TRiO KT-990 (その2) が到着
2026年2月10日、愛知県豊橋市の K さんより
TRiO KT-990
の再メンテナンス依頼品が到着しました。
本機は、2015年11月に修理&再調整した
KT-990 (1号機)
です。
[10年前の結果] と [今回の結果] を比較できるよう別記事としました。
パルスカウント検波
が特長のチューナです。
この写真は照明 LED 化後です。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
ラックの高さの関係から本機の足を取り外して別足にしています。
オリジナルの足はネジ止めを外して,手元に残してあります。
-
照明類の LED 化をお願いします。
-
できるだけオリジナルの照明色調に近くなるようにお願いします。
-
[SERVO LOCK] ランプは明る過ぎるので、ここをやや暗めに LED 化してください。
-
フロントパネルの強化ガラスを外しての内側清掃をお願いします。
-
10年でどれくらいズレが発生しているのか、などを検証した記事も楽しみにしております。
-
外観
-
製造シリアル番号は [30402863] で、電源コードの製造マーキングより [1982年製造品] とわかりました。
-
[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
-
全体に汚れがありますが、致命的な損傷はなく、状態は良いほうです。
-
フロントパネルの透明ガラスの内側には綿ボコリが多く溜まっています。
周波数ダイヤルのコントラストも悪くなっています。
-
リアパネルの [RCA 端子] [簡易 F 端子] に薄いサビが出ています。
-
10年前と違って、今は適合する新品の [RCA 端子] の手持ちがあるので交換しようと思います。
-
[簡易 F 端子] は簡単に交換できるので、手持ちの状態の良いものと交換しようと思います。
-
底部の脚がフェルト状の高さの低いものに交換されていました。
-
天板をサイドから留めるネジ×4本のネジトップがサビています。
-
10年前はどうだったか覚えていません。
-
処置はしませんが、気になるならホームセンタで同じタップネジは買えるので交換してください。
-
電源 ON してチェック
-
ランプ切れはなく、各スイッチ動作は正常です。
[REC CAL] スイッチ ON で正常にテスト音が出ます。
-
FM 受信
-
放送波で周波数ズレをチェックすると、80.0MHz で +0.1MHz、89.7MHz で -0.1MHz のズレがあります。
-
80.0/89.7MHz でズレ方向が反対なので、今のままが良いようです。
-
この状態は10年前に調整してから、ほぼズレていないと思います。
-
S メータがフルに振れ、[STEREO] ランプが点灯して、良い音が出ます。
-
問題なさそうなので、現状の性能値を測定してみました。
-
全ての数値に問題はなく、前の調整から10年間経過しても良好と言えます。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
55 |
54 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.030 |
% |
| stereo |
0.030 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-47 |
-54 |
dB |
-
AM 受信
-
[純正 AM ループアンテナ] が付属していなかったので、右の写真の筆者が標準にしているループアンテナを接続してチェックしました。
-
SONY ST-SA5ES などの大型ループアンテナです。
中古市場によく出ています。
横幅 28cm、高さ 12cm くらいのサイズです。
-
感度が良く良好に受信できました。
このアンテナとの相性は良いです。
-
カバーを開けてチェック
-
内部はかなり綺麗でホコリがありません。
基板も綺麗で、各種 IFT コイルもピカピカ輝いています。
かなり状態が良いです。
リペア (その1):フロントパネルを内部で留めるプラスチックタブが破損している
-
概要
-
今回、照明を LED 化する要求があったので、フロントパネルを外しました。
前回の修理ではフロントパネルを外していません。
-
そうすると、フロントパネルを内部で留めるプラスチックタブが割れ、右の写真のように、貼り付けられたガムテープでグラグラになっています。
-
タブ割れを瞬間接着剤で貼り付けでいたのが外れ、現在はガムテープの粘着力でなんとか付いている状態です。
-
前回の修理以前に誰かがここを修理しているのですが、その作業が醜いです。
-
これはもっとマトモな修理をするしかないです。
-
そもそもプラスチックタブが割れた原因
-
プラスチックタブが経年変化でもろくなったのと、おそらく、アンプのような重い機器を重ね置きしたと想像します。
-
プラスチックタブは薄いので、荷重がかかると割れてしまいます。
-
修理
-
割れたプラスチックの修理は無理なので、新たに銅板で留め金具を製作して修理しました。
-
金具を作るにしてもスペース余裕のない箇所に無理矢理入れる必要があります。
-
薄くて強度のある、そして加工しやすい素材が必要です。
そこで考え抜いた結果、銅板に行きつきました。
-
左の写真のような銅板金具を製作し、右の写真のように G17 ボンドで貼り付けました。
-
銅板金具は 厚み 0.25mm の銅板を 25×37mm に切り出し、元の取付ネジ穴と合う位置に直径 3.2mm の穴を開けたものです。

