VICTOR T-X5 (2号機) が到着
2024年3月31日、静岡市の S さんより
VICTOR T-X5
の修理依頼品が到着しました。
この写真は照明 LED 化後です。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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中古で購入しました。
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背面部ボリュームつまみ・チューニング用バリコンのガリの修正、FM の再調整、照明の LED 化をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [07506339] で、電源コードの製造マーキングより [1979年製造品] とわかりました。
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中古で買ったとは思えないほど綺麗です。
フロントパネルはほぼ無傷で綺麗です。
各ボタンにサビが出ておらず、状態が良いです。
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リアパネルの端子類に若干サビが出ていますが、そう問題ないと思います。
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電源 ON してチェック
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問題なく電源 ON でき、ランプ切れはありません。
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各スイッチは正常に反応します。
[REC CAL] ボタン ON でテスト音が出ます。
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FM 受信
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やや周波数ズレがあります。
80MHz の放送が 80.2MHz 辺りで受信します。
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S メータが正常そうに振れ、[STEREO] ランプが点灯し、ちゃんとステレオになります。
ただし、ステレオ感は弱いです。
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そこそこ動作しているので、現状のオーディオ性能を測定してみました。
やはり、少し性能劣化があるようです。
| 項目 |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
stereo |
34 |
33 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
mono |
0.31 |
% |
| stereo |
0.31 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
stereo |
-69 |
-69 |
dB |
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AM 受信
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受信できますが、感度落ちしています。
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やや周波数ズレがあります。
810kHz の放送が 830kHz 辺りで受信します。
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カバーを開けてチェック
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内部は綺麗で、2枚の基板も綺麗です。
目視で劣化とわかる部品はなさそうです。
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ダイヤル照明ランプ×2個のうち1個が切れていました。
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修理依頼者要求の LED 照明化は、[ダイヤル照明ランプ]×2個と [指針ランプ]×1個をリプレースすればよさそうです。
リペア (その1):電源部の電解コンデンサ全数交換
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概要
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今回照明を LED 化するのですが、DC 電源を既存の電源回路から取ります。
このため、電源を強化しておいたほうがよいのです。
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回路図を見ると電源回路には電解コンデンサが3個使われているだけです。
全数交換します。
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交換リストは以下です。
[耐熱] [容量] [耐圧] を上げて信頼性を向上させます。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C804 |
2200uF/25V (85℃) |
3300uF/35V (105℃) |
容量アップ、耐圧アップ、耐熱アップ |
| C805 |
470uF/16V (85℃) |
470uF/16V (105℃) |
耐熱アップ |
| C806 |
220uF/16V (85℃) |
470uF/16V (105℃) |
容量アップ、耐熱アップ |
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交換完了
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左の写真は交換後で、赤〇で囲んだ電解コンデンサです。
右の写真は元実装されていた古い電解コンデンサです。
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元の電解コンデンサに比べて大きさは半分以下になり、風通しが良くなったので更に信頼性が上がります。

リペア (その2):照明 LED 化 ・・・ 修理依頼者の要求
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リプレースに使う LED
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左の写真のテープ LED はダイヤル照明に使います。
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幅は 10mm で 12.5mm 単位にカットできます。
1単位あたり LED 3個が搭載されています。
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1単位にカットしたものを2個使います。
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発色はウォームホワイトです。
白色も試してみたのですが、シルバーのダイヤルに白色照明はイマイチでした。
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右の写真の 3mm 砲弾型 LED はダイヤル指針に使います。
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ツバなしのやや特殊な LED で [緑色、7.3lm、照射角30度] です。
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既存の指針ランプフォルダにはこのツバなしでないと入らないのです。

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LED 化回路
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既存のランプ回路は AC 駆動なので LED に流用できません。
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LED は DC 駆動する必要があり、この電源を [C804] 電解コンデンサの両端から取ります。
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ダイヤル照明にはテープ LED を2単位使うので、LED×6個分に相当します。
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電圧・電流の実測値は回路に記入しています。
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この回路での消費電力は (3.9mA+0.9mA)×21.3V=0.1W です。
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配線の様子
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左の写真は LED 化後の配線の様子です。
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左側に見えるのがダイヤル指針で、ダイヤル照明散光板に2個貼り付いているのがテープ LED です。
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経年変化しない260℃耐熱ポリイミドテープを使ってテープ LED を貼り付けています。
セロテープではありません。
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右の写真は、これまで実装されていたフィラメントランプ (麦球) と光フィルタです。

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LED 化完成
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スッキリとした綺麗な照明に変身しました。
緑色の指針もなかなか良いです。
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ウォームホワイトは電球色より色温度が高く、電球色と黄色の中間くらいです。
目に優しいです。
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LED はほとんど発熱しないので、筐体内が暑くなることもなく、信頼性が上がります。
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フィラメントランプの時は照明で消費電力は 5W 食っていましたが ・・・
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LED 化後は明るくなったのに、たったの 0.1W です。
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長い目で見ると安くなった電気代で、LED 化改造費用は回収できます。

