Pioneer F-700 (2号機) が到着
2024年3月26日、沖縄県那覇市の U さんより
Pioneer F-700
の修理依頼品が到着しました。
パルスカウント検波
の FM 専用機で7連バリコンです。
この写真は照明を LED 化した後です。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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デザインが気に入り、最近ヤフオクで購入したのですが、残念ながら以下の不具合がありました。
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周波数が左にずれている。
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感度が悪く安定しない。
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DEVIATION と SIGNAL メータの照明が暗い。
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音については、素人耳ですが良く出ているように感じられ、ノイズもありません。
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照明については、ダイヤル含めて全て白の LED 化をお願いしたいです。
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外観
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製造シリアル番号は [ZI1001896] です。
電源コードには製造マーキングがなく、ここからは製造年は不明でした。
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キズや汚れはありますが、全体的には綺麗です。
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各スイッチトップにサビが出ています。
リアパネルの端子類には白いサビが出ています。
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電源 ON してチェック
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ランプ切れはなさそうですが、メータ照明がかなり暗いです。
スイッチ操作は正常そうに反応します。
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-0.6MHz 程度の周波数ズレがあります。
80MHz の放送が 79.4MHz 辺りで受信します。
S メータの振れは小さいです。
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感度低下していますが、パルスカウントの音そのものの良い音で受信できます。
[STEREO] ランプも点灯します。
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カバーを開けてチェック
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使用 IC のロット番号とメータの製造マーキングより、本機は [1979年製造品] とわかりました。
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基板は綺麗ですが、電源部に使っている電解コンデンサに膨張や被覆後退が見られます。
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フロントエンドのトリマコンデンサを放送波で調整してみましたが、容量変化が連続でなく故障しています。
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バリコンギア機構のプーリー軸が外れかかっています。
完全に外れるとギアがバラバラになり、修理不能になります。
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バリコン軸と GND プレートの間に緑青サビが出ています。
手直しが必要です。
リペア (その1):S メータの振れが小さく感度低下している
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原因
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FM フロントエンドに使われている RF 回路のトリマコンデンサが劣化故障したためです。
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修理
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左の写真で赤〇で囲んだ部品が交換後のトリマコンデンサです。
セラミック型 10pF を使いました。
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右の写真は、これまで基板に実装されていた故障したトリマコンデンサです。
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底にあるハトメ部分がサビて接触不良となり、故障したのです。

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交換後に再調整してビュ~ンと S メータが振れるようになって、直りました!
リペア (その2):電源部の電解コンデンサが膨張など劣化している
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交換リスト
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耐熱性の高い 105℃ クラス品にして信頼性を上げました。
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一部、容量を上げ電源の安定化を図りました。
一部、耐電圧を上げ信頼性を上げました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C165 |
2200uF/25V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
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| C166 |
2200uF/25V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
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| C167 |
470uF/50V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
ここは耐圧 25V 以上あれば問題ない |
| C168 |
470uF/50V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
| C169 |
47uF/25V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
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| C170 |
47uF/25V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
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| C171 |
100uF/10V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
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| C175 |
470uF/16V (85℃) |
470uF/16V (105℃) |
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| C177 |
470uF/16V (85℃) |
470uF/16V (105℃) |
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交換実施
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左の写真で赤〇で囲んだ部品が交換後の電解コンデンサです。
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技術の進化でサイズは半分以下になりました。
風通しが良くなるので信頼性が上がります。
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右の写真は、これまで基板に実装されていた古い電解コンデンサです。

