Technics ST-G7 (4号機) が到着
2023年9月29日、大阪府泉南郡の S さんより
Technics ST-G7
の修理依頼品が到着しました。
パルスカウント検波
で定価73,800円です。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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ヤフオクで未使用品のテクニクスの ST-G7 を落札しました。
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音は良いのですが、選局のメモリーが電源オフすると残っておらず、やり直しになります。
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どうもゴールドキャパシタが寿命になっているのではと想像します。
点検修理をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [AA3J18A015G] です。
[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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さすが、未使用品というだけのことはあって、メチャメチャ綺麗な逸品です。
40年前の製品の未使用品が存在することにもビックリ!
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、ランプ切れはなく、各ボタンは正常に反応します。
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FM 受信でき、[STEREO] 表示も出て、特に問題はなさそうです。
AM 受信でき、特に問題はなさそうです。
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プリセットメモリの記憶が AC プラグを抜くと一瞬で消えます。
ここは故障しています。
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到着時の FM 主要性能を計測してみました。
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長い間、再調整されていなかったと思うのですが、それを考えるとまあまあ性能が保たれているようです。
| 項目 |
IF band |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
normal |
stereo |
42 |
41 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
normal |
mono |
0.17 |
% |
| stereo |
0.20 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
normal |
stereo |
-45 |
-47 |
dB |
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カバーを開けてチェック
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[C920] [C921] 2個の電気二重層コンデンサとも膨張して被覆から飛び出しています。
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右の写真の円筒形の大きい部品 (2個) です。
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手前の青い電解コンデンサのように被覆がトップにもかかっているのが正常です。
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上記以外は、内部は非常に綺麗で、基板には目視でわかる劣化部品は見られません。
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使われている IC の製造ロット番号より、本機は [1983年製造品] とわかりました。
リペア
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プリセットメモリの記憶が AC プラグを抜くと一瞬で消える
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基板の裏側を観察すると、[C920] から液漏れして+側端子にサビが出ていました。
(左の写真)
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原因は電気二重層コンデンサの故障です。
間違いなく [C920] [C921] の2個とも故障しています。
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修理
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基板に実装されていた電気二重層コンデンサ×2本を取り外し、液漏れ跡を無水アルコールで除去しました。
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1個で済む 1F/5.5V の電気二重層コンデンサを取り付けました。
(右の写真)
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動作試験してメモリが良好にバックアップされることを確認しました。
なお、完全放電状態からの完全充電には1時間程度かかります。

再調整
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電圧チェック (VP)
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以下のように実測値は良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| Q701-E |
+15.6V |
+15.6V |
〇 |
チューナ |
| Q706-E |
+5.6V |
+5.63V |
〇 |
MCU |
| Q702-E |
+8.6V |
+8.64V |
〇 |
オーディオ |
| Q703-E |
-8.6V |
-8.34V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
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同調点ズレが 314mV と大きく、フロントエンドのトラッキング調整ズレがありました。
2nd IF でややズレがありました。
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再調整でステレオセパレーションがぐっと上がって、ビックリするほど音が良くなりました。
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再調整後の性能値は以下です。
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IF band : normal 時のセパレーションはかなり良好な数値です。
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IF band : super narrow 時は自動的に Hi-Blend がかかるので、セパレーションが大きく落ち込みます。
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できるだけ IF band : normal で使ったほうがよいです。
| 項目 |
IF band |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
normal |
stereo |
61 |
60 |
dB |
| super narrow |
19 |
19 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
normal |
mono |
0.14 |
% |
| stereo |
0.14 |
% |
| super narrow |
mono |
0.17 |
% |
| stereo |
0.21 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
normal |
stereo |
-74 |
-69 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
normal |
mono |
0 |
+0.73 |
dB |
| rec level (テスト音) |
normal |
mono |
351.6 |
Hz |
| -7.0 |
dB |
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AM 受信部
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[純正 AM ループアンテナ] が添付されなかったので、IF 調整だけしました。
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AM の場合、ループアンテナも同調回路の一部なので、ペアでトラッキング調整する必要があるのです。
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ループアンテナが変わるとトラッキング調整点も変わります。
(ズレます。)
使ってみました
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デザイン
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作りが良く、特にフロントパネルの作りが秀逸です。
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周波数表示は LCD で、バックライトはフィラメント電球照射です。
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ステーション・プリセットボタンはプレス成型した無垢の1枚アルミ材です。
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サイド飾りも一般のプラスチックではなく、分厚いアルミ材です。
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シーリングパネルドアには分厚いガラス板を使い、高級感を出しています。
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FM アンテナ入力は F 端子なので、雑音電波が混入しないです。
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奥行きが筐体部で 26cm 程度と短く、設置が楽です。
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電源コードはメガネ型で取り外しできます。
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S メータは dBf 表示です。
ただし、あまり精度は高くないです。
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感度&音質
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FM 受信
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再調整で感度が高く、高音質になりました。
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パルスカウント検波らしい
乾いた音
です。
歪感が少ない素晴らしい音
です。
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] が添付されなかったので、基本ノーチェックです。
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放送が受信できることは確認しました。