リペア (その3):電解液漏れ電解コンデンサの交換
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LED 化などの作業をしている時に気付きました
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左の写真の電解コンデンサの足がサビています。
電解液が漏れて腐食したのです。
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他にも液漏れ電解コンデンサが見つかり、全部で4個交換しました。
右の写真は、元実装されていた古い電解コンデンサです。

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交換リスト
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以下の電解コンデンサを交換しました。
ここでも [耐熱] [容量] [耐圧] を上げて信頼性を向上させました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C118 と並列 |
22uF/16V (85℃) |
22uF/16V (105℃) |
耐熱アップ |
| C152 |
22uF/16V (85℃) |
22uF/16V (105℃) |
耐熱アップ |
| C153 |
220uF/6.3V (85℃) |
470uF/16V (105℃) |
容量アップ、耐圧アップ、耐熱アップ |
| C182 |
22uF/16V (85℃) |
22uF/16V (105℃) |
耐熱アップ |
リペア (その4):バリコン軸に緑青サビが出ている
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右の写真はバリコン軸受けです
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軸と軸受板に緑色に見える部分があります。
これが緑青サビです。
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サビは絶縁物なので接触不良となり、以下の現象が出ます
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周波数の低い辺りで指針を動かすとゴソゴソという雑音が出る。
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感度が落ちたり、受信が不安定になったりする。
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以下のようにバリコン軸の接触回復作業をしました
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
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[1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
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軸受けに
接点復活スプレー
を塗布して何度もバリコン羽を動かして馴染ませます。。
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仕上げに、軸受けにリチウムグリスを塗布して防錆処置します。
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大量の緑青サビが除去できました
リペア (その5):ハンダクラック補修
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ハンダクラックしやすい箇所
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左の写真は RCA 端子などと基板とのハンダ付け部分です。
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リアパネルと基板の2方向からストレスが掛かるのでハンダクラックしやすいのです。
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右の写真は放熱器が取り付けられたパワートランジタ [X801] と基板とのハンダ付け部分です。
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B (ベース) 端子にハンダクラックが見られます。
放置すると間もなく電源投入できない障害に至ったと思います。
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放熱器と基板の2方向からストレスが掛かるのでハンダクラックしやすいのです。

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ハンダクラック補修
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[RCA 端子] [OUTPUT LEVEL ボリューム] [FM/AM アンテナ端子] のハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
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[X801] のハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
リペア (その6):その他
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リアパネルにある [OUTPUT LEVEL] ボリュームのガリ対策 ・・・ 修理依頼者の要求
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試したところガリはありませんでしたが、要求なので
接点復活スプレー
を塗布しました。
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フロントパネル内の清掃
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照明 LED 化作業でフロントパネルを分解した時に、合わせてパネル内を清掃しました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| W802 (X801-E) |
+12.8V |
+12.7V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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再調整結果
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FM 受信
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FM フロントエンドで大きなトラッキングのズレがあり、再調整で感度アップしました。
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到着時にボロボロだった性能が以下のような素晴らしい性能に蘇りました。
当然、音も非常に良くなりました。
| 項目 |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
stereo |
56 |
57 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
mono |
0.050 |
% |
| stereo |
0.054 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
stereo |
-77 |
-71 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
mono |
0 |
+0.32 |
dB |
| REC LEVEL CHECK 信号 |
mono |
339.8 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
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AM 受信
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感度低下していた最大の原因はバーアンテナの調整レバーを誰かが触ったためでした。
再調整で感度がグ~ンと上がりました。
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周波数ズレは AM フロントエンドのトラッキング調整で直りました。
今では指針とダイヤルがほぼ合います。
使ってみました
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デザイン
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無骨な顔をしていますが、通信機のカチッとした雰囲気があり、好みです。
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フロントパネルは分厚い梨地仕上げのアルミで重厚感があります。
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ダイヤルスケールも梨地アルミ製で、ノギスの目盛のような精密感があります。
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今回、照明 LED 化したので更に見栄えが良くなりました。
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[TUNING] ノブの奥側は僅かなテーパー(スカート)仕上げで、とても良いです。
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アナログメータががなく、代わりに LED の [T メータ] [S メータ] があります。
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FM アンテナ入力は F 端子だけなので、雑音電波が混入しないです。
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感度と音質
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FM の感度は良く、十分高音質です。
柔らかい音で嫌味感がありません。
これが PTL 検波の音だと思います。
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AM はバーアンテナなので、感度が良いです。
音質は AM なのでそれなりです。
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総合して、かなり良いチューナと思います。