-
下の写真は挿入した銅板金具の取付状態の表と裏です。
-
G17 ボンドで銅板をネジ穴に合う位置に接着しました。
-
天板に穴を開けて結合したほうが強度が出るのですが、天板に不細工なネジが見えるのはイヤでしょ。
-
すなわち、取付強度は G17 ボンド接着によります。
そう大きな重量には耐えられないです。
-
割れたプラスチックは銅板上に接着していますが、これは取付強度に関しては何の役にも立っていません。
-
元の取付位置を示す指標として貼り付けただけです。
飾りみたいなものです。
-
写真は左側の銅板金具ですが、右側にももう1枚の銅板金具があります。
全部で2枚 (2箇所) です。

-
G17 ボンドがしっかり接着してくれるまで半日以上かかるので時間がかかる作業でした。
-
修理後のチェック
-
完成後はフロントパネルの上部固定がしっかりとできることを確認しました。
-
繰り返しますが、
天板の上に重量物を重ね設置禁止!!!
リペア (その2):照明 LED 化
-
概要
-
KT-990 にはフィラメントランプが使われているのは3箇所です。
これ以外は既に LED になっています。
-
3箇所とは [ダイヤル照明]×2個、[ダイヤル指針] [SERVO LOCK] です。
-
使用する LED
-
左の写真のウォームホワイト高輝度テープ LED を [ダイヤル照明] に使います。
-
LED はフィラメントランプと違って正面にしか光が出ません。
しかも取付場所は非常に狭いのです。
テープ LED が正解です。
-
テープ LED は単位ごとに切って使えます。
単位ごとに LED×3個 です。
テープ幅は 10mm です。
-
右の写真は砲弾型 LED で以下のものを使います。
-
[ダイヤル指針] ランプに [3mm/ウォームホワイト色/14400mcd/照射角30度] の砲弾型 LED を1個使います。
-
[SERVO LOCK] ランプに [5mm/ウォームホワイト色/35000mcd/照射角15度] の砲弾型 LED を2個使います。

-
LED 照明回路
-
右の回路で [ダイヤル照明] [ダイヤル指針] を LED 化します。
-
LED は DC 駆動する必要があります。
-
既にある電源回路の [C101] の両端から電源を取ります。
-
取り出す電流は 2.5mA と僅かなので KT-990 の動作に影響はありません。
-
テープ LED は1単位でも明るさは十分ですが、[C101] の両端の電圧が 20V 以上あるので、電力を無駄にしないため、1単位のものを2個直列にします。
-
こういう使い方ができるのでテープ LED は使い勝手が良いです。
テープ LED の1単位は 9V 以上あれば発光します。
-
フィラメントランプの時は 2.2W 電力消費していましたが、LED にすると明るくなるのに 0.05W と激減します。
-
下の回路で [SERVO LOCK] ランプを LED 化します。
-
ここは既に DC 駆動だったので、LED に合うよう抵抗の定数を変更します。
-
プレヒート用の [R116] は LED では不要なので除去します。
電流制限用の [R118] は 2kΩ に変更します。
-
フィラメントランプの時は 0.1W 電力消費していましたが、LED にすると明るくなるのに 0.02W と激減します。

-
ダイヤル照明の LED 実装
-
左の写真はオリジナルのダイヤル照明ランプの実装状態です。
-
ランプ交換するまでにフロントパネルをここまでバラバラにする必要があって超大変です。
設計不良じゃないかと思えるくらい。
-
フィラメントランプ×2個とその配線を全部除去しました。
-
右の写真はこれから取り付けるテープ LED です。
ボール紙で貼り付け台を作成し電線をハンダ付けしました。

