KENWOOD L-03T (13号機) が到着
2026年8月19日、福岡県大牟田市の K さんより
KENWOOD L-03T
の修理依頼品が到着しました。
定価12万円
の
FM 専用高級チューナ
です。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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大手中古品販売店舗にて購入して約3ヶ月程度使用しました。
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通常受信はできているものの感度が悪く、S メータは 3.5 程度しか振れません。
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STEREO ランプが点灯しません。
周波数ズレが -0.3MHz ほどあります。
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MUTE LEVEL つまみにガリがあります。
オーディオ出力にガリ音が乗るとのこと。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [44K10210] で、電源コードの製造マーキングより [1984年製造品] と判明しました。
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Σケーブルの添付はありませんでした。
Σケーブルでの試験はできないです。
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フロントパネル
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真正面から見ると綺麗ですが、天板への折り返しエッジにアルマイトハゲがあります。
左側に多いです。
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[TUNING] ノブのエッジの1個のごく小さいアルマイトハゲがあります。
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[周波数ダイヤル板] にズレや剥がれはなく良好です。
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リアパネル自体は綺麗ですが、RCA 端子に僅かなクスミがあります。
この程度は問題ないと思います。
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天板には多くの薄いスレがありますが、致命的な損傷はありません。
底板は綺麗です。
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底板に [03.11.19] と書かれた KENWOOD サービスのメンテナンスシールが貼られていました。
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2003年/平成3年/令和3年 のどれかわかりませんが、11月19日にメーカ修理されているようです。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入りました。
ランプ切れはなく各スイッチも正常に反応します。
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放送の周波数より、指針が -0.4~-0.3MHz 程度低い周波数で受信します。
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[S メータ] [T メータ] は正常に振れ [SERVO LOCK] ランプが点灯して正常な音が出ます。
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ただし、[STEREO] ランプは点灯しませんでした。
[REC CAL] スイッチ ON で正常なテスト音が出ます。
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筆者の環境(電波レベルは 86dBuV で強電界レベル)では [S メータ] の振れは 4.7 で、感度落ちは感じません。
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修理依頼者によると「MUTE LEVEL つまみにガリがある」とのことですが、確認できませんでした。
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カバーを開けてチェック
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バリコンの軸と接触プレートの間に緑青サビが出ています。
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基板は綺麗で目視で明らかに劣化とわかる部品は見当たりません。
リペア (その1):バリコンの軸と接触プレートの間に緑青サビが出ている
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概要
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右の写真のように、バリコン軸と接触プレートの間に緑青サビが出ています。

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サビは絶縁物なので接触不良となり、以下の現象が出ます
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周波数の低い辺りで指針を動かすとゴソゴソという雑音が出る。
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感度が落ちたり、受信が不安定になったりする。
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修理
以下のようにバリコン軸の接触回復作業をしました。
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを 爪楊枝/歯間ブラシ/歯間糸楊枝 を使って丹念に落とします。
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[1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
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接点復活スプレー
を軸受けに少量吹きかけ馴染ませます。
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仕上げに、軸受けにリチウムグリスを塗布して防錆処置します。
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修理後の動作チェック
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緑青サビがバリコンの動作に影響を与えていたようで、周波数ズレのバラつきが、やや改善しました。
リペア (その2):ハンダクラック予防補修
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ハンダクラックしやすい箇所
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左の写真は RCA 端子裏側で、リードが直接基板にハンダ付けされています。
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このハンダ付け部分にはリアパネルと基板の2方向から常にストレスが掛かっているのでハンダクラックしやすいです。
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右の写真で黄〇で囲んだ箇所にあるのはパワートランジタで、リードが直接基板にハンダ付けされています。
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パワートランジスタ自身の発熱でハンダ付け部分が徐々に劣化してハンダクラックしやすいです。

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修理 (予防補修)
リペア (その3):その他
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-0.4~-0.3MHz 程度の周波数ズレがある
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FM フロントエンドの OSC トリマコンデンサ調整が経年変化でズレていました。
再調整で直りました。
