SANSUI TU-α707i (2号機)

SANSUI TU-α707i (2号機) が到着

2024年8月1日、東京都港区の I さんより SANSUI TU-α707i の修理依頼品が到着しました。

この写真は修理完了後で、底板に付いているはずの脚が欠品していたので、プチプチに乗せて撮影しています。

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程度＆動作チェック

1. 修理依頼者のコメント
   
   
   • 修理＆再調整をお願いします。
     
     
2. 外観
   
   
   • 製造シリアル番号は [617121141] で、電源コードの製造マーキングより [1987年製造品] とわかりました。
     
     
   • [純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
     
     
   • [サイド飾り] [底板の脚] がありません。 本機は標準ラックに組み込まれていたのだと思います。
     
     
   • あちこちに線スレがありますが、パッと見は綺麗に見えます。 リアパネルの端子類はピカピカで状態が良いです。
     
     
3. 電源 ON してチェック
   
   
   • 電源は問題なく ON できましたが、表示器の輝度が輝度が極端に下がっており状態を把握し辛いです。
     
     
   • 操作スイッチはそれないり反応し問題なさそうです。
     
     
   • FM 受信
     
     
     • [STEREO] 表示が出て問題なく受信できます。 音も良いです。
       
       
     • S メータはマトモに振れ、[REC CAL] スイッチ ON でテスト音が出ます。
       
       
   • AM 受信
     
     
     • 手持ちの純正ではない AM ループアンテナを接続してチェックしました。
       
       
     • 問題なく良好に受信できます。 感度も良いです。
       
       
4. カバーを開けてチェック
   
   
   • 内部もとても綺麗で、目視では劣化している部品はなさそうに思いました。
     
     

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リペア (その1)：表示器の輝度が輝度が極端に下がって見えない

1. 調査と原因
   
   
   • 電源 ON 直後はディスプレイが全く表示しません。 時間が経つとごく薄っすらと表示が出ます。
     
     
   • こうした場合、[ディスプレイそのものの寿命] [ディスプレイ電圧異常] のいずれかです。
     
     
     • 前者だと同じディスプレイは専用品なので入手不可で、直しようがありません。
       
       
     • 後者に期待して電源基板からの出力電圧をチェックすると、[-27V] 電圧が異常でした。
       
       
     • この電圧はディスプレイ (FL) への表示ドライブ電圧です。 ひょっとしたら直るかも！
       
       

       VP	標準値	実測値	判定	備考
       電源基板 [JP2] +29V	+29V	+28.8V	〇	VT
       電源基板 [JP2] +12V	+12V	+12.5V	〇	TUNER
       電源基板 [JP2] +18V	+18V	+21.4V	〇	FL
       電源基板 [JP2] +5.6V	+5.6V	+5.67V	〇	MCU
       電源基板 [JP2] -27V	-27V	-5.11V	×	FL

       
       
   • 下は [電源基板] の一部の回路です。
     
     
     • [-27V] を作成する回路の [mC19] 330uF/35V の電解コンデンサが完全に容量抜けしていました。
       
       
     • 赤枠で囲んだ電解コンデンサです。 これが原因です。
       
       
       
       
2. 修理
   
   
   • [mC19] を [330uF/35V (85℃)]→[330uF/63V (105℃)] の高耐熱・高電圧品に交換しました。
     
     
   • ディスプレイは明るく表示するようになりました。 直りました！！！
     
     
   • 新品同様の輝度になった訳ではなく輝度低下とヤセ・ムラがあります。 これはディスプレイの劣化なので直せないです。
     
     
   • なお、操作に支障のない程度には輝度が回復しています。
     
     
     
     

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リペア (その2)：[電解コンデンサ] [電気二重層コンデンサ] ほぼ全数交換

1. 概要
   
   
   • ここまでで機能的には直ったのですが、本機は [電解コンデンサ] [電気二重層コンデンサ] の劣化が懸念されます。
     
     
     • 「リペア (その1)」で電解コンデンサの容量抜けがあったので、全ての電解コンデンサが劣化している可能性があります。
       
       
     • [電気二重層コンデンサ] は電源 OFF 時にプリセットメモリをバックアップします。 本機は製造から37年経っているのでそろそろ寿命でしょう。
       
       
   • 「ほぼ」と言うのは、[DISPLAY 基板] の電解コンデンサは表示器の下にあって交換困難なためです。
     
     
2. 交換リスト
   
   
   • できるだけ高耐熱・高耐圧品を使いました。 リストは「リペア (その1)」で交換した分も含みます。
     
     
   • オーディオ信号が通過する電解コンデンサにはオーディオクラス品を使いました。 リストでは [FG] としています。
     
     
     • オーディオクラス品には高耐熱品がないので85℃耐熱になりますが、これらは熱源から離れているので大丈夫です。
       
       
   • 1uF 以下は電解コンデンサより ESR が低く高周波特性の良い積層セラミックコンデンサにしました。
     
     
     • 電解コンデンサより高価ですが経年劣化しないです。 リストでは [積セラ] としています。
       
       

