YAMAHA TX-2000 (6号機) が到着
2023年12月23日、さいたま市の Y さんより、
YAMAHA TX-2000
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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FM/AM とも受信はできておりますが、受信の感度が低いです。
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FM アンテナ入力で、T-106 の S メータでは BayFM (78.0MHz) 50dBf と InterFM (89.7MHz) 65dBf の環境です。
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TX-2000の 場合は、InterFM は聴けますが、BayFM では受信レベルが低く聴き取りにくいです。
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他の機能などは動作しているようです。
AM のアンテナはありません。
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チューニンノブの軸が偏心しているため、回すのに力が要ります。
可能であれば修理をお願いします。
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ノブを外して、マイナスのドライバーで直接回せる状況です。
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BayFM から InterFM まで回すのは、しんどいです。
現状ではプリセットで使う選択枝です。
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外観
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製造シリアル番号は [E016208SU] で、電源コードの製造マーキングよりは製造年は判明しませんでした。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はないです。
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僅かに細かいキズはありますが、全体的には新品に近い綺麗な逸品です。
側板も綺麗です。
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側板の色が左右で違うような。
右側が本来の色合いで、左側は色が薄いです。
日焼け?
性能には問題ないので放置です。
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[TUNING] ノブは固くて回すのに相当力を入れる必要があります。
修理依頼者のいう「ノブ軸の偏心」ではないような。
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操作パネルの左側がグラグラしています。
[POWER] スイッチのガイド枠が外れており、うまく押せない。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、ランプ切れはなく、操作もできます。
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FM 受信
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放送を受信できて [STEREO] 表示も出ます。
やや同調点ズレしているようです。
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84dB 程度の電波で S メータの振れは 20~30 です。
感度が低下しているようです。
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音は良くステレオ感もあります。
再調整でかなり良くなりそうです。
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AM 受信
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手持ちの純正ではないループアンテナを接続してチェックしました。
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良好に受信できました。
感度も良いです。
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カバーを開けてチェック
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本の少し煤状の汚れはありますが、かなり綺麗です。
目視で劣化とわかる部品は見当たりません。
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使っている IC のロット番号より、本機は [1988年製造品] とわかりました。
リペア (その1):[TUNING] ノブの動きが固い
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調査
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修理依頼者からは [チューニンノブの軸が偏心している] と聞いています。
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どれくらい固いかというと、思い切り力を入れないと回らないのです。
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調べたところ、偏心ではなく単にグリスの固着でした。
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修理
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注射器を使って軸の僅かな隙間から無水アルコールを流し込み、グリスを柔らかくしました。
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仕上げに軸に潤滑油を流し込みました。
もう [TUNING] は軽く回ります。
直りました!
リペア (その2):操作パネルの左側がグラグラしている/ [POWER] スイッチのガイド枠が外れている
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調査
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フロントパネルを分解して状態を確認しました。
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[操作パネルの左側] [POWER スイッチのガイド枠] のいずれも接着が外れたためとわかりました。
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下の写真で橙色に見える部分に接着剤が塗布されていたのですが、これが外れたのです。

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修理
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G17 ボンドを再塗布して接着し直しました。
右の写真は再接着中の様子です。
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当たり前ですが、直りました!
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操作パネルの左側を押してもグラグラしません。
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[POWER] スイッチは小気味よく ON/OFF できます。
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ついでにフロントパネル内を清掃しました。
リペア (その3):FM の感度が低下している
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調査
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放送波で、FM フロントエンドに実装されている下の写真で赤〇で囲んだトリマコンデンサを簡易調整してみました。
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[S メータ] を見ながらの簡易調整ですが、右からの3個は反応はするがピークが判り辛いです。
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一番左の1個は回しても全く反応がないです。
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この時点でトリマコンデンサが4個とも劣化していると判定しました。

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修理
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トリマコンデンサ×4個を下の写真のようにセラミックトリマコンデンサ 10pF に交換しました。
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放送波による簡易調整で [S メータ] はグ~ンと振れるようになりました。
直りました。
正式調整は再調整作業で行います。

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劣化していたトリマコンデンサ
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右の写真は、基板に実装されていた劣化していたトリマコンデンサです。
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トリマコンデンサの裏側のハトメ部分が錆て接触不良になって劣化するのです。
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使用環境か保管環境の湿度が高いと劣化しやすいです。
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劣化すると交換するしかないです。
リペア (その4):半田クラック予防
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ハンダクラックしやすい箇所
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リアパネルにある端子類のリードは基板にハンダ付けされています。
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このリードにはリアパネルと基板からの2方向からストレスを受けるので、ハンダクラックしやすいです。
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左の写真の赤〇はオーディオ出力端子のリードのハンダ付け箇所です。
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右の写真の赤〇は FM アンテナ端子と AM アンテナ端子のハンダ付け箇所です。

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予防対策
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上の写真で赤〇で囲んだハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
リペア (その5):その他
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FM 受信でやや同調点ズレしている
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内部基板などにほんの少し煤状の汚れがある
再調整
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内部電源の電圧チェック
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以下のように問題なく良好でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| +30 |
+29±1V |
+28.2V |
〇 |
| +12 |
+12.5±0.5V |
+12.3V |
〇 |
| -12 |
-12.5±0.5V |
-12.2V |
〇 |
| +6 |
+6±0.5V |
+6.01V |
〇 |
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FM/AM 受信部の再調整
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調整結果
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FM 受信部
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ステレオセパレーションが大きくアップして、聴き違えるほどの解像度の高い良い音になりました。
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高調波歪率などは以下のように、非常に良好な数値に調整できました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
65 |
65 |
dB |
| NARROW |
63 |
61 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.026 |
% |
| stereo |
0.026 |
% |
| NARROW |
mono |
0.091 |
% |
| stereo |
0.091 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-75 |
-69 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
-0.01 |
dB |
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AM 受信部
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[純正 AM ループアンテナ] が添付されなかったので、IF 調整だけしました。
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AM の場合、ループアンンテナも同調回路の一部なので、無いと完全な調整ができません。
使ってみました
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修理が終わって
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電子回路の修理より、機構部の修理が大変でした。
TX-2000 のフロントパネルの分解は結構面倒なのです。
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やっと新品時の状態に蘇り、音は素晴らしく良くなりました。
これが癒しになります。
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デザイン
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YAMAHA のデザインは実に良いです。
緻密な感じもします。
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天板までアルミ材で高級感があります。
サイドウッドも高級感を醸し出しています。
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YAMAHA チューナの [S メータ] はクオリティメータとなっています。
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[電波レベル]-[マルチパス妨害レベル] のような振れ方になっています。
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電波レベルが強くてもマルチパス妨害が多いと振れが少なくなります。
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マルチパス妨害がない綺麗な電波状態だと 80dB でフルになります。
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FM 受信
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感度は非常に高く、妨害波排除能力も高いです。
S/N が抜群に良く、非常にクリアに聴こえます。
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柔らかい音の中にも解像度がある素晴らしく良い音です。
音のエネルギーの重心がやや低音側にあります。
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揺らぎを感じないので、ピアノの音が豊かで綺麗に出ます。
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AM 受信