-
テープ LED 実装済み貼り付け台を写真のように G17 ボンドで貼り付けました。

-
指針照明の LED 実装
-
左の写真はオリジナルの指針照明ランプの実装状態です。
-
右の写真は取付が終わった指針照明 LED です。
LED は正面にしか光が出ないので、リード足を加工して指針に向くようにしました。

-
[SERVO LOCK] ランプの LED 実装
-
左の写真はオリジナルの [SERVO LOCK] ランプの実装状態です。
長~いフィラメントランプを使っています。
-
右の写真は LED 化後です。
-
この表示は横幅が 45mm もあって均一に照射するのが難しいです。
逆に言うと、なぜこんなにも無駄に長い表示にしたのか?
-
そこで LED を2個にして照射角を補い、更に光拡散キャップを被せて、できるだけ照射を均一にしました。

-
LED 化完成
-
超美しい表示になりました!
-
ウォームホワイト色 LED を使ったので元の雰囲気はそのままでコントラストが上がりました。
-
LED はフィラメントランプと違って長寿命です。
今後切れることはほぼないです。
-
照明の消費電力が激減し筐体内の温度上昇を防げるので、機器の信頼性が上がります。
-
しかも、安くなった電気代で今回の改造費はいつか回収できますよ!

リペア (その3):[RCA 端子] [簡易 F 端子] 交換
-
概要
-
リアパネルの [RCA 端子] [F 端子] に薄いサビが出ているので交換します。
-
交換
-
[RCA 端子] は新品に交換しました。
-
[簡易 F 端子] は新品ではありませんが手持ちの状態の良いものと交換しました。
-
右の写真は、基板に実装されていた古い端子です。
リペア (その4):その他
-
フロントパネルの透明ガラスの内側を清掃
-
フロントパネルを分解して清掃しました。
綿ボコリが無くなってスッキリしました。
再調整
-
電圧チェック (VP)
-
以下のように正常でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| J151 |
+14V |
+13.9V |
〇 |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
FM 受信
-
WIDE ゲインが少し調整ズレしていました。
再調整で規定内に入りました。
-
2nd IF 周波数が少し調整ズレしていました。
再調整で規定内に入りました。
-
再調整でステレオセパレーションが大きく改善し、音の解像度が上がり、良い音になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
57 |
57 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.024 |
% |
| stereo |
0.027 |
% |
| NARROW |
mono |
0.14 |
% |
| stereo |
0.14 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-51 |
-51 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.11 |
dB |
| REC CAL 信号 |
WIDE |
mono |
384 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
-
AM 受信
-
[純正 AM ループアンテナ] が添付されなかったので、気になる項目だけ調整しました。
-
放送局の周波数と指針の示す周波数に気になるズレがあったので補正しました。
-
IF 調整を実施しました。
-
なお、
AM 放送は2028年でほぼ終了
します。
聴けるのは今のうちです。
-
KT-990 で FM に移行した元 AM 放送 (ワイド FM) を聴くには
周波数コンバータ
を製作するとよいです。
使ってみました
-
修理&再調整が終わって
-
誰かがフロントパネルの上側プラスチックタブがガムテープで貼り付け処置されていたのに驚きました。
-
処置をやり直しましたが、接着剤が乾燥するのに半日はかかるので、時間がかかりました。
-
また、ガムテープはダメなんです。
粘着成分が溶けてネチャネチャになっており、これを除去するのに時間がかかりました。
-
修理&再調整で新品時の性能に蘇って良かったです。
照明 LED 化により新製品と見間違うほど綺麗なルックスになりました。
-
やはり KT-990 のパルスカウント検波の音は素晴らしいです。
この方式のチューナはもう売られていないので、本機は貴重品です。
-
デザイン
-
デザインが優れた薄型チューナです。
-
ダイヤルスケール部全体がイルミネーション照明されており綺麗です。
-
今回は照明を LED 化したので、更に美しくなりました。
-
ダイヤルスケール部には本物の強化ガラスが使われています。
-
チューニングノブは直径 41mm の無垢アルミに輝きのあるスモークアルマイト処理がされており、質感があります。
-
感度や音質
-
FM は TRiO らしい高解像度でカチッとした高音質です。
感度も良いです。
-
やはり、パルスカウント検波の音は良いです。
別格です。
-
AM は高感度で S/N が高いです。
[IF BAND] を WIDE にすると高音がよく出ます。