、[D メータ] はゼロです。
-
更に通電したままにしておいたら、[S メータ] の振れが周期的に変わるようになりました。
[MUTING] = ON では以下の状態になります。
-
[S メータ] の振れが徐々に 67dBf → 60dBf に下がっていきます。
-
そして 60dBf 以下になった時に [STEREO] [DCL] ランプが一瞬消え、音が途切れ、このタイミングで正常に戻ります。
-
上記 [1]~[2] を永遠に繰り返します。
-
確かにこれでは放送を楽しめません。
さて、どこが故障しているのだろう?
-
カバーを開けてチェック
-
左の写真のように [パルスカウント検波基板] の [IC3] HA1457 を別の OP アンプに交換されています。
-
別の OP アンプを小さい基板に組み込んで [HA1457] と同じピンの並びになるよう工作してあるのです。
-
[HA1457] は既に廃品種になって希少品になっており、価格が暴騰しているので、こういう手法はやむを得ないです。
-
正しく修理されているようで、特に問題ないです。
-
右の写真のように [電源基板] の [C30] 1000uF/25V 電解コンデンサが爆発寸前になっています。
-
本来は、他の電解コンデンサと同じく垂直に立っているはずが、底の部分が膨張して傾いたのです。
-
もうしばらくすると爆発して電解液が漏れ出します。
かなり危ない状態です。
-
電解コンデンサ単体の問題か、それとも他に要因があるのか、電源だけに至急調べる必要があります。

-
上記以外に問題は見当たらず、内部の基板等は綺麗です。
リペア (その1):[電源基板] の [C30] 電解コンデンサが爆発寸前になっている!!!緊急修理!!!
-
調査
-
電解コンデンサが壊れただけならそう問題はないのですが、異常電圧が出力される回路故障だと厄介です。
-
電圧測定してみると、[+22.5V] 出力である箇所がほぼ倍の [44.4V] になっています。
厄介なほう、回路故障です。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| [PS 基板] 8pin |
+22.5V |
+44.4V |
× |
| [PS 基板] 9pin |
+18V |
+18.5V |
〇 |
| [PS 基板] 10pin |
-18V |
-18.9V |
〇 |
| [PS 基板] 11pin |
+15V |
+15.4V |
〇 |
| [PS 基板] 14pin |
-15V |
-15.5V |
〇 |
| [PS 基板] 15pin |
-14V |
-14.0V |
〇 |
| [PS 基板] 19pin |
+14V |
+14.3V |
〇 |
-
左の回路図は [電源基板] の一部です。
-
この回路では、おそらく故障しているのは赤〇で囲んだ [IC2] HA1457 です。
-
青〇で囲んだ電解コンデンサが爆発寸前の [C30] です。
-
修理
-
右の写真は修理後です。
赤〇で囲んだ部品を交換して
直りました!!!
-
[+22.5V] 出力は実測 [+22.7V] と正常範囲に蘇りました。
-
黒い部品が [HA1457] です。
この IC は既に廃品種になっており、現在では価格が高騰し千円を超える希少価格になっています。

-
電源故障が厄介なのは、この異常電圧は別の基板に供給されていて、その基板も劣化・故障している可能性があることです。
-
回路図で確認すると、+22.5V は [パルスカウント検波基板] にだけ給電されているとわかりました。
-
更に、この基板全部ではなく、ごく一部にだけ使われています。
-
故障する可能性の部分が限定的だったのは、ある意味、ラッキーです。
-
左の写真は [パルスカウント検波基板] で劣化していた電解コンデンサの交換後です。
-
赤〇で囲んだ部品です。
幸いなことにトランジスタは大丈夫でした。
-
右の写真は、ここまでに交換した部品で、交換前に基板に実装されていた部品です。
-
一番大きな部品が爆発寸前だった [C30] 電解コンデンサです。
下側が不細工に膨らんで歪んでいます。