リペア (その3):照明用フィラメントランプの完全 LED 化
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従来のフィラメントランプでの照明
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ダイヤル照明は [12V/0.3A ウェッジ球]×3個で行っています。
メータ照明は [12V/0.1A 麦球]×2個で行っています。
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よって、照明だけで 12V×0.3A×3個+12V×0.1A×2個=13.2W 電力消費しています。
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フィラメントランプは AC 駆動されているので、このまま LED へリプレースできず、フィラメントランプと配線を撤去しました。
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ちなみにメータ照明用ランプは2個とも切れていました。
暗いと思ったのはダイヤル照明の漏れ光で僅かに照明されていたのでした。
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リプレースに使う LED
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左の写真のウェッジ LED 球はダイヤルスケールの照明に使います。
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1個あたり、[ウォームホワイト (電球色に近い) 高輝度 LED]×8個を搭載しています。
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右の写真の LED はメータの照明に使います。
3mm 砲弾型 LED で [白色、25000mcd、照射角30度] です。
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照射角30度では均一な照明ができないので、シリコンゴム製の [光拡散キャップ] を併用します。
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[光拡散キャップ] の効果は絶大で、かなり均一な明るさになりました。

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LED 化回路
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LED は DC 駆動する必要があるので [C166] 電解コンデンサの両端から電圧を取りました。
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F-700 は±電源で動作していますが、マイナス側のほうが電流に余裕があるので、こちらから電流を取りました。
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少しでも消費電力を減らす目的で少々複雑な回路になっています。

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消費電力は 25V×53.8mA=1.3W となります。
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フィラメントランプの時は 13.2W 消費していたのが 1.3W と激減しました。
明るくなって 12W もエコになりました!
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LED 化完成
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左の写真は LED 化後のメータ付近です。
右の写真は、これまで実装されていたフィラメントランプで、廃棄します。

リペア (その4):バリコン軸に緑青サビが出ている
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右の写真はバリコン軸受けです
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軸と軸受板に緑色に見える部分があります。
これが緑青サビです。
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サビは絶縁物なので接触不良となり、以下の現象が出ます
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周波数の低い辺りで指針を動かすとゴソゴソという雑音が出る。
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感度が落ちたり、受信が不安定になったりする。
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以下のようにバリコン軸の接触回復作業をしました
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
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[1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
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軸受けに
接点復活スプレー
を塗布して何度もバリコン羽を動かして馴染ませます。。
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仕上げに、軸受けにリチウムグリスを塗布して防錆処置します。
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大量の緑青サビが除去できました。
結構手間がかかりましたが、以上で回復しました。
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ボロッとした大きなサビが取れました。
かなり酷い状態だったようです。
リペア (その5):バリコンギア機構のプーリー軸が外れかかっている
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右の写真の赤〇で囲んだ軸部分に隙間が見えますが、隙間がないのが正しいです
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古いチューナはこの故障が実に多いです。
隙間があるとバックラッシュが大きくなります。
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隙間がもっと広がるとプーリー軸が脱落してギアがバラバラに外れ、修理不能に陥ります。
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修理はバリコンメーカしかできないと思いますが、対応していません。
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別の対策をします。
要はプーリー軸を右側から押さえ込めばよいのです。
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修理
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プーリーの右側にくるのは天板カバーの側面です。
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側板に特注アクリル板を貼り付けて、側板側からプーリー軸を押さえ込みます。
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まずは測定
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[プーリー]~[側板] の距離をノギスを使って正確に測定します。
3.5mm でした。
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プーリー軸の中心位置を測定して、側板側に十字マーキングします。
これがミソ!
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測定結果より、何種類か常備している特注アクリル板の [50×50×2mm] が適合するとわかりました。
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[プーリー]~[側板] のクリアランスは 1.5mm になりますが、プーリーはマクロ的には歪みながら回転するので、この程度が良いです。
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特注アクリル板の保護シートにも中心を示す十字マーキングを入れます。
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側板と特注アクリル板の十字マーキングを合わせて貼り付けると中心位置が合うという巧妙なテクニックです。
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接着剤には [コニシ G17 ボンド] を使い、左の写真のように貼り付けました。
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右の写真は完成後です。
カバーを取り付けると特注アクリル板がプーリーを左に押して正常位置を保ちます。

