SONY ST-S333ESXⅡ (10号機) が到着
2025年6月15日、東京都北区の W さんより
SONY ST-S333ESXⅡ
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者からのコメント
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タクトスイッチの不良が多数あり修理を希望します。
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その他、お気づきの部分があれば修正、パーツ交換を希望します。
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外観チェック
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製造シリアル番号は [204875] で、電源コードの製造マーキングより [1987年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] が添付されていました。
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全体的にかなり綺麗です。
サイドウッドの最奥にほんの少し潰れがあります。
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リアパネルの端子類に少しクスミはありますが、使用には問題なさそうです。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様です。
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全ての操作ボタン効きにくくチャタリングがあります。
強く押さないと反応せずマトモに操作できません。
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まず、これを直さないと再調整もできないほど酷いです。
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[CAL TONE] ボタンで正常にテスト音が出ます。
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FM 受信
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S メータが正常に振れ、[STEREO] 表示が出て、綺麗な音が出ます。
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AUTO チューニングで正しい周波数で停止します。
同調点ズレはないようです。
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AM 受信
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カバーを開けてチェック
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FM フロントエンドのトリマコンデンサ×3個ともくすんでおり劣化の兆候があります。
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内部は綺麗で、目視で劣化とわかる部品は見当たりません。
リペア (その1):タクトスイッチ全数交換
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概要
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タクトスイッチの全部でチャタリングや接点接触不良になっており、全数交換が必要の状態です。
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修理
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タクトスイッチを全数 (21個) 交換しました。
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左の写真はタクトスイッチ交換後のプリセットボタンの辺りです。
トップがピンク色の部品です。
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右の写真はこれまで基板に載っていた劣化したタクトスイッチです。
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トップの根元あたりに砂状のゴミが大量に付いていました。
これが内部に入り込んで接触不良に至ったと思います。

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修理後の動作確認
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全ての操作ボタンが気持ちよく軽快に反応するようになりました。
リペア (その2):FM フロントエンドのトリマコンデンサ×3個と劣化の兆候がある
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概要
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FM フロントエンドのトリマコンデンサ [CT101] [CT102] [CT103] の3個とも劣化の兆候があります。
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修理
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左の写真はトリマコンデンサ交換後で、赤〇で囲んだ部品です。
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右の写真は、交換前に基板に実装されていた故障したトリマコンデンサです。

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修理後の動作確認
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トリマコンデンサを交換後、再調整して動作良好なことを確認しました。
リペア (その3):[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] 交換
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概要
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メモリをバックアップする電気二重層コンデンサは製造後38年経っているので、そろそろ寿命です。
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タンタルコンデンサは短絡事故をおこしやすいので、別の種類のコンデンサに置き換えたほうが良いです。
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修理
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下のリストのように交換しました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C604 |
10uF/6.3V (タンタルコンデンサ) |
10uF/25V (積層セラミックコンデンサ) |
タンタルよりセラミックのほうが ESR が低く優秀 |
| C605 |
39mF/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
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左の写真は部品交換後で、小さい赤〇で囲んだのが [C604]、大きい赤〇で囲んだのが [C605] です。
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右の写真は、交換前に基板に実装されていた部品です。
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電気二重層コンデンサは容量が増えたのに、逆に劇的に小さくなりました。
技術の進化です。

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コメント
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[POWER] スイッチ OFF の時に [C605] でプリセットメモリをバックアップします。
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取扱説明書
の10ページにバックアップ時間は (39mF の時で) 1ヶ月と書かれています。
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39mF → 1F と26倍の容量になったので計算上は26ヶ月になるはずです。
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でも自己放電もあるので、実際には数ヶ月と思います。
リペア (その4):ハンダクラック予防補修
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概要
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基板上に7本の細長い銅板が走っており、これをアースバーと言います。
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アースバーのハンダ付け部分はハンダクラックが発生しやすいです。
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なぜなら、銅板と基板の熱膨張率が異なるからです。
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修理 (予防補修)
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アースバーのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
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これでまた10年以上、安心して使えます。
リペア (その5):その他
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概要
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修理&再調整を終えてロングラン試験中に新たな不具合が見つかりました。
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[SHIFT] ボタンを押すごとに [1-10] [11-20] の表示がトグルするのですが、[1-10] 表示の時に [11-20] も薄っすらと点灯してしまうのです。
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[SHIFT] ボタンでのプリセットメモリの選択は正常なので表示だけの問題です。
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この薄っすらと点灯する [11-20] 表示も電源を入れたまま時間が経つといつの間にか直ります。
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こうなると LED を点灯させる回路素子の劣化確定です。
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修理しようと思ったが・・・
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回路を調べてみると [11-20] LED は MITSUBISHI [M54977P] という IC で駆動しています。
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[M54977P] を交換すれば直るのですが、この IC は既に廃品種となっており入手困難です。
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ヨーロッパの半導体商社に在庫があるのは確認できましたが、ボッタクリ価格の3千円です。
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送料を入れると5千円くらいになり、納期も0.5~1ヶ月くらいかかります。
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「お金と時間がかかるが取り寄せて修理するか」修理依頼者に相談したところ、「修理しない」となりました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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電圧の実測値は以下のように正常でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
備考 |
| JP4 |
+16V |
+15.3V |
チューナ用 |
| JP5 |
+13V |
+13.2V |
FL 管用 |
| JP6 |
+5.6V |
+5.51V |
デジタル用 (MCU) |
| JP7 |
+30V |
+31.7V |
VT 電圧用 |
| R909(R) |
-10V |
-9.93V |
コントロール用 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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同調点調整は正常動作するマージンの上限までズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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ステレオ時の IF 歪補正調整が大きくズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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IF BAND = NARROW 時の IF ゲインを大きく下がっていました。
再調整で規定内に入りました。
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ステレオセパレーションなどは以下のように素晴らしい数値になりました。
一級クラスの性能です。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
35 |
36 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.029 |
% |
| stereo |
0.043 |
% |
| NARROW |
mono |
0.30 |
% |
| stereo |
0.30 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-72 |
-73 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
| CAL TONE |
WIDE |
mono |
305 |
Hz |
| -8.1 |
dB |
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AM 受信
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添付された [純正 AM ループアンテナ] で最高感度になるよう調整しました。
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トラッキング調整ズレがあり感度が落ちていました。
再調整で感度が大きく上がりました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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タクトスイッチが全滅以外に大きな問題はありませんでした。
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それにしてもタクトスイッチがここまでダメだったのは初めてで、過去に何があったのだろう?
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再調整で本来の性能に戻りました。
やはり ST-S333ESXⅡは優秀機です。
性能も音も良いです。
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デザイン
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精悍なデザインで使いやすいです。
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後継機の
ST-S333ESG
よりシンプルなデザインですが、むしろこちらのほうが使いやすいです。
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(C リングパネルがないので) 直接的な快適ボタン操作ができます。
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感度と音質
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FM の感度は抜群に良く、S/N が良いです。
細かい音がよく聴けます。
FM 放送らしい柔らかめの音質です。
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AM の感度も抜群に良く、S/N も良いです。
AM としては音質も良く、放送を楽しめます。