-
交換部品リスト
-
電解コンデンサはグレードを上げ、高耐熱品にしました。
| 基板 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| 電源基板 |
IC2 |
HA1457 |
HA1457 |
希少 IC、OP アンプ |
| C29 |
10uF/25V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
電解コンデンサ |
| C30 |
1000uF/25V (85℃) |
1000uF/25V (105℃) |
パルスカウント 検波基板 |
C13 |
220uF/10V (85℃) |
220uF/35V (105℃) |
電解コンデンサ |
| C14 |
100uF/16V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
| C15 |
47uF/35V (85℃) |
56uF/35V (105℃) |
-
修理後の動作確認
-
[電源基板] から全て電圧が正常に出力されることを確認しました。
リペア (その2):[S メータ] の振れが周期的に変わり音が途切れる
-
調査
-
[TUNING] ノブに手を触れていると、[S メータ] の振れが周期的に変わることはなく、音も途切れないとわかりました。
-
KT-9900 では、[TUNING] ノブに手を触れていると [DDL] ランプが消え、手を離すと [DDL] ランプが点灯します。
-
DDL 機能とは同調サーボロック (AFC) する機能です。
こうなると、DDL 回路のどこかが故障していることになります。
-
原因と修理
-
サーボロック (AFC) はループ回路ですから、入力故障は出力に影響するし、出力故障は入力に影響するし、どちらかわかりません。
-
まずは [IF 基板] で、入力にあたる同調点検出 [IC8] HA1137W を交換してみました。
-
左の写真のように IC ソケット化してから [HA1137W] を交換しましたが、直りませんでした。
赤〇で囲んだ部品です。
-
しかし、S メータの振れが大きくなったので [HA1137W] は劣化していたとわかり、交換は無駄ではありません。
-
次は [DDL 基板] で、出力にあたるサーボアンプ [IC4] HA1457 を交換してみました。
-
右の写真は [HA1457] 交換後です。
赤〇で囲んだ部品です。
これで、
直りました!!!
-
ここでも、原因は [HA1457] 故障でした。

-
故障していた時の動作は以下で、故障時の動作とロジックの辻褄が合います。
この対策は正しいです。
-
[TUNING] ノブを回して放送局に同調、DDL ランプは消灯
-
[TUNING] ノブから手を離すとサーボロックがかかる、DDL ランプは点灯
-
[DDL 基板] の [HA1457] が故障していて、抵抗と電解コンデンサの時定数をもって徐々に同調周波数 (OSC) がズレていく
-
この時でも DDL の別の回路機能により、[T メータ] = センタ は保たれている。
-
だが実際の同調周波数は徐々にズレており、これに伴い [S メータ] の振れが落ちていく。
-
実際の同調周波数が同調点検出の限界になると、サーボロックが解除され、DDL ランプが消える
-
サーボロックが解除されたことより、同調周波数が正常になり再び受信できるようになって [2] に戻る
-
この [2]~[5] の動作を永遠に繰り返し、音が途切れる。
-
修理後の動作確認
-
[TUNING] ノブを回して放送に同調してから手を離すと [DDL] ランプが点灯しました。
-
しばらく監視しても [S メータ] の振れは変わらず、音の途切れも無くなったことを確認しました。
-
本来、DDL は同調状態を安定に保つ機能ですが、これが故障して同調を不安定にしていたのです。
本末転倒!!!
リペア (その3):照明の LED 化 ・・・ 修理依頼者の要求
-
照明構造
-
右側面ダイヤル面と D/M メータの照明構造です。
左側面ダイヤル面と S メータと T メータもほぼ同じ構造です。
-
ダイヤル面は側面にある斜めのダイヤル板をランプで直接照射します。
(左の写真)
-
メータは導光アクリル板を介して間接照射します。
(右の写真)

-
[ダイヤル照明] [メータ照明] 以外は既に LED となっているので、このままとします。
-
使用する LED
-
全て高密度テープ LED を使います。
(右の写真)
-
12.5mm あたり3個の高輝度 LED が実装されており、この単位でカットして使えます。
m あたり LED 240個という物凄い製品です。
-
テープ幅は 10mm でちょうどよいです。
裏側が両面テープになっています。
-
色はウォームホワイト (電球色) で、元の色に近いです。
-
電球色とはいっても、明るくスッキリした橙色になります。
-
LED 化前の照明回路
-
オリジナルのフィラメントランプの時の回路です。
ランプへは電源トランスの専用巻線から AC 駆動しています。

-
LED 化後の照明回路
-
LED なので DC 駆動する必要があり、電流は僅かなので、[電源基板] の [C2] 両端から駆動電源を取ります。
-
従来の [電源トランスからの AC7.5V の配線] [フィラメントランプ] は不要なので取り外しました。
-
LED のうち、(DUMMY) とあるのは全くのダミーで、照明には使っていません。
LED 発光部分を黒ペイントして遮光しています。
-
他の LED と構成を合わせないと、電流バランスするのが難しいので、このようにしました。
-
「明るさはソフトな感じが良い」とのことでしたので、LED に流す電流を抑えています。
電流を抑えると LED の寿命も延びます。

-
LED 化作業の様子
-
あらかじめプリ配線と導光板へテープ LED を貼り付けます。
(左の写真)
-
貼り付けには経年変化せず260℃の耐熱性のあるポリイミドテープを使いました。
黄色のテープです。
-
写真の導光板の手前はフロント側です。
導光板の右から出ているテープ LED はダイヤルスケール照明用です。
-
これを KT-9900 に組み込みます。
(右の写真)

-
上記は右サイド側ですが、左サイドも同様に作業しました。
-
LED 化完成
-
色は従来の電球色とはやや違い、オレンジ色~レモン色の中間くらいでスッキリ感があります。