     セクション 部品番号 交換前 交換後 FM dC7 470uF/16V (85℃) 470uF/16V (105℃) dC26 0.47uF/100V (85℃) 0.47uF/50V (積セラ) dC28 0.1uF/100V (85℃) 0.1uF/50V (積セラ) dC37 0.68uF/100V (85℃) 0.68uF/50V (積セラ) dC52 10uF/50V (85℃) 10uF/50V (105℃) dC58 47uF/50V (85℃) 47uF/63V (105℃) dC63 47uF/50V (85℃) 47uF/50V (FG) dC64 100uF/25V (85℃) 100uF/25V (105℃) dC67 100uF/16V (85℃) 100uF/25V (105℃) dC68 47uF/50V (85℃) 47uF/63V (105℃) dC69 470uF/16V (85℃) 470uF/16V (105℃) dC70a 100uF/16V (85℃) 100uF/25V (FG) dC70b 100uF/16V (85℃) 100uF/25V (FG) dC75 0.47uF/100V (85℃) 0.47uF/50V (積セラ) dC76 0.47uF/100V (85℃) 0.47uF/50V (積セラ) dC77L 22uF/50V (85℃) 22uF/50V (FG) dC77R 22uF/50V (85℃) 22uF/50V (FG) dC79 1uF/50V (85℃) 1uF/50V (積セラ) dC82 1uF/50V (85℃) 1uF/50V (積セラ) dC83 1uF/50V (85℃) 1uF/50V (積セラ) dC91 100uF/16V (85℃) 100uF/25V (105℃)) dC100L 22uF/50V (85℃) 22uF/50V (FG) dC100R 22uF/50V (85℃) 22uF/50V (FG) AM eC2 2.2uF/50V (85℃) 2.2uF/50V (105℃) eC10 3.3uF/50V (85℃) 3.3uF/50V (105℃) eC11 4.7uF/50V (85℃) 4.7uF/50V (105℃) eC13 100uF/16V (85℃) 100uF/25V (105℃) eC15 1uF/50V (BP) (85℃) 1uF/50V (積セラ) eC21 47uF/16V (85℃) 47uF/16V (105℃) eC27 0.47uF/100V (85℃) 0.47uF/50V (積セラ) eC28 2.2uF/50V (85℃) 2.2uF/50V (105℃) eC29 10uF/16V (85℃) 10uF/50V (105℃) eC30 10uF/16V (85℃) 10uF/50V (105℃)

     セクション 部品番号 交換前 交換後 CONTROL fC1 470uF/50V (85℃) 560uF/50V (105℃) fC2 1uF/50V (85℃) 1uF/50V (積セラ) fC4 1uF/50V (BP) (85℃) 1uF/50V (積セラ) fC9 39mF/5.5V (電気二重層) 1F/5.5V (電気二重層) SELECTOR 基板 oC1 3.3uF/50V (85℃) 3.3uF/50V (105℃) oC3 10uF/50V (85℃) 10uF/50V (105℃) oC4 1uF/50V (85℃) 1uF/50V (積セラ) oC5 10uF/50V (85℃) 10uF/50V (105℃) oC6 4.7uF/50V (85℃) 4.7uF/50V (105℃) oC7 330uF/16V (85℃) 330uF/16V (105℃) 電源基板 mC1 220uF/35V (85℃) 220uF/35V (105℃) mC4 220uF/63V (85℃) 220uF/80V (105℃) mC5 100uF/50V (85℃) 100uF/50V (105℃) mC7 1uF/50V (85℃) 1uF/50V (積セラ) mC8 100uF/50V (85℃) 100uF/50V (105℃) mC11 2200uF/50V (85℃) 2200uF/50V (105℃) mC14 47uF/10V (85℃) 47uF/35V (105℃) mC15 1uF/50V (85℃) 1uF/50V (積セラ) mC16 1000uF/25V (85℃) 1000uF/25V (105℃) mC19 330uF/35V (85℃) 330uF/63V (105℃) mC20 470uF/25V (85℃) 470uF/25V (105℃) mC21 100uF/10V (85℃) 100uF/25V (105℃) mC24 4.7uF/50V (85℃) 4.7uF/50V (105℃) mC25 100uF/35V (85℃) 100uF/35V (105℃) mC26 47uF/50V (85℃) 47uF/63V (105℃) mC27 330uF/63V (85℃) 330uF/63V (105℃) mC28 47uF/50V (85℃) 47uF/63V (105℃) mC29 47uF/50V (85℃) 47uF/63V (105℃) DISPLAY 基板 sC1 1uF/50V (85℃) (未交換) sC4 2.2uF/100V (85℃) (未交換) sC9 10uF/10V (85℃) (未交換)