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[STEREO] ランプが点灯しない
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MPX VCO 調整が経年変化でズレていました。
再調整で直りました。
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[MUTE LEVEL] ツマミにガリがある ・・・ 修理依頼者より
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筆者の環境では再現しませんでしたが、以下のように推定します。
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筆者の電波レベルはかなり高い (86dB) ので、[MUTE LEVEL] の接触不良があっても再現しないのだろう。
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修理依頼者の電波レベルはちょうど [MUTE LEVEL] の閾値の近くで、接触不良があると音が一瞬途切れるのだろう。
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以上の推定に基づき、[MUTE LEVEL] ボリュームに
接点復活スプレー
を噴射しました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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電源修理後は下のように正常でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| Q42-E |
+12V |
+11.7V |
〇 |
Tuner |
| IC24-OUT |
+8V |
+8.06V |
〇 |
AF / Control |
| IC23-OUT |
-8V |
-8.10V |
〇 |
| D1-K |
+12V |
+12.0V |
〇 |
Front End (OSC) |
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FM 受信部の調整
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調整結果
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OSC トラッキングの再調整で周波数ズレは以下となりました。
±0.1MHz 以内なので良い状態です。
| SSG 周波数 (MHz) |
76 |
78 |
80 |
82 |
84 |
86 |
88 |
90 |
| 指針が示す周波数 (MHz) |
75.94 |
78.02 |
80.08 |
82.04 |
83.98 |
85.92 |
87.92 |
90.06 |
| 周波数ズレ (MHz) |
-0.06 |
+0.02 |
+0.08 |
+0.04 |
-0.02 |
-0.08 |
-0.08 |
+0.06 |
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修理依頼者は「感度が悪い」と言っていますが、それはなかったです。
L-03T の [S メータ] の振れはこんなものです。
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RF トラッキング調整で少し感度が上がったのでお試しください。
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[FM RF SEL] = DISTANCE で、[S メータ値:電波レベル] を測定してみました。
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[FM RF SEL] = DIRECT は放送塔が目の前など電波が強過ぎる場合に使うモードで、普通は使いません。
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結果は、[1:15dB] [2:21dB] [3:27dB] [4:42dB] [4.5:60dB] [4.7:70dB 以上] でした。
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例えば、[S メータ] の振れが [3] の時は電波のレベルが [27dBuV] であることを示します。
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以上より、STEREO 放送を S/N 良く受信するには、本機では [S メータ] が 4.5 以上振れる必要があるとわかります。
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ステレオセパレーションと高調波歪率は一級品的な素晴らしく良い値が出ました。
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音の解像度が上がり、ビックリするほど良い音になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
49 |
50 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0048 |
% |
| stereo |
0.0048 |
% |
| NARROW |
mono |
0.033 |
% |
| stereo |
0.034 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-75 |
-75 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.09 |
dB |
| REC CAL 信号 |
WIDE |
mono |
445 |
Hz |
| -6.3 |
dB |
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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到着時に主な不具合は「周波数ズレ」「STEREO ランプが点かない」だけで、これ以外は極めて良好でした。
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修理依頼者が心配されている感度落ちもなさそうです。
おそらく、[FM RF SEL] = DIRECT で S メータの振れが少ないと思われているのでは?
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L-03T としては最高性能が出ているので、当たりの個体です。
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再調整が終わった本機は素晴らしい高性能と高音質が出ました。
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これで音が劣ると感じられるのなら、修理依頼者と本機は相性が悪いのだと思います。
(音の好みが違う。)
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デザイン
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ダイヤルスケールは最前面で照明はありませんが見易いです。
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黒いダイヤルスケールと赤い指針のマッチングが良いです。
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チューニングノブはタッチセンサになっています。
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[LOCK] スイッチ ON で同調サーボロックがかかります。
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感度や音質
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このクラスになると流石に良い
です。
安定度とか音質とかスペック表現できない部分が超優れています。
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感度が良く、高解像度でカチッとした超高音質です。
高域も低域もよく出ています。
S/N も良いです。
性能は超一流です。
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高解像度の音なのにハーモニー再現力もあります。
音に余裕があると言うか、この辺りが一般機との差です。