-
改造前のフィラメントランプでは 12W 電力消費していましたが、LED 化後は 0.16W 以下です。
-
劇的に消費電力が減りました。
エコです!
-
従来のフィラメントランプ照明では筐体内に熱が籠って、手で触ると熱いと感じていました。
-
LED 化照明では発熱は僅かです。
筐体内の温度上昇が抑えられるので信頼性が上がり、部品の寿命が延びます。
-
更に [DIMMER] スイッチ ON では 0.034W 以下です。
暗めの部屋で音楽を静かに楽しむにはピッタリ!
-
フィラメントランプの時より明るくコントラストが上がったのに消費電力が激減、LED 化は大正解です!
-
長期的に考えると、安くなった電気代で今回の改造費は回収できます。
-
参考
-
右の写真のように、LED の明るさを調整する電流制限抵抗の [1kΩ] [4.7kΩ] は [コントロール基板] の裏側で交換可能にしてあります。
-
[コントロール基板] は底板を外してフロント側に見えます。
-
もう少し明るくしたいとか暗くしたいとかは、これらの抵抗値を変えるとできます。
-
例えば [1kΩ] を 0Ω にすると最大輝度になりますが、たぶん、眩しくて見ておれないと思います。
再調整
-
電源電圧チェック (VP)
-
[電源基板] を修理したので、実測値は以下のように正常です。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| [PS 基板] 8pin |
+22.5V |
+22.7V |
〇 |
| [PS 基板] 9pin |
+18V |
+18.5V |
〇 |
| [PS 基板] 10pin |
-18V |
-18.9V |
〇 |
| [PS 基板] 11pin |
+15V |
+15.4V |
〇 |
| [PS 基板] 14pin |
-15V |
-15.5V |
〇 |
| [PS 基板] 15pin |
-14V |
-14.0V |
〇 |
| [PS 基板] 19pin |
+14V |
+14.3V |
〇 |
-
FM 受信部の調整
-
調整結果
-
フロントエンドのトラッキング調整の結果、指針が示す周波数はほぼ合うようになりました。
-
ただし、バンド端 (76MHz や 90MHz 付近) ではややズレが大きくなるのはやむを得ないです。
バリコンの精度に依存します。
-
再調整前に悪化していたステレオセパレーションや高調波歪率は、再調整で以下のような良好な性能になりました。
-
この結果、音の解像度が上がり、聞き惚れる素晴らしい音になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
60 |
60 |
dB |
| NORMAL |
58 |
58 |
dB |
| NARROW |
56 |
56 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.016 |
% |
| stereo |
0.016 |
% |
| NORMAL |
mono |
0.029 |
% |
| stereo |
0.029 |
% |
| NARROW |
mono |
0.13 |
% |
| stereo |
0.13 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-76 |
-68 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.03 |
dB |
使ってみました
-
修理&再調整が終わって
-
到着時は [S メータ] の動きがおかしく音が途切れるという、とても使えない状態でしたが全て直って良かったです。
-
照明を LED 化しましたが、ウォームホワイト色 LED 使用と明るさをセーブしたので、言わなければ LED とわからないです。
-
ちゃんと聴けるようになって、やはり KT-9900 は良い音だと思います。
ずっと聴き続けていたい素晴らしい音です。
-
デザイン
-
ともかく大きくて重いです。
15kg もあります。
アンプより重いです。
-
フロントパネルは 5.3mm の分厚いアルミ材で高級感あります。
-
ダイヤルとメータに照明があって、ON すると浮き上がって素敵です。
-
チューニングノブは直径 50mm のアルミ材で高級感あります。
-
チューニングノブでダイヤル指針は、高級感のある動きをします。
-
最前面の透明パネルと内部の周波数パネルがガラスでできています。
このため透明度が高く高級感バッチリです。
-
[IF BAND] スイッチはできるだけ [WIDE] ポジションで使ったほうがよいです。
KT-9900 の最高音質で放送が聴けます。
-
[QUIETING CONTROL] スイッチの [AUTO] ポジションの実体はステレオ時のオートハイブレンドです。
-
高域のホワイトノイズは減りますが、代わりにセパレーションが悪化するので、できるだけ使わないほうがよいです。
-
オートハイブレンドしない [STEREO] ポジションがお奨めです。
-
感度や音質
-
感度は良好で、妨害電波排除能力も優れています。
ともかく安定感があるというか、さすが高級機です。
-
ウットリ聴き惚れてしまうほうどの高音質!
-
スッキリ爽快な誇張のないクリアな音質です。
ナチュラルサウンドという感じする素敵な音です。
-
音に解像度があって、ハーモニーもしっかり再生します。
-
特に金属音のキラキラという音がリアルです。
癖になります。
-
放送局のモニタ機として測定器代わりに使えるほどのクセない超高音質です。