     
     
3. 交換完了
   
   
   • 左の写真は電解コンデンサ交換後で [電源基板] の辺りです。
     
     
     • 交換した電解コンデンサの外側に同心円状にプリントされている枠は元の電解コンデンサの大きさです。
       
       
       • 電解コンデンサも技術の進化で、同じ容量でもサイズが小さくなっています。
         
         
       • スカスカになって風通しが良くなったので信頼性が上がります。
         
         
     • 水色の部品は積層セラミックコンデンサです。 米粒ほどの大きさなので、この部分はスッキリしました。
       
       
     • 赤枠で囲んだ部品は新しい電気二重層コンデンサです。 この大きさで 1F の容量があります。
       
       
   • 右の写真はこれまで基板に実装されていた古い電解コンデンサです。
     
     
     • 黄色い部品は元の電気二重層コンデンサです。 大きいのに 39mF しかありません。
       
       
     　
     
     
4. 交換後の動作確認
   
   
   • 全ての動作が正常であることを確認しました。 交換は成功しました！
     
     

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再調整

1. 電圧チェック (VP)
   
   
   • 修理＆部品交換したので再度測定しました。 以下のように良好でした。
     
     

     VP	標準値	実測値	判定	備考
     電源基板 [JP2] +29V	+29V	+28.9V	〇	VT
     電源基板 [JP2] +12V	+12V	+12.5V	〇	TUNER
     電源基板 [JP2] +18V	+18V	+21.0V	〇	FL
     電源基板 [JP2] +5.6V	+5.6V	+5.64V	〇	MCU
     電源基板 [JP2] -27V	-27V	-22.3V	〇	FL

     
     
2. 調整結果
   
   
   • TU-α707 と全く同じなので、 TU-α707 に記載の手順で再調整しました。
     
     
   • FM 受信
     
     
     • FM フロントエンドで少しズレがあり、再調整で感度が上がりました。
       
       
     • PLL 検波で大きめのズレがありましたが、再調整で規定内に収まりました。
       
       
     • ステレオセパレーションが少し落ちていましたが、再調整で 10〜15dB 改善し、音の解像度が上がりました。
       
       

       項目	IF BAND	stereo/mono	L	R	単位
       ステレオセパレーション (1kHz)	WIDE	stereo	57	57	dB
       	NARROW		44	43	dB
       高調波歪率 (1kHz)	WIDE	mono	0.058		%
       		stereo	0.058		%
       	NARROW	mono	0.19		%
       		stereo	0.19		%
       パイロット信号キャリアリーク	WIDE	stereo	-80	-80	dB
       オーディオ出力偏差 (1kHz)	WIDE	mono	0	-0.06	dB
       REC CAL	WIDE	mono	468.8		Hz
       			-6.0		dB

       
       
   • AM 受信
     
     
     • AM は純正 AM ループアンテナが添付されなかったので、IF 調整だけしました。
       
       

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使ってみました

1. デザイン
   
   
   • 趣味性のある、とても良いデザインです。 持つ喜びがあります。
     
     
   • フロントパネルは、アルミ材に 漆塗りのような美しい鏡面仕上げ がされています。 これが高級感を醸し出してとってもイイです。
     
     
   • 筐体は厚い鉄板を使っていて、かなりの剛性があります。
     
     
   • プリセットメモリは FM/AM とも10局で、これだけあれば特に問題ないです。
     
     
   • FM アンテナ入力は2系統あって A/B 切り替えできます。 コネクタ形状は F 端子です。
     
     
2. 感度と音質
   
   
   • FM 受信
     
     
     • 感度は良く、受信性能は良好です。
       
       
     • 音質は PLL 検波臭さを感じさせない柔らかい音の中にも解像度感がある良い音です。 耳当たりの良い聴き易い音です。
       
       
   • AM 受信
     
     
     • 感度は良いです。 AM においても [IF BAND] ボタンは有効で、WIDE では高音部もよく出ます。
       
       

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