Victor FX-711 (7号機) が到着
2023年10月18日、千葉県船橋市の I さんから
Victor FX-711
の再調整依頼品が到着しました。
故障品をご自分で修理されたそうで、基本的には再調整だけの依頼です。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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FX-711 の故障品を入手し修理しました。
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現象は「時たま動作するも暫くすると 0dB になり受信不能になる」でした。
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色々調べた結果 3SK73 の混合へ注入する [Q151] 2SK60 ソー スのハンダ不良でした。
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これが VCO 回路を揺さぶり VCO ロックが不安定になってました。
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目視ではわからず、最後にボールペンの後ろ側でコンコンとつついて発見しました。
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[FM/AM トリマコンデンサ] [電源基板とメイン基板のスタビライザ周りの電解コンデンサ] [メモリコンデンサ] は交換済みです。
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せっかく治りましたので、魂を入れて (再調整) 頂きたくお願いします。
もちろん不具合の場合は修理をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [17304100] で、電源コードの製造マーキングより [1988年製造品] と判りました。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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フロントパネルのアルミ部分は綺麗ですが、プラスチックのボタンにはややスレ等があります。
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天板には大きなひっかけ傷があります。
ここはラックに入れると見えない部分なので諦めかな。
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直すなら普通は再塗装と考える人が多いと思いますが、現在ではもっとイイ方法があります。
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カーラッピングシートを貼るのです。
これなら失敗しても元に戻せます。
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カーボン調とかウッド調とか多彩なシートを選べます。
作業で手や服も汚れません。
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リアパネルの端子に白いサビが出ていますが、そう問題ないと思います。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく ON できました。
各種ボタンは正常に動作します。
FL 表示管の輝度は新品同様です。
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FM 受信
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問題なく受信でき [STEREO] 表示も出ます。
周波数ズレは感じません。
音も良い感じです。
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S メータの dB 表示値を信じると 10〜20dB 程度感度低下しています。
後述の再調整で、感度低下ではなく S メータの校正ズレと判明。
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到着時のまま軽く現状の性能値を測定してみたら、以下のように良好でした。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
61 |
51 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.019 |
% |
stereo |
0.041 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-43 |
-43 |
dB |
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AM 受信
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手持ちの純正でない適当な AM ループアンテナで問題なく受信できました。
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[純正 AM ループアンテナ] がないと厳密な調整はできないので、基本的には IF 調整だけとします。
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カバーを開けてチェック
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内部はは非常に綺麗です。
目視で問題がありそうな部品は見当たりません。
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トリマコンデンサと一部の電解コンデンサが交換されていました。
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[C431] [C432] が 100uF/35V のアルミ固体コンデンサ?に交換されていました。
深くは追求しませんが、もしアルミ固体だったら容量抜けしやすいのでご注意ください。
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[電源基板] [メイン基板] それぞれに1本ずつ FUSE が追加されているようです。
まあ動作しているので深くは追求しません。
再調整
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電圧チェック (VP)
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以下のように全て良好です。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
Q801-E |
+30V |
+29.3V |
〇 |
VT 電源 |
Q803-E |
+12V |
+12.8V |
〇 |
オーディオ電源 |
Q808-E |
-12V |
-13.0V |
〇 |
オーディオ電源 |
Q805-E |
+5V |
+5.13V |
〇 |
ロジック電源 |
J705-3pin |
+5.6V |
+5.72V |
〇 |
MCU 電源 |
J705-5pin |
-35V |
-34.6V |
〇 |
FL 電源 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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dB S メータ表示の校正がかなりズレていました。
校正調整して表示数値に信頼できるようになりました。
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上記以外には大きな調整ズレはありませんでしたが、やはり再調整で性能が上がりました。
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IF BAND = WIDE では下の実測値のように、ものすごく良い性能が出て、すごく良い音になりました。
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IF BAND = NARROW ではかなり悪くなるので、このモードではあまり使わないほうが良いです。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
64 |
67 |
dB |
NARROW |
26 |
25 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.016 |
% |
stereo |
0.023 |
% |
NARROW |
mono |
0.17 |
% |
stereo |
0.17 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-48 |
-48 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.01 |
dB |
REC CAL |
WIDE |
mono |
421.9 |
Hz |
-6.4 |
dB |
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付が無かったので IF 調整だけしました。
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AM はループアンテナも同調回路の一部となっており、ペアで調整する必要があるのです。
使ってみました
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FX-711 は Victor 最頂点のチューナです
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5連バリキャップで高周波系の性能が良く、しかも音が良いです。
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鳶のビクターが鷹の本機を生んだかのような奇跡の高性能チューナです。
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SONY ST-S333ESX シリーズを越えているかもしれない。
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FM 受信
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感度が良く、受信レベルが dB で表示でき、しかも正確です。
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聴いた瞬間に高音質と判る良い音
、素敵です。
聴き惚れます。
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PLL 検波らしい、スッキリした解像度感のある音です。
細かい音が綺麗に出る繊細な音です。
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本機の FM 受信時 S メータの dB 表示はかなり正確です。
30〜90dB の表示範囲は信じてよいです。
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AM 受信
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適当な AM ループアンテナでの感度はかなり高く、S/N も良いです。
音質は AM としては普通レベルです。
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本機のような FM が超高音質のチューナで、ナロー音質の AM をわざわざ楽しむ人はいないと思う。