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完成後、カバー取り付け、期待通りにプーリー外れを防げ、同調ノブの動きもスムーズなことを確認しました。
リペア (その6):ハンダクラック対策
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ハンダクラックの状況確認
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左の写真は初段バリコン端子と基板とのハンダ付け部分です。
端子の周りに亀裂が見えますが、これがハンダクラックです。
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目視ではハンダクラックはほとんどわかりません。
ここまで拡大しないとわからないのです。
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今回は RF 調整してもすぐズレるので、なぜだろう?と調べてみて、やっとわかりました。
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右の写真はリアパネルにある RCA 端子と基板とのハンダ付け部分です。
このくらいの拡大倍率だと問題なさそうに見えますよね。
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ルーペで拡大して観察すると数ヵ所にハンダクラックがありました。
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この部分はリアパネルと基板の2方向から常にストレスを受けているので、クラックしやすいのです。

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修理
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バリコンの全端子を補修ハンダ付けしました。
また FM フロントエンド部のハンダ付け部分を全面的に補修ハンダ付けしました。
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全部の RCA 端子と基板のハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
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以上で直りました!
リペア (その7):[各スイッチトップ] [リアパネルの端子] にサビが出ている
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[各スイッチトップ] サビ
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原因はスイッチトップのメタルメッキが空気に触れてサビるためです。
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サビを擦って落とし、防サビ処置として
PC ボードプロテクタ
で保護コーティングしました。
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この保護膜は薄いので、またいつか剥がれるかもしれませんが、とりあえずマシになりました。
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[リアパネルの端子] のサビ
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F 端子のクリーニングは難しいので、RCA 端子だけ処置しました。
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サビを擦って落として、実用レベルになりました。
これは接栓なのでコーティングはできません。
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使わない端子には RCA ダストキャップを被せて空気に触れないようにすることをお奨めします。
リペア (その8):各部清掃 (オマケ)
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フロントパネルの透明板にポツポツとしたゴミがあってイマイチ
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OA クリーナで軽く清掃したらポツポツのゴミは取れて綺麗になりました。
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天板にやや汚れがある
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OA クリーナで清掃してから
カーワックス
仕上げしました。
少しマシになりました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| Q52-E |
+13V |
+12.8V |
〇 |
| Q56-E |
-13V |
-12.6V |
〇 |
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FM 受信部の調整
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調整結果
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パルスカウント検波用の 2nd IF が大きくズレていました。
再調整で規定値に入りました。
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FM ステレオセパレーションや高調波歪率は素晴らしく良い性能に調整できました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
51 |
51 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0095 |
% |
| stereo |
0.019 |
% |
| NARROW |
mono |
0.021 |
% |
| stereo |
0.023 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-74 |
-68 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.05 |
dB |
| REC LEVEL CHECK 信号 |
WIDE |
mono |
279.9Hz |
Hz |
| -6.0 |
dB |
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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古いバリコン式チューナは FM フロントエンド全体の劣化が多く、回復に手間と時間がかかります。
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今回も FM フロントエンド周りであちこち問題が出ていました。
全て直せて良かったです。
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バリコンってメカですからサビが出たり、機構部の不具合が出やすいです。
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シンセサイザ式チューナにはメカはないのでメンテンスが簡単で修理費用が安く済みます。
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修理&再調整で新品時の性能に戻りました。
今はすごく良い音です。
やはり F-700 は優秀です。
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デザイン
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デザインはかなり良いです。
暖かい感じがします。
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今回、手持ちのウェッジ LED 球の関係でダイヤル照明がウォームホワイトになりましたが、この色合いも目に優しくて良いです。
薄いオレンジ色の中から周波数数字が白っぽく浮き上がって見えます。
フィラメントランプの黄昏のような暗めの橙色とは全然違います。
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指針が T メータを兼ねており、指針を見つめるだけで最良の同調点に合わせることができます。
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[DEVATION/MULTIPAH] メータで変調度とマルチパス妨害が確認できます。
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FM アンテナ入力は F 端子なので、雑音電波が混入しないです。
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FM はビックリするほど良い音!
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音質は特筆ものです。
やはりパルスカウント検波の音は良いです。
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歪の少ないカッチリした音なのに柔らかさもあります。
音の分離が良いです。
惚れ惚れする高音質です。