TRIO KT-8000 (2号機) が到着
2026年4月17日、熊本県宇城市の M さんから
TRIO KT-8000
の修理依頼品が到着しました。
パルスカウント検波
の FM 専用チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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FM 電波は受信していますが、バリバリとの音が激しく音を聞き取ることができない状況です。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [761769] で、電源コードの製造マーキングより1978年製造品とわかりました。
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[フロントパネル] は綺麗ですが、次のような問題もあります。
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透明ガラスの内側にスス状のゴミが付着しています。
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透明ガラスの右端と下部の一部を斜め上から見ると虹色が見えます。
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これは2枚貼り合わせガラスの接着が少し剥がれてきているのです。 これは直しようがないです。
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言われなければわからないほど目立たないので諦めです。
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[天板] は汚れとスレや僅かのキズはありますが、そう問題はなく良いほうです。
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[リアパネル] [底板] は特に問題ありません。
RCA 端子にクスミがあります。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入りランプ切れはないです。
操作スイッチは正常に反応します。
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電源 ON からしばらくは、[S メータ] [T メータ] が正常に振れ、[stereo] ランプが点灯して、正常なステレオ音が出ました。
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電源 ON から30分後くらいから、音にバリバリという大きな雑音が入るようになりました。
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これが修理依頼者の言う「バリバリとの音が激しく音を聞き取ることができない」でしょう。
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放送を受信している状態で RCA 端子を揺すると音が途切れます。
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可変・固定どちらも同じように音が途切れます。
ここもオカシイです。
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周波数ズレは無いです。
指針の示す周波数は ±0.1MHz の誤差範囲に入っているので正常です。
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カバーを開けてチェック
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いくつかの IC でピンが真っ黒になっています。
マイグレーションが発生しています。
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上記以外には目視で明らかに劣化とわかる部品は見当たりません。
リペア (その1):放送受信音にバリバリという大きな雑音が入る
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調査と原因
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バリバリ雑音が出ている時に以下が確認できました。
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[S メータ] [T メータ] は正常に振れていました。
[stereo] ランプがチラつくことはなく点灯したままでした。
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[mulitipath-H] に検波出力が出ていますが、ここはバリバリ雑音がなく、綺麗な音でした。
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上の状況より [アンテナ端子]~[パルスカウント検波] までは正常で、これ以降に問題があることになります。
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「これ以降」と言ってももう MPX (ステレオ分離) 回路しかありません。
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MPX IC の [IC9] HA11223 を見るとピンが真っ黒になっています。
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マイグレーション発生によるピン間レアショートが疑われます。
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マイグレーション
とは金属カビのようなもので、IC のピン間をレアショートして誤動作させまます。
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レアショートしたり自然回復したりを繰り返すので、これが雑音となって聞こえます。
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[IC9] HA11223 を硬めのブラシを使ってピンを磨いて黒色のマイグレーションを除去してみました。
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バリバリ雑音が消え綺麗な音が出るようになりました。
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原因は [IC9] HA11223 に発生したマイグレーションに間違いありません。
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修理
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調査で実施した [IC9] HA11223 のマイグレーション除去は基板に乗ったまま実施したのでピンの表だけです。
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ピンの裏にあるマイグレーションは IC を基板から取り外さないと除去できません。
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そこで IC を一旦取り外し、IC ソケット化し、磨いた IC を IC ソケットに戻すことにしました。
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取り外せば、金属ブラシを使ってピンの表裏とピンの間をシッカリ磨けます。
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[IC9] HA11223 以外にもマイグレーションが発生してピンが真っ黒になっている IC がありました。
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[IC10] NJM4559DF、[IC4] HA1137W、[IC3] LA1222 もピンが真っ黒になっています。
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これらの IC も念のため一緒に対策することにしました。
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左の写真は [IC9] HA11223、右の写真は [IC10] NJM4559DF を IC ソケット化してマイグレーション除去して戻した後です。

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左の写真は [IC4] HA1137W、右の写真は [IC3] LA1222 を IC ソケット化してマイグレーション除去して戻した後です。

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修理後の動作チェック
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FM 受信した状態で半日モニタ監視しましたが、バリバリ雑音が出ることはありませんでした。
直りました。
リペア (その2):RCA 端子を揺すると音が途切れる
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原因
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左の写真は RCA 端子の裏側、右の写真はアンテナ端子の裏側です。
どちらもリードが基板に直接ハンダ付けされています。
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リードのハンダ付け部分はリアパネルと基板の2方向から常にストレスがかかっているので、ハンダクラックしやすいです。
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RCA 端子を揺すると音が途切れる原因は、このハンダクラックでした。

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修理
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[RCA 端子] [アンテナ端子] のリードを補修ハンダ付けしました。
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修理後の動作チェック
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[RCA 端子] [アンテナ端子] を揺すっても音が途切れず、その他の異常も発生しないことを確認しました。
リペア (その3):その他
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透明ガラスの内側にスス状のゴミが付着している
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フロントパネルを取り外して、[透明ガラスの内外] [内側にあるダイヤルスケール板] [メータ] などをクリーニングしました。
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ダイヤルスケール板の裏側はクリーニングしていません。
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これは裏側に周波数目盛が印刷されていて、クリーニングすると (経年変化で) ボロボロ剥がれるリスクがあるためです。
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以上でダイヤル面がクッキリ見えるようになりました。
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RCA 端子にクスミがある
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ピカール液
を使ってマイクロ研磨して輝きが戻りました。
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新品時の輝きには戻せませんが使用には問題ない程度になりました。
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使わない RCA 端子には防塵キャップを被せて防サビ処置することをお奨めします。
再調整
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電圧チェッック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| 電源基板 11pin (+B) |
+13.5V |
+13.6V |
〇 |
| 電源基板 13pin (-B) |
-13.5V |
-13.6V |
〇 |
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FM 受信部の調整
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調整結果
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FM フロントエンドでやや大きくトラッキングズレしていましたが再調整で直り、感度アップしました。
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調整前のステレオセパレーションはガタガタでしたが、以下のような優秀な値に調整できました。
| 項目 |
IF band |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
wide |
stereo |
62 |
56 |
dB |
| narrow |
43 |
41 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
wide |
mono |
0.047 |
% |
| stereo |
0.050 |
% |
| narrow |
mono |
0.30 |
% |
| stereo |
0.30 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
wide |
stereo |
-72 |
-74 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
wide |
mono |
0 |
+0.11 |
dB |
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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到着時はバリバリという大きな雑音だらけで、とても放送を楽しめる状態ではありませんでした。
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修理によって雑音が無くなり、再調整によりステレオセパレーションが大きく向上しました。
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こうしてパルスカウント検波らしい素晴らしい音に蘇りました。
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デザイン
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ともかく大きくて重いです。
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フロントパネルは 4mm の分厚いアルミ材で高級感あります。
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ダイヤルとメータに照明があって、ON すると浮き上がって素敵です。
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チューニングノブは直径 46mm のアルミ材で高級感あります。
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チューニングノブでダイヤル指針は、高級感のある動きをします。
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最前面の透明パネルと内部の周波数パネルがガラスでできています。
このため透明度が高く高級感バッチリです。
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アンテナ端子は [300Ω] [75Ω] のあらゆる接続に対応しています。
特に F 端子がありがたいです。
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感度や音質
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感度は良好です。
妨害電波排除能力も優れています。
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派手さのない無色透明のパルスカウント検波の音で、歪感がない良い音です。