YAMAHA T-2 (8号機) が到着!
2024年6月7日、神奈川県川崎市の T さんから
YAMAHA T-2
の修理依頼品が到着しました。
この写真は修理依頼者が照明 LED 化した後です。
FM 専用機
で定価13万円の高級チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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使っているいると、突然プツンと音が出なくなり、S メータも振れなくなります。
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再現性はあり、1時間ぐらい使うと現象が出ます。
一旦電源 OFF し、5分程度後に電源 ON すると直ります。
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現象が出た時にテスタで測定したら、[TR240] のエミッタの 13.2V が 2.7V しか出ていませんでした。
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これ以上は自分では難しいと思いました。
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オークションで手に入れ 照明の LED 化と電解コンデンサの交換は自分でやりました。
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修理と再調整をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [1185] で、電源コードの製造マーキングよりは製造年は不明でした。
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汚れはありますが、全体的に綺麗な状態で特に問題ないです。
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リアパネルの端子類に錆が出ていますが使えると思います。
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この機種によくある [S メータ] [T メータ] の指針の塗装ハゲが出ておりブツブツ状態になっています。
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電源 ON してチェック
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電源が入り、修理依頼者で実施した LED 化は濃い緑色表示となっています。
周波数表示器と操作ボタンは良好です。
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当方の環境では [S メータ] の振れが65くらいで、特に問題なくステレオ受信できました。
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アナログ指針に +0.2~0.3MHz 程度の周波数ズレがあります。
89.7MHz の放送が 90.0MHz くらいで受信します。
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現状のオーディオ性能を測定してみました。
経年変化で性能低下しています。
項目 |
IF MODE |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
LOCAL |
stereo |
29 |
32 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
LOCAL |
mono |
0.12 |
% |
stereo |
0.13 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
LOCAL |
stereo |
-37 |
-40 |
dB |
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カバーを開けてチェック
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使用 IC のロット番号より、本機は [1977年製造品] とわかりました。
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内部は非常に綺麗です。
電解コンデンサの大部分が交換されていました。
目視で劣化とわかる部品は無さそうです。
リペア (その1):使っているいると、突然プツンと音が出なくなり、S メータも振れなくなる
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調査
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半日以上ロングランしてみましたが再現しませんでした。
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再現しないことには不具合箇所を特定できません。
困った!
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修理依頼者と協議
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修理依頼者に状況をお伝えし、今回は再調整だけして返却することにしました。
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現象が頻発するようになったら、あらためて修理依頼していただきます。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
#4-4pin |
+5V |
+4.91V |
〇 |
#5-5pin |
+13V |
+12.6V |
〇 |
#5-6pin |
-13V |
-13.9V |
〇 |
R205 (470Ω) 右側 |
+13.2V |
+13.3V |
〇 |
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FM 受信部の再調整
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調整結果
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FM フロントエンドのトラッキング調整にてアナログ指針と周波数ダイヤルはほぼ合うようになりました。
±0.1MHz の精度に入っています。
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到着時に落ち込んでいたステレオセパレーションなどは再調整で蘇り、音の解像度が大きく上がりました。
項目 |
IF MODE |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
LOCAL |
stereo |
50 |
50 |
dB |
DX |
30 |
33 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
LOCAL |
mono |
0.10 |
% |
stereo |
0.11 |
% |
DX |
mono |
0.17 |
% |
stereo |
0.22 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
LOCAL |
stereo |
-63 |
-60 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
LOCAL |
mono |
0 |
-0.34 |
dB |
REC CAL |
LOCAL |
mono |
304.7 |
Hz |
-5.9 |
dB |
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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今回は再調整時間も含めて1日以上通電しましたが、「音が出なくなる」現象は再現しませんでした。
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ともかく再現しないことには原因を特定しようがありません。
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同じ事例の経験からは電源部の整流ダイオードやパワートランジスタのハンダクラックが原因のことが多かったです。
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よって、上記のハンダ付け部を補修ハンダ付けで直るかもしれません。
今回は再現させることを優先したので実施していません。
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修理依頼者は電解コンデンサ交換や LED 化できるスキルのあるかたなので、やられてもよいかと思います。
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不具合が再現しないので対策はできませんでしたが、再調整で本来の性能が蘇っています。
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デザイン
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まずはズッシリ重たいことに驚きます。
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全体が厚いアルミ材で出来ており、とっても高級感があります。
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YAMAHA らしい優れたデザインです。
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操作性
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一般的な操作は直感で判ります。
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チューニングノブの動きは高級機らしい重みがあってスムーズです。
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アンテナ端子は F 端子のため、妨害電波の混入を防げます。
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FM 受信
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妨害波排除能力は強力です。
出てくる音は解像度感のあるシッカリした音です。