SONY ST-S333ESJ (4号機) が到着
2023年8月5日、東京都中野区の S さんより
SONY ST-S333ESJ
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
FM の周波数チューニングがずれている。
STEREO の受信も良くない。
AM にズレは見られない。
-
トリマーコンデンサ、バックアップメモリなどは問題なくとも予防交換をお願いします。
-
もちろん問題あればそちらの箇所は修理をお願い致します。
-
外観
-
製造シリアル番号は [200174] で、電源コードの製造マーキングより [1993年製造品] とわかりました。
-
[純正 AM ループアンテナ] が添付されていました。
-
非常に綺麗な逸品で、どこにもキズやスレが見当たらず、新品同様です。
-
リアパネルの端子類はピカピカした輝きがあります。
-
電源 ON してチェック
-
問題なく電源が入り、FL の輝度は新品同様、各ボタン操作も正常です。
-
FM 受信
-
TOKYO FM 80.0MHz → 79.9MHz で受信し、-0.1MHzの周波数ズレがあります。
-
周波数ズレはありますが、ちゃんと音が出て [STEREO] 表示も出ます。
感度は良好です。
-
AM 受信
-
問題なく良好に受信できました。
ニッポン放送 (1242kHz) では [STEREO] 表示も出ます。
-
カバーを開けてチェック
-
ほんの僅か綿埃が見られますが、非常に綺麗です。
目視では部品は問題ないように思います。
リペア
-
FUSE 抵抗のチェック
-
1本が標準値より大きく外れていましたが、動作に支障はなく、交換はしていません。
回路 |
部品番号 |
標準値 (Ω) |
実測値 (Ω) |
判定 |
備考 |
FM FRONT END |
R119 |
100 |
89.1 |
〇 |
|
WOIS |
R203 |
10 |
10.3 |
〇 |
|
R207 |
10 |
10.4 |
〇 |
|
R211 |
10 |
10.2 |
〇 |
|
R227 |
10 |
10.2 |
〇 |
|
IF |
R259 |
100 |
98.8 |
〇 |
|
DET |
R274 |
10 |
11.0 |
〇 |
|
R279 |
220 |
155 |
△ |
動作に支障はない |
R292 |
100 |
99.1 |
〇 |
|
MPX |
R301 |
10 |
10.0 |
〇 |
|
R327 |
47 |
47.6 |
〇 |
|
AM |
R403 |
220 |
221 |
〇 |
|
R410 |
150 |
150 |
〇 |
|
PLL |
R511 |
220 |
219 |
〇 |
|
R516 |
180 |
179 |
〇 |
|
CONTROL |
R626 |
47 |
47.5 |
〇 |
|
POWER SUPPLY |
R910 |
22 |
22.3 |
〇 |
|
R921 |
220 |
219 |
〇 |
|
R931 |
220 |
229 |
〇 |
|
-
-0.1MHz の周波数ズレがある
-
経年変化で調整ズレていた [IFT251] を再調整しました。
-
調整後、正しい周波数で受信でき [STEREO] 表示も出ます。
直りました!!!
-
[RF トリマコンデンサ]×3個と [電気二重層コンデンサ] の交換 ・・・ 修理依頼者の要求
-
[CT101] [CT102] [CT103] を左の写真のセラミックトリマコンデンサ 10pF と交換しました。
-
[C605] 0.1F/5.5V → 1F/5.5V に交換しました。
右の写真の縦型電気二重層コンデンサです。

-
電気二重層コンデンサは 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
-
[タンタルコンデンサ] の交換 ・・・ 予防保守
-
[C603] はタンタルコンデンサで、これもいつまで持つか心配な部品です。
-
しかも耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
-
タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
-
半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
-
心配なので、[10uF/6.3V タンタルコンデンサ]→[10uF/25V 積層セラミックコンデンサ] に予防交換しました。
-
右の写真で黄〇で囲んだ部品です。
タンタルより高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
-
ちなみに赤〇で囲んだ部品は、今回交換した [電気二重層コンデンサ] です。
-
ハンダクラック対策 ・・・ 予防保守
-
ST-S333ES シリーズでは銅製のアースバーが敷かれています。
-
これはこれで素晴らしいのですが、経年変化でアースバーでハンダクラックが発生しやすいのです。
-
アースバーの全てに補修ハンダを行いました。
-
リアパネルの端子類
-
どうしても端子のリードと基板の間で機械的なタワミを原因とするハンダクラックが発生しやすいのです。
-
目視で、オーディオ出力 RCA 端子がハンダクラック気味でした。
-
全ての端子のリードと基板のハンダ付け部分に補修ハンダを行いました。
-
交換前に基板に実装されていた部品の記録
-
左から [トリマコンデンサ×3個] [電気二重層コンデンサ 0.1F/5.5V] [タンタルコンデンサ 10uF/6.3V] です。

再調整
-
電源電圧チェック
-
特に問題なく良好です。
ジャンパー |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 (用途) |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+30.1V |
〇 |
PLL (同調) |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+14.8V |
〇 |
AUDIO SYSTEM |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.3V |
〇 |
FL 管 |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.1V |
〇 |
DIGITAL SYSTEM |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.66V |
〇 |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
FM 受信
-
スレレオセパレーションが低下していましたが、再調整で 20dB (10倍) 上がり、音の解像度が良い素晴らしい音になりました。
-
再調整後は下のような素晴らしい性能に蘇りました。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
62 |
69 |
dB |
NARROW |
37 |
36 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.021 |
% |
stereo |
0.021 |
% |
NARROW |
mono |
0.17 |
% |
stereo |
0.39 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-69 |
-69 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
-5.0 |
dB |
-
AM 受信
-
到着時から問題はなかったのですが、再調整で受信周波数が高い辺りでの感度が向上しました。
使ってみました
-
全体的に黒基調のデザイン
-
SONY デザインそのものです。
恰好イイです。
-
フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
-
FM 受信
-
感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
-
解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
-
AM 受信
-
感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。