SONY ST-S555ESX (3号機) が到着
2023年9月8日、新潟県阿賀野市の K さんより
SONY ST-S555ESX
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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FM の音が歪んでおります。
なんとか自力で直そうと思いカバーを開けましたが一部の電圧測定だけで断念しました。
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外観
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製造シリアル番号は [201226] で、電源コードの製造マーキングより [1986年製造品] と判明しました。
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[純正 AM ループアンテナ] は添付されていませんでした。
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[フロントパネル] [リアパネル] [天板] は綺麗です。
[サイドウッド] の奥側エッジに少し潰れがあります。
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RCA 端子に輝きが残っています。
F 端子には曇りサビがあります。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り受信動作は正常です。
蛍光表示器の輝度は新品同様です。
操作もできます。
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FM は問題なく同調操作でき [STEREO] 表示しますが、出てくるのは聴くに耐えない歪音です。
MONO にしても同じです。
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AM は問題なく受信でき、出てくる音も良好です。
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カバーを開けてチェック
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内部および基板は綺麗で、目視で判る劣化部品は無さそうです。
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[IC206] LA1235 の 7pin と 10pin にチェック端子がハンダ付けされています。
修理依頼者が取り付けたのかな?
リペア
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FM 受信で聴くに耐えない歪音が出る
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以下の2点より [MPX IC] と [AF アンプ] の間にある [ステレオ分離スイッチング部] に問題あると推測できます。
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[STEREO] 表示が出ると言うことは PLL MPX IC は正常に動いている。
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[CAL TONE] 音は歪が無く正常である。
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[ステレオ分離スイッチング部] を調べたところ、この回路を駆動する電源の ±8V 出力が出ていないと判明しました。
(左の回路)
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更に調べると、回路図の [L302] [L303] のコイルの両方とも内部断線しているとわかりました。
これが故障原因です。
(右の写真)
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ST-S555ESX (1号機)
でも全く同じ [L303] が故障しており、このコイルは弱いのだろうと思います。
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おそらく、中の巻線で断線しているのではなく、終端でリードピンにハンダ付けする部分の腐食断線と思います。

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ここは安定化された ±15V から ±8V を作成する部分です。
あえてコイルを使う必要はなく、抵抗に置き換えたほうが安心です。
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この部分を抵抗で代替するには、設計目標数値が必要です。
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[IC318] [IC319] の最大電流は 100mA ですから、この電流が最大と考えればよいです。
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[IC318] [IC319] はドロップ型レギュレータなので [IN]~[OUT] 間は最低 2V 必要です。
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上記の設計目標値から [L302] [L303] のコイルを 47Ω に置き換えればよいとわかります。
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100mA 流れた時に 47Ω での電圧降下は 4.7V です。
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[IC318] [IC319] の [IN]~[OUT] 間は 2.3V となるので、設計要件を満たします。
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47Ω の抵抗で消費する電力は 470mW となるので、1/2W 型を使えばよいとわかります。
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ちなみに、回路図を見るとコイルで 15.5V→10V 電圧降下しているので、コイルの直流抵抗は 50Ω 以上あります。
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もう1つ考慮すべきはノイズ低減です。
この電源ラインには 38kHz のスイッチング信号ノイズが乗る可能性があります。
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[C318] [C348] [C333] [C349] の電解コンデンサと並列に高周波特性の良い 0.1uF/50V の積層セラミックコンデンサを抱かせます。
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この対策をすると、故障しやすいコイルの時より、故障しにくく特性も良くなると思います。
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左の写真はコイルと置き換えた抵抗、右の写真は電解コンデンサに抱かせた積層セラミックコンデンサです。

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対策が終わって動作確認すると、歪の無い綺麗な音が出るようになりました。
見事!直りました!!!
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[L302] [L303] のコイルの両方とも同時に内部断線することってあるだろうか?
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腐食による断線だと思うのですが、まずは1個壊れて、しばらく経ってから、もう1個壊れるほうが自然です。
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全く同時に壊れる確率は、惑星が地球に衝突して人類滅亡くらいの確率です。
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私のところに入院する前に、修理依頼者のほうで各部の電圧チェックをしたとのことですから、この時に壊してしまったのでは?
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まず、[L302] [L303] のコイルのいずれか一方が故障した。
歪っぽい音になるので、故障したことがわかる。
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修理依頼者のほうで修理しようと電圧チェックした時に誤ってもう一方のコイルを地絡して壊した。
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収拾がつかなくなって、私の所に入院。
こう考えるほうが素直です。
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疑ってスミマセン。
もしかしたら、本当に人類滅亡の確率で同時故障したのかもしれません。
再調整
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電圧チェック (VP)
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ジャンパで測定します。
修理後の各電圧の実測値は以下のように正常でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| JW281 (Q905-E) |
+31V |
+31.1V |
〇 |
PLL |
| JW201 (IC902-OUT) |
+15.5V |
+15.3V |
〇 |
TUNER, AUDIO |
| JW187 (IC903-OUT) |
-15.5V |
-15.4V |
〇 |
AUDIO |
| JW276 (IC318-OUT) |
+8.2V |
+8.05V |
〇 |
MPX |
| JW217 (IC319-OUT) |
-8.2V |
-8.11V |
〇 |
MPX |
| JW266 (IC901-5pin) |
+5.6V |
+5.55V |
〇 |
DIGITAL |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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入院直後は歪 100% と思われた本機が、見違えるほど素晴らしい性能に調整できました。
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[ステレオセパレーション] [高調波歪率] などは下の素晴らしい数値が出ました。
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測定結果は
超優秀
です。
当り!個体です。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
33 |
32 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0092 |
% |
| stereo |
0.0092 |
% |
| NARROW |
mono |
0.20 |
% |
| stereo |
0.20 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-81 |
-88 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
-0.03 |
dB |
| CAL TONE |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
| -8.0 |
dB |
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、手持ちの (純正でない) ループアンテナで調整するしかなかったです。
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一通りの調整をしましたが、修理依頼者がお持ちのループアンテナでは最高性能にならないと思います。
使ってみました
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今回の修理の感想
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故障のしかたは様々で滅多に同じ故障原因には遭遇しないのですが、今回の故障は
ST-S555ESX (1号機)
と全く同じでした。
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と言うことは、[L302] [L303] は故障しやすい (不良品?) と思います。
製造から37年経っているので時効ですけどね。
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修理後は素晴らしい性能と音質に戻って良かったです。
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聞き惚れるほど良い音
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FM は、感度・S/N・解像度とも良く、細かい音がよく聴こえます。
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AM も、感度が良く、音も良いです。
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プリセットでは FM/AM 、周波数だけでなく、動作モード(WIDE/NARROW、STEREO/MONO、MUTING)まで記憶してくれます。
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素性の良いチューナで、
名機
間違いなし。
良い調整をされた ST-S555ESX は
超お奨め!